2 客商売
「虹色魔石の入手方法は教えられない、と、いつも言ってるでしょう」
小さなテント内には私と、大柄な魔術師。
2人入ってるだけで息苦しい狭さ。
無店舗営業を始めて3ヶ月、大分お金も貯まったし、もうそろそろ店舗を持ってもいいかもしれない。
こんな狭苦しいところで、こんなムサイ男と頭を突き合せなきゃならない苦痛がなくなるならば。
「全属性を持つ魔石など、この世に存在するわけが無いんだ。 もしや、コレは魔獣の核と魔石を融合させて作った、特殊アイテムなんじゃないのか」
淡々と、私の顔色を見ながら喋る魔術師に、あからさまにうんざりとした表情をしてやる。
「そう思うんなら、自分で作ってみりゃ良いじゃないですか」
「もうやってみた。 でもできなかったから聞いてるんだ」
そりゃできないでしょうね。
「じゃぁ違うんじゃないんですかー? もー! これ以上営業妨害するなら、今後貴方には売りませんよ」
上得意の客だが、こんなに絡まれるなら居なくてもいいや。
口を尖らせて抗議すれば、魔術師は一瞬黙り込む。
「……それは困る」
「じゃぁ、詮索するのはなしで! 本日のお買い上げは、極小粒が5個と大粒が1個で23万になります」
金平糖サイズの魔石を5個と3センチ位の大粒の魔石を1つ、手作りの小さな巾着に入れる。
先にお金を受け取り、金額を確認してからその小袋を魔術師に渡す。
ひと月の生活費に余りあるその金額を、ポンと出す金持ちっぷりが憎いぜ。
「毎度ありー」
「…次はいつごろ店を出す」
帰りがけに聞かれて、一週間後と答える。