あれから一年… (最終話)
今回が最終回です。
最終回を前に、登場人物の紹介をします。
興味のない人は、本編へどうぞ。
『倉田夏海』
前作に続き、本編の主人公。
身長168センチのモデル系美人だが、彼氏いない歴=年齢。(そんな奴いるわけがない、というツッコミはなしで。)
子供の頃は、姉に対して劣等感を抱いており、素直に自分を出す事が出来なかった。
成長するにつれ、本来の自分を出せるようになっていくが、長年の片思いの相手である冬樹には、素直になれないでいた。
そして、その想いに決着をつけた後は、本来の自分を出せるようになっていく。
大人になってからは、身長や年齢にコンプレックスがあり、恋愛方面には踏み出す事が出来ないでいた。
十代や二十代前半のうちに経験するはずの事は、冬樹に対する想いの所為で経験する事が出来ず、恋愛経験は初心者に近い。
本来の性格は、明るく、快活な女性。
『松浦春人』
佳奈子曰く、「パッとしない奴」だが、真面目で心優しい青年。
身長163センチで、ごく普通の容姿だが、夏海の恋愛フィルターを通すと、イケメンに見えるらしい。
ヒールを履いた夏海より、10センチ近く、背が低いが、特に気にはしていない。
ずっと片思いをしていた佳奈子に対する想いを、どうしたらいいのか悩んでいる時に夏海に出会う。
夏海の、必死のアプローチには早くから気付いており、困惑しつつ惹かれていくが、いい加減な気持ちで、その気持ちに応えていいものか悩む。
『松井佳奈子』
春人の幼なじみで、夏海の後輩。
背が低く、明るく、可愛らしい女性。
思っている事をハキハキ言うタイプだが、そういう女性が嫌いじゃない夏海に、可愛がられている。
佳奈子も、夏海を姉のように慕っている。
恋愛方面になると立場が逆転し、恋愛音痴の夏海の世話を何かと焼いている。
春人が、自分に告白してきた事を忘れてるわけではないが、彼が未だに自分の事を引きずっているとは、夢にも思っていない。
そんな彼女の態度は、夏海を苛立たせる事もあった。
ちなみに、身長は153センチ。
以上、主要キャラ三人の人物紹介でした。
では、本編をどうぞ。
長かった冬も終わり、初夏の陽気になった、この日。
結婚式の帰り道を、春人君と並んで歩く私。
春人君と付き合い始めてから、一年が経過していた。
「佳奈ちゃん、凄く綺麗だったね!」
「そうですね…。」
結婚式だから、ヒールの高い靴を履いて来た私。
春人君を見下ろす形になってしまったが、特に気にしてはいない。
「もしかして、まだ、胸がチクチクするの?」
「もう、しないですよ!少し感慨深いだけです。」
春人君の言葉が本音かどうか、私には分からない。
ただ、にっこり微笑んだ彼の表情は、信じるに値するものだった。
「私も、ウェディングドレス、着たいなぁ…。」
そう言って、チラッと春人君を見たが…。
「夏海さんなら、凄く綺麗でしょうね!」
そういう事じゃなくて…。
『綺麗だろう』と言ってくれて、嬉しいけど…。
「私も、もうすぐ三十歳かぁ…。」
「誕生日が夏だから、『夏海』なんでしたっけ?」
これは、少し遠回し過ぎたか?
「私、三十歳までに、結婚したかったんだけどなぁ…。」
「へーえ、そうだったんですか。」
コイツ、わざと言ってるのか?
「あのね、春人君!」
「何ですか?」
「私は、ウェディングドレスを着たいの!」
「それは、さっきも聞きましたけど?」
「私は、もうすぐ三十歳になるんだけど、出来れば、三十歳までに結婚したいの!」
「…?」
「こういう私の希望を聞いた春人君は、私に何か言う事があるんじゃないの?」
「もしかして…、『俺と結婚して下さい!』、…ですか?」
「その通り!良く出来ました!幸せにしてね!」
「もしかして、今のでプロポーズした事になっちゃったんですか?」
「そうだよ。だって、『結婚して下さい』って言ったじゃん、春人君。」
「確かに、言いましたけど…。それに、こういう事はよく考えた方が…。まだ、付き合って一年ぐらいだし…。」
「期間なんて関係ないよ!だって、私は春人君がいいんだもん!」
「そう言ってくれるのは、嬉しいですけど…。」
「春人君は、私じゃ不満なの!」
「そ、そんな事ないですよ!」
「この先、私より若くて、いい娘が現れるかも知れないもんね…。」
「だから、違うって言ってるじゃないですか!もー、分かりました、結婚します、結婚して下さい!」
「何か、投げやりだなぁ。」
「何なんですか、一体!今日はいつもと違いますよ、夏海さん!」
確かに、今日の私は変かも知れないが…。
幸せそうな佳奈ちゃんが、羨ましかったから…かな?
