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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

めちゃ好きな人を落とす

掲載日:2026/05/31

***BL*** 同じクラスの田代は、ポンヤリした男子だった。俺は、彼が好きになり、彼を落とすと決めた。 ハッピーエンド



 最近友達になった田代は、ちょっとおっとりしていて可愛い。


 ポヤポヤした感じが、此方こちらにも伝わって来て、穏やかな気持ちになる。



 可愛い、、、。



 欲しい。だから、俺は田代を落とす事にした。



*****



 田代は優しい。



 体育の授業が始まる前、体育館の床に座りながらチャイムが鳴るのを待っていた。

 わざと寄り掛かっても、何も言わない。ちょっと俯き加減でいると

「間下くん?」

と聞いて来た。

「具合悪い?」

「ううん、大丈夫。ちょっと寝不足」

と言いながら、更に田代に体重を掛ける。

「無理しない方が良いよ?」

「ん」

顔を上げ、田代に微笑みながら

「ありがと」

お礼を言う。

 田代はちょっと照れながら

「具合悪くなったら、すぐ声掛けてね」

と心配してくれる。



 可愛いな。


 

**********



 間下くんは格好良い。女の子にもよくモテる。それなのに、僕の友達になってくれるなんて、良い人だ。

 一緒にいると、兎に角女の子に声を掛けられる。隣に立つ僕は、ほぼほぼ無視される。

 まぁ、それはそれで僕は平気なんだ。

 女の子が苦手だし、あんまりたくさんの人と一緒にいると、疲れちゃうから。

「間下くん、放課後一緒にカラオケ行こうよ」

と誘われていた。

「田代も?」

と確認している。

「間下くん、僕はいいよ」

と彼の腕を引きながら言うと、女の子達は一瞬の間を置いて

「も、もちろんだよ」

と愛想笑いをした。

 こう言う時、意外と傷付くんだよね。

「あっ!」


 ビクッ!


 間下くんが急に大きな声を出すから、びっくりした、、、。

「ごめん、ごめん。今日は用事があったんだ」

そう言って、僕の肩を組む。

「そうなの?じゃあ、今度一緒に行こうね」

女の子って凄いな、って感心した。ちゃんと次の約束を取り付けちゃうんだ、、、。

「んー、行けたら行くよ」

そう言って間下くんは、僕の肩を抱いたまま彼女達と距離を置いた。


 廊下の角を曲がってから

「間下くん、用事があったの?大丈夫?」

と心配したら

「大丈夫、大丈夫。田代と遊ぼうとしただけ」

と言われた。

「え?そうだったの?」

確認した

「ダメ?」

小首を傾げて問われると、つい、微笑ましくなってしまった。

「良いよ」

と返事をすると

「やった!」

と嬉しそうにした。


 表情豊かで、間下くんを見ていると、飽きる事が無かった。


 

