Sixth -雄吾's turn.
上り勾配が続いた峠道も一旦落ち着きを見せた。
道幅は二車線分確保され、雄吾は少し肩の力を抜いた。
追われる身とはいえ、追っ手がすぐそこにいないとそれほど気は張らなくて済む。
しかし、問題はすぐに雄吾の目の前に現れた。
それが見えた瞬間、雄吾は目を見張った。
何十台ものパトカーが道を塞ぐバリアを作っていた。
実はこの道は、雄吾が走ってきた部分だけが峠道になっていて、後は割りと平坦な道のりである。
先の警官の通報を受けてこの陣形を作るのに、それほど時間を要さなかった。
雄吾は立ち往生してしまった。
「ほら、観念しろ!」
警官の数も優に100を越していた。
今ここで除雪車を降りたら、20秒もしないうちに両手に手錠を掛けられてしまうだろう。
雄吾はパトカーを踏み潰して行こうとアクセルを踏もうとした。
その時、警官が一斉に雄吾に拳銃を向けた。
「強行突破しようというのなら、我々は子供だろうが遠慮しない」
撃たれたら、最期だ。
雄吾は落ち着きを失い頻りに唸る。
「くっそおおおぉぉぉぉ!!」
雄吾はアクセルを踏んだ。
予告通り、警官が発砲する。
銃弾は何発かフロントガラスと排雪板、タイヤにも命中した。
雄吾は悲鳴を上げながら、ハンドルを左へ切った。
警官たちが驚く。
雄吾が選んだのは、何十年も前から使われていない旧道。
「追え! 早く!」
雄吾は再び逃げる立場を自覚した。
整備も舗装もされてない雪道を強引に進むも、除雪車ですら走行は困難だった。
アクセルを踏んでもタイヤは空回りすることが多くなり、ついにはスタックしてしまった。
雄吾は焦ってハンドルを乱暴に左右に回す。
頼む、動いてくれ……!
しかしタイヤははまった雪から脱け出せない。
雄吾の頭の中は完全にパニックだった。