Third
その時、僕たちは聞いてしまった。
唸るように鳴り響くパトカーのサイレン。
それは確実に僕たちの方に近付いている。
一気に血の気が退く。
「ゆ、雄吾……」
その先の言葉が出てこない。
雄吾は舌打ちをすると、あることを提案した。
「こいつで逃げよう」
「こいつ?」
「除雪車だ。でかいから何とかなるだろ」
そして、唖然とする僕を置いといて続けた。
「二手に別れて警察から逃げるんだ」
「無理に決まってるだろ! 絶対に捕まっちゃうよ……」
「捕まりたくないなら逃げろ!」
叫ぶように言い残して雄吾は自分の除雪車に乗り込んだ。
「雄吾! 逃げるのやめようよ!」
雄吾には届かない。
僕は怖い。
狂った雄吾も、警察からの逃走も何もかも怖いよ。
いよいよパトカーが僕たちの前に停まり、警官二人が僕たちに言った。
「通報を受けてやってきた! 馬鹿な真似はよして早く降りろ!」
だが雄吾はお構い無しだった。
雄吾の除雪車は向きを転換すると、急加速して前輪をパトカーと接触させた。
フロント部分が凹む。
そのまま雄吾は逃走を始めた。
僕ももう後には退けなくなった。
思いきって発車した。
どうにでもなれ。
「止まれ! ガキ共!」
警官の怒号のような罵声が響く。
「こちら6号車、現在2台のブルドーザーが呼び掛けを無視して逃走中! 大至急応援要請願います!」
「こちらT県警、了解。犯人はどんな人物か?」
「ヘルメットを被っていて顔は確認できませんでしたが、おそらく中学生か高校生だと思われます」
「了解。6号車、追跡を続行願います」