**********



 夏の校外学習で、空港まで行く。

 まぁ、あれだ。

 修学旅行で空港集合するのに、一度体験させておこうと言う訳。

「田代、校外学習、一緒に行こう」

「良いよ」

「二人だけで行こう?満員電車にみんなで乗ると迷惑になるしさ」

「満員電車になっちゃうの?」

田代は自転車通学だから、朝の電車の状況を知らない。

「多分ね」

「満員電車ってすごい?」

「俺、下り電車だし、いつも早目の電車に乗ってるから分からないけど、少し遅い電車に乗ると上り方面はすごいよ」

「じゃあ、早目に移動する?」

「その方が良いかな、、、」

田代はスマートフォンで、集合先までのルートを調べる。



**********



「え、、、これに乗るの?当日も?」

今日は、校外学習で肩掛け鞄だけど、修学旅行当日はキャリーケースを持って乗るんだ。そう思うと気が重い、、、。

 電車の扉が開き、ドア付近の人が降りてから乗り込んだ。

 間下くんは上手に反対側のドアまで行き、僕を寄り掛からせる様に、そっと押した。

「間下くん、ドアに寄り掛かりなよ」

「え。良いの?」

「うん」

「ごめんね、有難う」

ドアが閉まり、ゆっくり動き出す。

 次の駅でも人が乗り、降りる人がいないから、後ろの人に押されてしまう。

 僕は間下くんが潰されない様に頑張っていた。

 それでも後ろから押される力が凄くて、ドアに手を着いて踏ん張っていた。間下くんが近過ぎて、息が掛からないように俯いていると、次の駅で沢山人が降りた。

 少し余裕が出来た車内で、間下くんがそっと僕をドアと座席近くの角に立たせてくれる。

 沢山降りたから空くかと思ったら、それ以上に人が乗り込んで来た。

「乗り換え駅だから、凄いね、、、」

と言われて納得。


ギュゥ、、、。


カーブの所為で、近かった間下くんの距離が更に密着するまでになってしまった。


「ごめん」

「わ、、、」


ゾクゾクした。


耳元で間下くんが囁いた。少しだけ背が高い彼。


 もう一度カーブ。


「本当にごめん」


僕は首を振るしか出来なかった。



**********



 満員電車になる様に、ワザとこの時間にした。

 田代がドアにより掛かれる様に、反対側のドア付近をキープする。

 でも、田代は俺をドアに寄り掛からせた。


 優しいな。


 しかも、俺が押し潰されない様に、ドアに手を着いて空間を作ってくれる。


 プルプルと震えながら頑張っている姿が可愛い、、、。


 乗り換え路線の多い駅で、田代はホッとした顔になった。俺は、田代をドア付近の角に立たせる。

 肩掛け鞄を握り締める彼は可愛かった。

 入れ替わりで入って来た乗客はさっきよりも多く、田代との距離が近くなった。

 彼は少し俯いている。

 かすかにシャンプーの香りがして、ドキドキした。


 その時、カーブの遠心力で後ろから押され、俺も田代を押し潰してしまった。

「ごめん」

と言うと、田代が更に小さくなった。大丈夫かな?と思って田代を見ると、真っ赤になっている。


やばい、、、ゾクゾクする。


もう一度大きなカーブが来て、俺は更に田代を押し潰した。


「本当にごめん」


色んな意味で、、、。


 少し身体が離れて、田代は俺の顔を見た。


「大丈夫だよ」


 ほんのり赤い顔、潤んだ瞳、、、めちゃ、可愛いんだけど、、、。



 抱き締めたい、、、。俺はにっこり笑った。冷静を保つ為に、、、。



*****



 電車から吐き出される様に降りた俺達は、人波の邪魔にならないホームの真ん中に逃げた。

「やっと降りられた、、、」

「通勤ラッシュ、ヤバイね」

時間に余裕があった俺達は、1番後ろをゆっくり歩く。

「これで、キャリーケース持って乗るなんて地獄だね、、、」

「もっと集合時間ギリギリにしたら、ラッシュ時を避けられるのかな?」

「でも、当日電車が止まったら間に合わないよ?」

二人でうんざりした。

「今日は集合時間の40分前にしたんだよね?そうしたら、もっと早く来て、どこかでお茶する?」

空港行きの電車に乗り換える為に歩きながら、周りにお店が無いかキョロキョロする。

「そうだね、その方が安心かも」

「修学旅行、同じ班になりたいな」

俺は隣を歩く田代を見ながら、可愛くお願いした。

 田代は、ちょっと驚いた様に目を見開き、嬉しそうに笑う。


うん、嫌われていない。


「じゃあ、班決めの時はよろしくね」

「やった!」

と可愛く、両手でガッツポーズをした。


 最近の俺、こんな事も平気で出来る様になっている。



 今日の校外学習は、私服だった。

 だから、学校の奴等は何と無く、「アイツ等同じ高校かな?」位の認識。

 俺達は空港直通の電車に乗ると、静かに外を眺めていた。


 派手な私服の女子達が、車内でお喋りに夢中になっていた。え〜、、、ヘソとか出てんだけど、、、。校外学習だよ?ヤバく無い?

 つい知らんフリをしていたら

「間下くん!」

と声を掛けられた。誰だよ、知らねーよ、、、。

 車内を高いヒールのサンダルで歩いて来る。


 だから、マジで誰だよ、、、。


「お早よう。私服格好良いね」

君はお腹を出して、冷えないの?言いたい事を飲み込んだ。

「ね、向こうにみんないるから一緒に行こうよ」

イヤだよ、、、。

「俺も友達と一緒だから」

多分、田代の事は見えていない。そして、田代も俺の後ろにそっと隠れた。、、、可愛いな。

「誰と来たの?」

俺の身体に触れて、後ろに隠れた田代を見る。

「え?誰?」

お前こそ、誰だよ、、、

「田代だよ」

「ああ」

と言って、向き直る。

「ね、向こうでみんなと合流しよう。一緒に回ろうよ」 

面倒臭い、、、しかも、いまだ誰か分からない、、、。

「ごめん、、、誰?」

「え、、、」

彼女は固まった。

「今日は化粧して来たから分からないかな?杉山だよ」


???


