105 そういえば
「あ、そうそう、もうそろそろ魔石持っていくでしょ?」
最近仕事の調子が良いらしく早めに帰宅し、夕飯後ソファで寛いでいるラァトに虹色魔石を入れた小袋を渡そうとすると、微妙な顔をされました。
えぇぇぇぇ、なぜそんな顔するのかなぁ?
腕を引かれて、ソファに座るラァトの膝の上に座らされ、逃げられないように腰にゆったりとラァトの太い腕がまわされる。
「そうだな……上からも催促が来ているしな」
苦々しい表情で袋を受け取ったラァトはため息をついた。
いやいや、催促されてたなら早く言ってくれればいいのに!
魔石はだいぶん前から貯まってましたよ。
むしろ今回の分の5倍以上はストックがあるのですよ、勿体無いから小出しにするけど。
ラァトは物憂げな様子で私の口元に視線を落とし、その無骨な指でそっと私の唇を撫でる。
「お前の中で作られた物を、他の人間に渡すのは………」
中とか言わない!
確かに舐めて作ってるから、ばっちいかもしれないけど! ちゃんと洗ってるよ! 磨いてるよ!
憤慨する私の頭をグリグリと撫でて、そう言うことじゃない、とラァトはもう一つため息をつく。
「………そういえば、こっちで作った方は混ざってないだろうな(※実験の産物)」
そう言ってサラリと下腹部を撫でられ、思わずラァトのボディに拳を叩き込みました。
魔術師が鉄の腹筋とか持ってるんじゃないわよぉぉ!
負傷した右手を手当してもらいながら(治癒魔法が致命的に下手なラァトなので、普通の手当)ラァトにお説教したのは当然の事だと思います。
二人っきりでも、デリカシーは大切です。