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12 望みを託し
「その魔石を数個譲ってくれませんか」
案の定の言葉だった。
「君は、魔術師ですか?」
頷かれる。
「君にこの魔石を渡せば、ここから逃げ出すことは可能ですか?」
少し躊躇われ、そして言葉が返される。
「僕だけなら、逃げ出せます。 自警団に訴えてここを押さえてもらいます」
きっぱりと言い切ったその言葉に、私は首を横に振る。
そしてここに連れ込まれるまでに見た状況から。
「街の自警団と、この組織は癒着があるみたい。 自警団と思しき人たちとすれ違いましたが、誰一人として私を助けようとする人はいなかったから」
白昼堂々の誘拐行為なのに。
「だから、大変かもしれないけど、王都まで助けを呼びに行ってくれますか?」
石粒と魔石が混ざった中から魔石をすべて取り出し、それを少年の掌に握らせた。