思わず後ろの田代に

「知ってる?」

と聞いてしまった。彼女の顔が一気に赤くなり、何とも言えない表情になった。

「あの、、、僕の隣の席の、、、」

上目遣いで答える。、、、可愛い。

 振り向いて彼女に

「ごめん、知らない、、、」

と言うと、杉山は

「えへへ、、、」

と苦笑いをしながら友達の元に戻って行った。


「大丈夫?」

田代が俺のシャツを引っ張りながら心配してくれる。

「怒らせちゃったかな?」

俺も可愛く、困ったフリをして言ってみた。



**********



 間下くんは一緒にいると意外と可愛くて、僕は彼を守って上げたくなるんだ。


 校外学習で、僕の隣りの席の杉山さんに話し掛けられて

「怒らせちゃったかな?」

と困った顔をした。その顔にキュンッとしたのは、僕だけの秘密。

 彼は他の人にはいつも格好良いのに、僕にはそんな顔をするから、ちょっと嬉しかった。



 校外学習の目的は、公共の乗り物を使い、計画通りに行動する事と、非常時に対応出来る様に練習する事だった。

 先生に空港で到着の報告をして、それから更に場所を移動して、説明会に参加する。

 移動は各々の責任で、時間までに指定場所に着けば良い。一応、自由行動で飲食も禁止はされていない。

 電車で再び移動して、公共の学習施設内の会議室みたいな場所で、空港内の注意事項の説明があった。

 その際、キャリーケースは二日前に学校に持ち込み、先に発送する事が分かった。勿論、帰りもホテルから自宅に送る。


 説明会の後は自由解散で、遊びに行っても良いし、帰宅しても良い。


 僕達は、学習施設の入場料が安かったから、施設内のレストランでちょっとご飯を食べて、入場する事にした。


「何食べる?」

レストランは、平日のお昼を過ぎた時間だから空いていた。

「ピザにしようかな?ナポリタンも美味しそうだな」

悩んでいたら。間下くんが

「シェアしない?苦手?」

と聞いて来た。

 僕は別に気にしなかった。両方食べたかったから、どちらかと言えば有難い。

「良いの?」

と聞くと、間下くんは嬉しそうに

「俺も、両方食べたいから」

と言ってくれる。優しいな。


 僕達は、食券機で券を買い、ピザとナポリタンとジュースをそれぞれ買った。

「田代、水飲む?」

席に着こうとしたら、聞かれて

「うん」

と答えた。

「持って来るから座ってて」

スッと給水機に移動する間下くんは、気が利くな、、、と感心した。


 給水機は、少し離れた場所にあった。僕が間下くんを見ていたら、女の子が声を掛けていた。

 やっぱり彼はモテるんだ。

 間下くんが僕の方を見た。

 思わず視線を逸らす。

 番号を呼ばれた。

 取りに行かないと、、、そう思って立ち上がる。


 二つのトレーを一人で持つのは怖くて、カウンターでオロオロしていたら

「はい、お水」

と間下くんがトレーにお水を乗せてくれた。お互いに一つずつトレーを持ち、席に戻る。

「間下くんが戻って来てくれて、良かった。一人じゃ持てないから悩んじゃったよ」

間下くんが笑う。優しくて、好きだな、、、って思った。


「あれ?間下?」


 知らない人だった。

住川すみかわ」 

「今から飯?」

「うん。お前等終わったの?」

「そ。これから移動して、ゲーセン行って帰るんだ。お前も来る?」

「いや、俺等、上のプラネタリウム見に行こうと思って」

「そっか、じゃ、またな」

二人は手を振り合った。

 間下くんの友達と友達は、私服姿が格好良かった。間下くんも洋服のセンスが良い。彼は、僕といるより彼等側の方が似合ってる、、、。そんな風に考えてしまった。

「どうしたの?」

「間下くんの友達は格好良いね。間下くんも格好良いし、、、」

「好きになっちゃダメだよ?田代は俺のなんだから」


「?」


間下くんが唇を尖らせながら、ピザを切る。上手に切ると、ピザの半分をパスタの皿の半分に載せると、パスタを半分ピザの皿に移した。

「はい、田代の分」

「え?」

パスタの上に載ったピザをずらし

「ほら、俺の分」

と笑う。

「分けてくれたんだ、ありがとう」

