13 石を舐めつつ
魔術で部屋をこっそり抜け出した少年を送り出してから一日が経過した…多分。
窓の無い部屋だから、太陽の動きがわからないし、食事は一日に一回、朝なのか夜なのかわからない時間に支給された。
掌サイズの硬いパン1つを少しずつ噛んで、唾液で柔らかくしながら食べる。
少量でも良く噛むせいか、割と腹が膨れる気がする。
懐かしいなぁ、この世界に来た当初の過酷な生活が思い出される。
パンすら手に入れられず、石ころを舐めたあの頃。
パンをもらえるだけでもありがたいなぁ。
きっちり”いただきます”と”ご馳走様でした”をしたら、まわりの人たちから少し引かれた。
いやいや、有り難いことなのになぁ。
壁に背中を付けて楽な姿勢を取ると、小袋から出した小石の土を払い、数個口に含み転がす。
数名の子供が飴と勘違いして私にねだってきたので、石ころであることを言ってから渡した。
子供らは私の真似をして口に含むと、直ぐに吐き出した。
「だから言ったのに」
「なんで石なんか食べてるの?」
素直な疑問に、小さく笑う。
「少しは腹が膨れる気がするからだよ」
そういうと、子供らは吐き出した石ころをもう一度口に含み、飴のように舐めた。
ああ、無事にあの少年が助けを呼んで来れたら良いんだけど……。