11 魔石を使える人
魔術師、あるいは魔術師でなくても魔石を使用できる人を探すため、ずっと膝に伏せていた顔を上げて室内を見回した。
狭くはないが薄暗く人の絶望で溢れかえった部屋の中で、しっかりと私と合う目があった。
背筋のしゃんとした、幼くても現実を見据え何とかしようとしている気概の在る目…か?
何とかなるだろうか。
少年はゆっくりと立ち上がり、私の方へと歩いてくる。
そして、どすん、と私の前に座り込む。
目にある力は、実のところもう最後の残り火なんだろうか。
体は随分と疲れているようだ。
「…何か、食べ物は持っていますか」
小さな声で訊ねられ、首を横に振る。
生憎と河原へと持参していた昼食は、誘拐されたときに放置することとなった。
「……先程なにか口にしているように見えたのですが?」
魔石を口にしているところも見られていたのか。
持っていた小袋の口を開き、ころころと魔石と小石を手のひらに零す。
「空腹を誤魔化すのに、舐めてただけ。 残念だけど、只の石と、腹の足しにならない魔石です」
少年は私に断りを入れてから、私の掌の上から虹色をした魔石の粒をそっとつまみ上げた。
そうして、魔石を検分し、少しだけ目を丸くした。
「これは……虹色魔石?」
その名称を知っているということは、この少年は十中八九魔術師なんだろう。
確認してきた少年に、頷いてみせる。
「君が、取ってきたの?」
取ってきた、が何を指しているのかちょっと判らない。
「それは、私が商うために所持している魔石です」
「……そう、ですか」
私の掌の上に魔石を戻し、少年は少し逡巡してから私の目を見て口を開いた。