間下くんは、ふふふと笑った。

「頂きます」

二人で声を合わせて、同時にピザに手を出した。


 ゆっくりご飯を食べて、時間を調整して、4時からのプラネタリウムに入る。

 学校のみんなは移動してしまったのか、人はまばらだった。

 受付で

「椅子だけじゃなくて、フラットタイプのスペースもありますよ。寝転びながら見れるので、是非、お楽しみ下さい」

と言われた。

 僕達はお礼を言って、プラネタリウムに入った。


 真ん中に広いスペースがあって、膝掛けとクッションも置いてある。僕達は、膝掛けとクッションを借りて寝転んだ。

「これより、プラネタリウムが始まります」

と放送が入り、注意事項を聞くと、ゆっくり電気が消えていく。

 僕はドキドキしていた。隣りの間下くんを見ると、僕の方を見ながら

「楽しみだね」

と小さな声で言った。


 プラネタリウムは30分程だったけど、普段見た事の無い星の数を見て、ちょっと感動。

 ゆっくり電気が点いて、膝掛けとクッションを返す。部屋を出て、急に現実に戻ると

「お土産見ようよ」

と誘われた。



**********



 出口の横に、小さな小さなお土産屋さんがあった。

「田代は、何座?」

「、、、乙女座」

恥ずかしそうに田代が呟いた。え?乙女座?似合う、、、。

 乙女座を探すと、8月23日から9月22日生まれって書いてある。

「あれ?誕生日いつ?」

「あ、、、今日」

「マジッ?本当?俺、お土産買うよ!プレゼントしたい!」

「え?いいよ、いいよ。悪いよ」

「ヤダ。買いたい」

「でも、、、」

「ね、買わせて?」

コテンと首を傾げる。いや、最近の俺、可愛い仕草が自然に出るな、、、。

「じゃ、間下くんのは僕に買わせて?何座?」

「俺は山羊座」

「え、格好良い、、、」

「そお?」

「この間、ヤギの目線カメラって言うの見たんだ。断崖絶壁を山羊が走るの。凄かったよ」

「へぇ、見てみたい」

「探したらあるよ」

「あ!閉店時間5時だって、先に買おうよ」

それから、二人で慌てて星座のキーホルダーを買った。


 館内を出て、電車に乗ってからプレゼントを交換した。5時を過ぎていたから、会社帰りの人もいて、電車は混み始めていた。

 田代は一所懸命ヤギの目線カメラを探し、見つけると俺に片方のイヤホンを貸してくれた。

 二人で頭をくっつけて観る。

 映像はびっくりする位凄くて、何だか嬉しかった。

 その後もヤギの映像を見つけては、二人で観た。

 可愛い赤ちゃんのヤギや、面白いヤギの映像を観ると時間はあっと言う間に過ぎた。



**********



 間下くんが映画に誘ってくれた。

 映画は家族としか行った事が無いから、ドキドキする。


「何が観たいか、考えておいて」

と言われたけど、間下くんは何が観たいんだろう。僕は間下くんの観たい映画が良いんだけどな。


 待ち合わせ場所と時間を決めてくれた。僕は絶対遅れない様に、10分早く着く様に計算した。それなのに、電車が止まって少し遅れている。

 停車時間は大した事無い。でも、遅刻しないかと心配だった。

 知らない駅での待ち合わせだったから、迷わないか緊張していて、「早く動いて!」と心の中で叫んだ。

 

「電車が止まって少し遅れます。ごめんね」

とメッセージを送ると

「大丈夫。まだ止まってる?」

と返事が来た。

「さっき動き出しました」

「待ってるから、慌てないで」

僕は時計を見ながら、もう少し早く出れば良かったと後悔した。


 駅の構内でも迷い、僕は少しパニックになっていたのかも、、、。


 待ち合わせ場所にいた間下くんは、男の人に声を掛けられていた。

 誰だろうと思いながらも、間下くんが迷惑そうにしている。

 

 助けなきゃ!


 僕は、走って行って間下くんと男の人に間に、割って入った。

「彼に何の御用ですかっ?!」

大きな声が出ちゃった。

「あのっ!僕達用事があるから失礼します!」

と間下くんの腕を組み、グイグイと引っ張る。

「田代?」

冷静に名前を呼ばれて、彼の顔を見る。

「あれ、俺の兄貴」

「、、、嘘、、、」


 恥ずっ!


