104 寝ている間に
気絶したまま拉致されていた私ですが。
気がつけば、ラァトの腕の中に居ました。
目覚めてキョトンとする私に、ラァトはほっとしたように少し表情を緩めた。
「具合は悪くないか?」
周囲に慌ただしい人の気配がする中、ラァトに低い声で確認されたので、特に問題は無いと答えると答えた唇をラァトの唇に軽く吸われた。
「問題が無いならばいい」
そう言うくせに、一向に私を腕の中から離してくれない。
その間にも周囲の騒々しさはピークを迎え、怒声が飛び交い、物騒な音とかも聞こえたけれど私の視界はラァトで占められているので様子は見えない。
やがて、怒声が遠のいてやっと私はラァトの腕の中から開放された。
一言で言うならば、無事救出されました。
拉致られた張本人ではありますが、捜査状況とかその他諸々は一般人が聞くような話では無いということで。
帰宅してからは、軟禁生か……いえ、家の中で大事にされています。
もしかして、まだあの灰色の髪の男とか赤毛の男とか捕まってないのかなぁ、なんて邪推しちゃったり。
ラァトが毎日家の護り(結界?)をかけ直してから仕事に行くようになったりとか。
あー、うんうん、深入りは良くない。
食料や日用品はラァトが仕事帰りに買ってきてくれるし、不自由も無いわけだから、軟禁主婦生活にどっぷり浸ります。
ここにテレビとパソコンが在ればもっといいんですけどね!