春人君にプロポーズされた、この日。
ついに、私にも春が来た!
私が、無理やりプロポーズさせたようなもんだけど!
私の赤い糸は、運命の人に繋がった!
「緊張するなぁー…。」
今日は、春人君が倉田家にやって来た。
「だから、大丈夫だって!」
「そうは言っても…。」
緊張がピークの春人君だが、実は、私も少し緊張している。
春人君もそうだけど、本当に大丈夫か、うちの家族…。
変な事を言い出さないだろうか…。
「春人君を連れて来たよ!」
「いらっしゃい、ようこそ!」
玄関を開けると、母が私達を出迎える。
そして、居間に入ると、私は固まってしまった…。
居間にいたのは、両親と祖父母。
ここまでは、問題ない。
そして、お姉ちゃんと冬樹、姪もいる。
まぁ、この人達も一応、家族だけど…。
更に、冬樹のお父さん、秋姉ちゃんとその息子までいる。
彼等は違うだろ!
「夏海さんと結婚させて下さい!」
両親に向かい、春人君が頭を下げる。
心なしか、声が震えている。
そして、父の発した言葉は…。
「ダメです!」
「「えっ?」」
父の言葉に、耳を疑った。
「ハイハイ、バカな事を言わないの、お父さん。」
固まったままの私達を余所に、笑顔の母。
どういう事?
「だってさぁ、冬樹君の時もそうだったけど、大事に育てた娘達を、簡単に持って行っちゃおうとするんだぜ!ちょっとぐらい、意地悪したくなるんだよ!」
この親父は…。
「春人君が困ってるから、それぐらいにしておきなさい、お父さん!でも、春人君は本当にいいの?夏海なんかで。」
『夏海なんか』って、どういう意味よ、お母さん!
「夏海さんがいいんです!」
春人君は言い切ってくれた。
また、涙が出そうになった…。
そして、案の定、宴会が始まる。
いつもの事だけど…。
春人君は、お父さんとおじさんに捕まっている。
今日は、冬樹も一緒に捕まっている。
「娘を持つ父親なんて、つまらんもんだよ。なあ、マサ。」
「ホントそうだよ。タケちゃんとこはまだいいけど、秋代なんか、盆と正月しか顔を見せないんだから…。」
「父さん達には、可愛い孫がいるじゃん!」
「あのなぁ、冬樹君。そうやって余裕を持っていられるのは、今のうちだけだぞ!二十年もすれば、冬樹君だって、俺達の気持ちが痛いほど分かるはずだ!」
「子供は男の子に限るぞ、春人君!」
「ハハハ…。」
何の話をしているんだ、あの酔っ払い共は…。
「夏ちゃん!おめでとう!」
この懐かしい呼び方は、秋姉ちゃんだ。
「今日は、何で秋姉ちゃん達もいるの!」
「春ちゃんが、『絶対、来た方がいい』っていうから。それに、夏ちゃんの未来の旦那様を見てみたかったし。夏ちゃんは、私の妹みたいなものだから。」
お姉ちゃん…、また余計な事を…。
でも、何か納得いかない部分もあるが、秋姉ちゃんに会えたから、良しとするか。
秋姉ちゃんも、大きく捉えれば家族だし。
「この前はごめんね。バカな家族で…。」
今日は、私が春人君の家に挨拶しに行く日。
「そんな事ないですよ!賑やかな家族で、いいじゃないですか。」
「でも、うちのお父さんがバカな事を言って、春人君を困らせてたし…。」
「うーん、それは別に気にしてないですけど…。俺は、春海さんが怖かったかなぁ…。」
「お姉ちゃん?」
「『私の大事な妹を泣かせたら、どうなるか分かってる?』って、笑顔で言われたから…。目が笑ってなくて、怖かった…。」
「お姉ちゃん、ああ見えて、空手の有段者だからね…。旦那の方は、もっと凄いけど…。」
「冬樹さんって…、夏海さんが好きだった幼なじみ…ですよね?」
「バレたか…。」
「やっぱり…。」
「でも、今は何とも思ってよ!今は、春人君が…。」
「分かってますよ。別に疑ってるわけじゃないです。あと、秋代さんはいい人でした。優しくて綺麗な人っ!イテテテテッ!」
「これからは、他の女の人は見なくていいの!」
「なにも、つねらなくても…。そういう意味じゃないのに…。」
「春人君は、私だけを見てればいいの!これからは、ずっと!」
「最近…、夏海さんの印象が変わってきたんですけど。最初の頃と比べて…。」
「今の私が、本来の私!最初は猫をかぶってたから、春人君の前では。」