僕は走って戻り、男の人に頭を下げた。

「ごめんなさいっ!」

後ろから間下くんも来て

「な、女の子じゃ無いだろ?」

と笑う。

「何だよ。お前がデートするのかと思って、顔を見に来たのに残念だ」

「そ、俺達これからデートなんだ、だから兄貴はさっさと帰れよ」

そう言いながら、僕を後ろから抱き締めた。


 うぎゃっ!


 自分の顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。

「お前、あんまり揶揄からかうなよ?彼、困って真っ赤になってるぞ?」

そう言うと、笑いながら

「デート楽しんで!」

と駅の方へ行ってしまった。


「じゃ、俺達もデートに行こうか」


間下くんは、僕を笑いながら揶揄った。



**********



 兄貴がうざい、、、。



 俺が朝からウキウキしていると、何かを感じた兄貴が着いて来た。

「何で着いて来るんだよ」

「違うって、たまたまだよ。たまたま。俺も用事があるの。お前は何処どこに行くんだよ」

「友達と映画。駅で待ち合わせ」

「同じ方向だから、途中まで一緒に行こうよ」

兄貴はしつこかった。


 駅に着いたら着いたで

「ちょっと早いな。お前の友達に挨拶してから行くよ」

と言い出す。本当に迷惑だ。二人でごちゃごちゃやっていたら


「彼に何の御用ですかっ?!」


と田代が俺の前に立った。


 え〜、、、格好カッコ可愛い、、、惚れる、、、。


 震えながら俺を助けようとしてくれた。


 嬉しいなぁ。



*****



 俺はホクホクとウキウキと歩く。

「間下くん、ごめんね。お兄さんにも謝っておいて」

 田代は恥ずかしそうに、モジモジしている。

「俺達、デートだから手を繋がないと」

と笑って、手を繋ぐと

「もう、間下くんたら」

と「仕様がないな」みたいな感じで笑う。


 拒否しないんだ。


 嬉しくて、ブンブン腕を振りながら歩いた。



 、、、と言っても、田代は恥ずかしかったみたいで、すぐ外されちゃったけど、、、。


 

*****



 折角映画館に来たのに、残念な事に観たい映画が無かった。


 めちゃくちゃ女の子が好きそうなラブストーリー

 主人公が病気で死んでしまう話

 小さな子供向けのアニメ

 海外の暴力シーン盛り沢山のバイオレンス物

 ゾンビが出て来るホラー映画


「どれにする?」

田代は固まったまま動かない。

「間下くんの観たいので良いよ」

「本当?俺、この中ならホラー映画かな」

「、、、」

だよね。田代、ホラー映画とか苦手そうだもん。でも、隣の席でビクビクする田代を見たいじゃん。

「ホラーでも良い?」

可愛くおねだりしてみる。

「い、いいよ」

え?既に涙目で可愛いんですけど、、、。

「ポップコーンとか買う?」

コクコクと頷く。

 先にチケットを買い、端の二人席を選ぶ。


 ジュースとポップコーンを持ち、開場を待ちながら宣伝用の映像を観る。田代が既に後悔し始めたみたいだ。



**********



 映画館が開場して、僕達は指定席に座る。

「奥と通路側どっちが良い?」

と聞かれて、奥を選んだ。

ジュースはお互い、反対側のカップホルダーを使った。ポップコーンだけ、真ん中に置いて二人で食べる。

「ポップコーンに溶かしバター掛けた人って、天才だと思う」

と僕が言うと、間下くんも

「同感」

と言ってくれた。



 映画が始まると、出だしから不穏な映画で、主人公が誰もいない街に立ち寄る所から始まる。映像事態が暗く、これからの展開を示唆している様だった。


 ドンッ!


と急に大きな音がして、僕は椅子から数センチ浮き上がった様にびっくりした。そのまま耳を塞ぎ、身体を椅子に押し当て、出来るだけ低い体勢になった。

 ゾンビ自体は怖く無かった。何となく作り物という感じがするから。歩き方とか「凄いな」って思いながら見てしまうし、特殊メイクって分かっているから関心ばかりしていた。

 でも、やっぱり内容的にそろそろ何かが起きる、、、って言う雰囲気になると、ドキドキして怖い。


 ドンッ!

