107 あれよあれよという間に
なんだかんだ言いつつ、追手とか有るんじゃないかって内心ビクビクだったんですけれどもね。
ウチの旦那様の実力を甘く見ていました。
だってほら、一緒に居る時はエロいところばっかりしか見えな……げふんげふん。
追手は無かったけれど、時々遭遇する獣や盗賊なんかを綺麗に追い払ってくれるんですよ、魔術師のくせに剣だけで。
筋肉は伊達じゃないです。
旅は快適でした!
いや、快適になるように改造しました!
イーシニアル師匠の工房をお借りして、ポシェットを完成させてその中に馬車を占めていた荷物をすべて収納。
そして、金に物を言わせて内装を一新し、馬車の足回りを改良してクッション性をアップ、軸の摩擦係数を落とし馬の負担を軽くした上で荷台自体の重さも軽減して…馬車自体を魔道具化してしまいました。
外観は変わらないので大丈夫だし、ラァトがいつも結界を張ってくれているので中を誰かに物色されることもない。
そんな素敵馬車での旅は、そう長くは続かない…っていうか、うん。
アレだけ精力が有り余ってる人と四六時中一緒に居るわけだから、うん。
「妊婦さんに旅はおすすめできないねぇ。 どうだい、小さな町だけどここに腰を下ろさないかい?」
なんだか微妙な吐き気が続いていたので立ち寄った町で診てもらったら、おばあちゃん先生からそう言われました。
そうして、あれよあれよという間に、町にあった空き家を提供され、この町の住人に認定されました。
魔道具士と傭兵(魔術師ってこと、暫く気づかれなかった…)夫婦大歓迎だってさ、工房まで貰っちゃった。