「何か…、騙された気分なんですけど…。」
「今さら後悔しても遅いよ!だって、私は春人君が大好きなんだから!世界で一番!」
〜完〜
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
今作も番外編がありますが、主役は前作『ハル、ナツ、アキ、フユ』の番外編と同様、あの人物です。
お読みいただければ幸いです。
後書きでは、前作から引き続き登場した人物の紹介をしたいと思います。
『立花冬樹』
夏海の同級生で、幼なじみ。夏海の姉である春海と結婚し、現在は娘が一人いる。
早くに母親を亡くしているが、姉が母親代わりをしてくれていた。
倉田家の両親にも面倒を見てもらっていた事もある。
春海には、付き合い始めた頃から、尻にしかれている。
空手はかなりの腕前で、イケメン。
かなりモテるが、春海以外に付き合った娘はいない。
大学生の頃、偶然、再会した夏海の想いには気付くが、冬樹自身が、夏海を好きだった事があるかどうかは不明。
『立花春海(旧姓 倉田春海)』
夏海の実姉で、冬樹の妻。
子供の頃は、男勝りで両親を心配させていたが、成長するにつれ、美しい容姿の女性へと成長する。
夏海と同様に、モデル系美人。
身長は170センチ以下(自己申告)。
その行動は、万事においていい加減だが、いつも周りの人間が何とかしてくれる為、トラブルになる事は少ない。
いわゆる、動くと『残念』なタイプ。
夏海とは、冬樹をめぐってギクシャクした事もあったが、基本は妹想いで姉妹の仲は良い。
実は、三十を前にして、男っ気のない夏海を、本気で心配していた。
『佐藤秋代(旧姓 立花秋代)』
春海と同級生で親友。冬樹の実姉。
夏海の事も、妹同然に思っている。
子供の頃は、かなりのブラコンで、倉田姉妹と、冬樹をめぐっての奇妙な四角関係だった事もある。
容姿端麗、家事万能で明るく優しい女性。
中学生の頃の冬樹が、誰の事が好きかを読み違えた事もあったが、周りの空気を読み、気を使う事が出来る女性。
現在は結婚しており、一児の母。
春海達と違い、遠くに住んでいるので、めったに顔を見せず、父親を嘆かせている。
ちなみに、現在の名字は、今、考えました…。
『倉田剛』
春海と夏海の実父。
冬樹の父親とは幼なじみで親友。
現在は、飲み友達。
自身の妻とも幼なじみで、彼女には頭が上がらない。
自身の両親(春海と夏海の祖父母)も健在で、比較的裕福な家庭と思われる。
女系家族で、彼に男兄弟はいない。
実父も婿養子。
出来れば、夏海には、ずっと家にいて欲しかったようだが…。
『倉田洋子』
春海と夏海の実母。
娘達が子供の頃は、春海が結婚出来るか心配しており、彼女達が大人になってからは、夏海が結婚出来るか心配していた。
『立花雅樹』
秋代と冬樹の実父で、春海の義父。
早くに妻を亡くしているが、再婚はしていない。
娘の秋代が、冬樹の母親代わりをしてくれた事に助けられていたが、子供達は二人共、家を出てしまい、現在は一人暮らしで淋しい思いをしている。
時々、顔を見せにくる孫娘(冬樹の娘)の成長を見守る事が唯一の生き甲斐。
出来れば、息子夫婦には同居して欲しいと思っているようだが…。
『立花佳代(故人)』
秋代と冬樹の実母。
子供達がまだ幼少の頃、亡くなっている。
『山下千絵(旧姓 斉藤千絵)』
夏海の親友。
既婚。
明るい性格で、思い立ったら即行動がモットーの、夏海達のムードメーカー。
夏海は、彼女の性格が姉の春海に似ていると思っているようだが、春海よりは周りに気を使える。
ちなみに、彼女の現在の名字も、今、考えました…。
『高橋詩織(旧姓 広田詩織)』
千絵と同じく、夏海の親友。
結婚しており、最終話の時点では、二児の母。
大学生の時、冬樹の事が好きになってしまい、夏海との関係がこじれた事もある。
夏海と和解した後、新しい彼氏が出来、その彼氏が今の夫。
冬樹と出会う前は、人見知りな上に、引っ込み思案で、おとなしい娘だったが、恋をしてからは少しずつ明るくなっていった。
彼女の現在の名字も…、以下同文…。
以上で人物紹介は終わりです。