 ビクッ!


 二度目も跳ねてしまった、、、。

 こっそり間下くんを見ると、僕を見ていた。

 そっと耳打ちする様に

「怖い?」

と聞いて来る。僕は首を横に振る。彼がニコリと笑う。


 ドンッ!

 ビクッ!


 びっくりして目を閉じた瞬間涙が滲んだ。

 間下くんは、そっとポップコーンを移動して手を握ってくれる。


 ドンッ!

 ゾンビの画面いっぱいの顔っ!


 ヒーッ!


 身体を出来る限り画面から遠ざける。間下くんは握っていた手を解き、僕を抱き締めてくれた。

 耳を塞ぎ、画面も見られない僕。

 暫くして、間下くんが僕の肩を叩く。

 耳を塞いだまま、声には出さず

「もう終わった?」

と聞くと、うんうんと頷いた。僕は塞いだ耳からゆっくり手を離し、画面を見た。


 はぁぁぁ、、、。心臓に悪かった。


 ドンッ!

 ぎゃっ!


 声は抑えたけど、僕は間下くんにしがみ付いた。



**********



 映画が終わり、エンドロールを最後まで観て、俺達は席を立った。

 作品は正直イマイチだったけど、田代がしがみ付いて来たから、俺はご満悦だった。

 扉を出て、私語もしやすくなると通路はザワザワとしていて、田代も漸く口を開いた。

「疲れた、、、」

映画の感想が疲れたって、、、。

「俺は面白かったよ、田代が」

と言うと、少し目を見開いて

「ひどい、、、」

と言った。

「ごめん、ごめん、あんなに怖がると思わなくて」

「ゾンビは怖く無かったけど、映画の雰囲気と急に大きな音がするとびっくりしちゃって」

「もしかして、お化け屋敷も苦手?」

「え、、、」

引き攣ってる、、、。



 え〜、、、今度、お化け屋敷行きたいなぁ、、、。



**********



 ある日気が付いた。

 僕は女子に嫌われている。

 いや、前から女の子が苦手だなって思っていたから、嫌われている自覚はあった。でも、最近はちょっと酷い。

 もしかしてアレかな?いつも間下くんを独占してるから、、、。

 すれ違い様に舌打ちされた事がある。

 僕が一人でいる時に「たまには離れろよ」と呟かれたし、間下くんと一緒にいる時に、睨まれた事もある。

「田代?」

「え?」

「考え事?」

「あ、、、。ううん、何でも無いよ」

修学旅行の班は、無事間下くんと同じになった。他に女子が三人。

 40人クラスで男子の人数が少ない為、男子2人女子3人で班を決めた。

 女の子達から声を掛けて来た。

「間下くんは何処か行きたい所あるの?」

「オプショナルツアー、何やりたい?」

と楽しそうだった。僕には誰も話し掛けて来ない。

「オプショナルツアーってお金掛かるんだよね?」

と間下くんに聞かれて

「うん」

と答えると

「じゃあ、親と相談かな?」

と返事をしていた。

 女の子達は自由行動のコースを決めていても、会話があっちへ行ったり、こっちへ行ったりで中々決まらず。仕舞いには脱線して、修学旅行とは違う話しをし始めた。

 一応、希望の場所は何ヶ所か出ていたらしく、間下くんはノートパソコンで場所を確認すると、スケジュールを組み始めた。

「これで良い?」

と手書きのメモを見せると、彼女達は

「すごい!良いじゃん!」

と喜んだ。



 休み時間、間下くんと2人になってから

「全部彼女達の行きたい場所だったけど、間下くんの行きたい場所入ってたの?」

と聞くと

「あんな会話聞いてたら、いつまでも決まらないと思って諦めた」

「良いの?」

「俺は田代と一緒なら何処でも楽しいから。ちゃんと田代の希望も入ってただろ?」

笑う彼にキュンとした。

「所でさ、オプショナルツアー何にする?」

「え?親と相談って」

「あんなの嘘だよ。アイツらと一緒は落ち着かないと思ってさ。わざわざ同じのにはしたく無かっただけ」

「じゃあさ、間下くんのやりたいものが良い。間下くん、自由行動の時、希望出さなかったでしょ?本当は行きたい場所あったんじゃない?」



**********



 田代は俺の事をよく見ている。女子達が盛り上がり過ぎて、俺は面倒になり、自由行動場所の意見を出さなかった。

「じゃあさ、水族館コースが良いな」

「本当?僕も水族館行きたかったんだ!」

田代がふにゃんと嬉しそうに笑う。


 やっぱり可愛い、、、。


「だってさ、スキューバダイビングとか、素潜りとか水着持って行かないといけないじゃん。荷物増えるの嫌だし、水着に着替えるのも面倒だから」

「スキューバとかやりたいのかと思ってた」


 それより、水族館で田代とデートしたいから。


「田代も水族館希望で良かった」



*****


 

