Seventh -俊輝's turn.
何十もの車を蹴散らしながら、わざと国道の反対車線を驀進していく。
路面に雪は皆無で、チェーンがアスファルトの上を進む音がやかましい。
街は混乱に陥っている。
僕はラジオの電源を付け周波数を合わせた。
「……たった今入ったニュースです。A町で少年の運転する除雪車が次々に車を跳ねて暴走中、なお犯行に使われている除雪車は……」
さらに別の放送局に回す。
「繰り返します。番組の途中ですが一部内容を変更し、A町で起きている事件について放送しております。ご了承下さい」
「現段階で犯人の少年は2人と見られ、うち1人はY山をU市へ向けて逃走中との情報が入りました」
きっと雄吾だ。
うまく逃げてるんだな。
「少年による犯行ですか。こう言ってはなんですが、世も末ですね。何を考えてるんだか分かりません」
ラジオのMCが冷たく言い放った。
僕は強烈な憤りを覚えた。
何を考えてるんだか分かりません、だと?
分かろうともしないくせに偉そうに……!
全身がわなわなと震える。
殺したい。
僕に逆らう奴ら全てを。
僕を理解しようとしない奴ら全てを。
するとその時、僕は道を封鎖している集団に気付いた。
あの黒い盾を携えた集団は、テレビで何度か見たことがある。
機動隊だ。
退け。
僕は念じた。
しかし機動隊は幾重にも列を作ったまま微動だにしない。
徐々に迫っていく。
僕が人を轢く勇気もない臆病者だとでも思っているのか。
子供だからって馬鹿にするな……!
心は苛立つが、しかし僕はブレーキを踏みつけていた。
強く踏みつけていた。
50メートルほど距離を置いて停車する。
何をやってるんだ、僕は。
これじゃあ奴らの思惑通りだ。
僕は乱暴にクラクションを鳴らした。
機動隊は毅然として動かない。
何で退かないんだよ!
カッコ悪いセリフを僕は叫んだ。
機動隊はじりじりと僕との距離を詰め始めた。
数えきれない人の波が押し寄せる。
ギアはニュートラルに入ったままアクセルを踏む。
だが奴らは僕をなめきっている。走れないだろうと高をくくっている。
何の威嚇にもならない。
だからといってギアを動かそうとすると手が止まる。
焦燥感が僕を襲う。