告白
夏休みの課題が終わらないので、飽きて書いたら、痛いのできた。
そんな感じです。すみません。
「てまり、好きだ。付き合ってくれ」
この告白、既に四回目。とはいえ、今日以前の告白は邪魔が入ってうやむやになってしまった。
てまりと俺は隣の家同士の幼なじみだ。てまりはいつも鈍くさくてほかのみんなと比べたら、何をするにも遅かった。ガキ大将だったやつとその腰巾着にいつもいじめられて、それを俺が助けた。
それから何となくいつも一緒で、世話係をしていた。てまりはやることは遅いけど、何事も丁寧で料理や裁縫は誰よりも得意だ。俺の弁当やタオルの刺繍なんかもやってくれる優しいいいやつだ。
俺がてまりを意識し始めたのは中学のとき。いつものように家へ帰ってると、歩道橋で小さい子がふざけていて落ちそうになった。そのとき、てまりがその子をつかんで抱えて一緒に落ちた。すぐに俺が下敷きになったから、俺が背中打ったくらいで済んだけど、もしものことを考えてると恐ろしくて、てまりのいない生活なんて考えたら気が狂いそうだった。
告白の返事を待っている間、ちょっと変な空気が流れて気まずい。てまりは視線を泳がせて顔を真っ赤にしている。可愛い。今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが、そこはぐっとこらえた。
「きよじ、私も好き」
俺は清次だが、てまりはなぜか「きよじ」と呼ぶ。可愛いから許すけど。やったぜとガッツポーズをしかけたら、てまりが「それでね」という。まさか。最悪な場面を想定した。
「付き合うってどこ? 本屋さん? きよじ、本読まんもんね」
てまりが極度の天然で、色恋沙汰に関しては群を抜いて鈍いことを俺は見落としていた。これまで三回の告白も邪魔が入っただけでなく、本人にも問題があったとは。そういえば、てまりに告白をした男どもが何人かいたが、ことごとく断られていたのはこのせいか。自己嫌悪に陥りそうだ。じゃあ、もうアレだ。プロポーズでもしておいた方がいいかもしんない。
「てまり、俺な、お前と結婚したいって思ってる」
さすがにこれに気づいたか。てまりはさっきよりも顔を真っ赤にしてうつむいた。そして、突然顔を上げると、俺の顔にぐっと近づけた。
「きよじ。それ本気で言っとん? お嫁さんにしたいって思っとん?」
「ああ。高校出てさ、大学入ってうちの店継いだら。ほんとはすぐにでもしたいけど」
我ながら恥ずかしい台詞が出てくる。自嘲ぎみの笑いが出る。これで断られたら死ねるかもなと思いつつ、てまりの反応をうかがう。てまり可愛いしか思いつかん。俺はバカだと今気づいた。
「いいよ。私がきよじの将来のお嫁さんになったげる。でも、失敗とかたくさんするかも」
嬉しすぎて死ぬかと思った。一生てまりがそばにいてくれると思ったら、幸福な気持ちになってきた。
っていうところで目が覚めた。あぁ、夢だったのかと思うと、俺バカだと嘆きたくもなる。
コンコンとドアを叩く音がする。適当に返事をすると、てまりが入ってきた。
「きよじ、ご飯できてるよ」
てまりが笑顔でそう言った。なんでてまりがうちにいるんだ、と考える。そうか、俺たちは結婚していた。左手の薬指に指輪がはまっている。じゃあ、あの夢は学生時代のときのことか。バカな自分が面白くてしょうがない。いい匂いのする方へ行くと、てまりがいた。
「なんか、いいことあった?」
「いや、学生時代の夢を見た」
「私も見たの。きよじに告白されるところ」
自然と笑みがこぼれた。今日は日曜だし。てまりと公園でも行こう。
俺はてまりの入れてくれた紅茶を飲んだ。