 田代が女子に話し掛けられていた。珍しい。待て、、、あの3人、修学旅行で同じ班の子達だ、、、。



**********



 僕は女の子達に話し掛けられて困っていた。修学旅行のオプショナルツアーで、間下くんが何を頼むか知りたいらしくて、、、。


 教えて良いのかな?


 でも、この3人も水族館になったら、僕は間下くんと一緒に回れない気がした。


 あんまり教えたく無いな、、、。


「ねぇ、間下くんの希望教えてよ。スキューバー?素潜り?」

「あの、、、」

「何してんの?」

「あ、間下くん。オプショナルツアーの件だけどさ、何にするか決めた?」

「俺はスキューバやりたいんだけどね」

「え?私も!スキューバダイビング興味あったんだ!」

女の子の顔がパッと明るくなった。

「一緒に受けられたらよろしくね」

と嬉しそうに言うと、3人でキャアキャア言いながら去って行った。


「間下くんスキューバにするの?」


 僕はスキューバは嫌だな、、、。


「え?水族館にするって言ったでしょ?」

「?」

彼の顔を見た。間下くんは悪戯っぽい顔をして

「「スキューバーやりたいんだけどね、親が金出してくれないから、水族館にした」って言おうとしたら、遮られちゃった」

と笑った。


 良かった、、、。一緒に水族館に回れそうだった。


「田代、嬉しそう」

「だって、間下くんと水族館行くの楽しみだったから」

誰にも聞こえない様に、小さな声で言った。間下くんが水族館希望だって、誰にも知られたく無かったから、、、。


 間下くんは僕に、そっと近付いて

「俺も」

と耳元で囁いた。



**********



 修学旅行の飛行機は座席が指定されていた。

 集合のチェックをすると、自分のチケットを渡される。旅行会社の人が座席を決めるから、仲の良い友達と隣同士、、、とはいかず。俺は2人席の指示された、窓側の席にいた。

 隣は男子。良かった。女子だと気を使うから。

 それなのにみんなの搭乗を待っている間に、杉山が席の交換をしたらしく、横に座って来た。


「何で?」


と思った。席の移動なんて有りかよ?

「交換して貰っちゃった」

と笑い掛けられた。


 俺は無視。


「ね、お菓子食べない?」


 自由だな、、、。


「席って交換して良いの?」

と聞いてみた。

「良いんじゃん?ダメかな?」

「ふぅ〜ん。、、、ちょっとトイレ」

杉山に通して貰って、席を立つ。


 田代は何処にいるんだろう、、、。


 後方のトイレに向かって歩いて行くと、4つ後ろの窓側にいた。

 俺は田代の横の女子に

「窓側行きたく無い?」と聞くと、隣が誰か聞かれた。

「山田と交換したらしくて、杉山」

「杉山さんか、、、苦手なんだよね。ごめん」

あらら、、、杉山より、田代の方が良いって事か。

「大丈夫、ごめんな」

と笑って。

「田代、現地でね」

と声を掛けた。


 1番後ろに先生達と旅行会社の人が纏まって座っていた。わざと

「先生、座席の交換は有りですか?」

と聞くと、旅行会社の人が

「万が一何かあった時困るので、チケットの席通りが良いですね」

と言った。

「もう、交換している人とかいますよ」

と言うと、旅行会社の人と先生が話し合いだした。

 俺はトイレに行く。


 飛行機内にお知らせが入り、席を交換している生徒は元の席に戻る様に言われた。



*****



 班行動は基本、明日の午後と明後日の搭乗前までで、今日はクラス毎に行動する。

 だから俺は飛行機を降りる時、田代が後ろから歩いて来るのを待った。

 座席で立って待っていると、田代は俺に気付き通路を開けて、前に入れてくれた。



 そのまま飛行機を降り、2人で行動する。



 夕方ホテルに着くと、めちゃくちゃ綺麗なホテルで女子は喜んでいた。

 付き合っていると噂のある奴らは、後ろの方で手を繋いで2人の世界に入る。

 


