100 検定
試験は魔石都市ではなく、師匠の住んでいる町で受けることになった。
魔石都市程大きくはないけれど、魔石都市の衛星都市だけあって、魔石都市に店を構えるほどの規模はないがそれでも十分に大きな魔道具士の工房が多く有る町だ。
その町の宿屋に一部屋取り、そこから師匠のアトリエに通い最後の仕上げと言うべき実技の手ほどきを受ける。
勿論その間……というか、ずっとラァトが張り付いているが、魔道具を作っている間は気配を消して見守っていてくれているので、存在を忘れて魔道具作りに没頭する。
「あー、文句なし、こんだけ作れりゃ間違いなく受かるわ。 あとは、筆記の方をさらっておくぞ」
徹夜に近い勢いで実技を終え、最後の一日はびっちり机に張り付いて筆記のおさらいをした。
そして検定当日。
前夜もさらっと睦もうとするラァトをなだめすかし、十分な睡眠をとって万全な体調で試験に望むことができました!
そして今、私の手の中には待望の!
『魔術式記述資格者証』が!!
カードの四隅には小粒の魔石が嵌めこまれ、飾り文字で文書が記載されているなんとも素敵なカードです。
宿屋に戻り、夕飯を食べて(※特注で酸味抜き)部屋に戻ってからも手に入れたカードが嬉しくてずーっと観察していたら、不意にカードをラァトに取り上げられました。
「そのまま持ち歩くのは無用心だ」
ラァトは上着のポケットから取り出したひも付きのケースにカードを入れると、皮でできたその紐を私の首に掛けた。
こ、これは! 師匠も持っている、ライセンスカード専用皮ケースじゃないですか! 師匠が使っているのを見て、こっそり欲しかったんです!!
嬉しくなってラァトに抱きつくと、お礼は体で返すことになりました……うむ。