Eighth -俊輝's turn.
結局、僕はただの臆病者なのか。
違う。
絶対に、違う。
人ぐらい簡単に殺せる。
僕は変わるんだ。
僕はきつく目を閉じ、ついにギアを動かせた。
見なければ、いける。
程なくして僕の暗闇の世界に生々しく響く叫び声。
車体に、何か物がぶつかる。
怖い。
逃れるように僕はギアをシフトアップする。
突然、僕の右側の窓ガラスが割れた。
雪を乗せた寒気が入り込む。
しぶとくしがみついていた機動隊の1人が警棒で叩き割ったのである。
僕は舌打ちをして、ハンドルを右へ左へ回した。
除雪車は激しく蛇行し、たまらずその機動隊員は振り払われた。
固いアスファルトに背中から落下し、バウンドしながら転がった。
僕はその様を振り返って見ていた。
ざまあみろ。
そして前を向き直した時、僕は青ざめた。
大量の燃料を積んだトレーラーが目の前に停車している。
猛スピードで僕はガソリンスタンドに突っ込もうとしていた。
距離はもう10メートルも無い。
ハンドルを切る刹那さえも無く、僕はそっちに吸い込まれていく。
抗えない。
不意に脳裏に雄吾が浮かび、次の瞬間、僕はトレーラーに突っ込んだ。
瞬時に大爆発が起こり、ガラスが吹き飛び、周りが炎に包まれる。
僕は、あの時と同じように、ハンドルに胸部を打ち付けた。
激しい痛み。
呼吸が覚束なくなり、息が詰まりそうになる。
さらに僕は気付いた。
何も聞こえない。
爆発の音で鼓膜が破れてしまった。
熱い。
雄吾。
助けて。
熱いよ。
次々に給油スタンドに引火し、炎はますます勢いを強める。
僕は割れた窓ガラスから火の海へ這い出る。
ガラスの破片が手に刺さる。
そして力無く地面に落下し、意識も遠ざかっていく。
痛い。熱い。苦しい。嫌だ。死にたくない。
様々な感情がせめぎあう。
灼熱の炎に焼かれる中で、きっと僕は死んでゆく。
雄吾……。
でも、恨んでないからね…………。