 羨ましいな、、、。俺も田代と手を繋ぎたい。



*****



 ホテルでは、男子は下の階で、女子は上の階だった。

 多分、男子が女子の部屋に遊びに行かないように、と言う事だろう。

 

 俺達は4人部屋、勿論田代と一緒。


 明日はオプショナルツアーがある。

 ツアーの内容によって、集合時間は違った。

 スキューバダイビングに参加する人は、講習を受けるから、朝が早い。

 俺達は、ホテルから徒歩10分にある水族館だから、比較的朝はゆっくりだった。

 朝食を摂ると、同じ部屋の2人はスキューバダイビングに参加する為に7時半前には部屋を出た。


 やっと田代と2人きりになれる。嬉しかった。


 田代は、ホテルのフロントから水族館のパンフレットを貰って来ていた。

 ベッドに転がりながら眺めている。

「ねぇねぇ、間下くん。見て見て」

と言って、ベッドに俺が寝転ぶスペースを作ってくれた。

 俺は遠慮無く、隣に寝転ぶ。

「お土産屋さんがめちゃくちゃ広いよ」

「え?お土産屋さんチェックしてたの?魚じゃ無くて?」

「へへへ」

と田代が笑う。

 そのまま2人でパンフレットを眺め、他愛も無い話しをしながら時間までゴロゴロした。


 はあ、、、二人きり最高、、、。


 9時半にロビーに集合して、みんなで歩いて水族館に行く。

 意外な程、水族館コースは人気があった。



 水族館はやっぱり良い、、、。館内に入ると自由行動で、1時にホテルに戻れば何をしていても良かった。

 田代は静かに魚を眺める。カラフルな魚や珊瑚が多くてゆっくり過ごした。

 水族館の中では、大きな声で話す人もいないから、落ち着いている。


 午後は班行動があるから、お土産を見たら昼食を取らないといけない。



*****



 田代がジンベイザメのぬいぐるみで遊んでいる。

「欲しいの?」

「うーん、でも荷物になりそうだよね」

「あー、明日自由行動あるか、、、。でも、最悪、スマホと財布が有れば良いから、リュックの中身をキャリーケースに入れたら、ぬいぐるみはリュックに入るんじゃ無い?、、、俺も買おうかな」

「え?本当ホント?」

「うん、修学旅行の記念に。どっちの色が良い?」

薄い水色と、薄い灰色があった。全身に白い斑点と、小さな黒い目。口を開けていて可愛かった。

「水色」

「俺も水色にする。また交換しようよ」

「良いの?」

「記念だから」

俺達は、抱えられる大きさのジンベイザメのぬいぐるみを交換した。



**********



 お昼ご飯を食べて、荷物を部屋に置きに行き、1時にロビーに集合した。

「間下くんっ!」

同じ班の女の子が、間下くんを見つけて叫んだ。

「お待たせ」

と合流すると、自由行動の説明を聞いて解散した。

「ねぇ、最初に何か食べない?」

「昼飯食って無いの?」

「時間無かったー!」

「昼飯食ってから集合だよね?」

「スキューバだったから、着替えとか時間掛かって」


 僕はスケジュールを思い出していた。確か、どのオプショナルツアーもお昼ご飯の時間は取ってある筈だ。何でご飯を食べなかったんだろう?


「俺等、食ってから来たんだけど」

「じゃあ、私達が食べ終わるまでお茶して待っててよ」

「、、、」

間下くんが呆れてため息をいた。

「タクシーの運転手どうすんの?」

自由行動中は観光タクシーを使う。

 あらかじめ担当の運転手にスケジュールを渡してあって、移動は全てタクシー。一班ひとはんに一台タクシーが配車されているから、予定変更なら運転手さんにも話さないと、、、。

「あ、、、」

「取り敢えず、タクシーに乗ってから決めたら?運転手も待ってると思うよ」

「そ、そうだね。じゃあ、移動してからご飯食べようかな?」

他の女子も賛同した。

 観光タクシーは、6人乗りで、僕と間下くんは1番後ろに乗った。運転手さんの自己紹介から始まり、目的地までの所要時間を確認した。

「お昼食べて無いんですか?それなら、お勧めのお店に連れてってあげますよ」

と言って、お握りのテイクアウトのお店に連れて行ってくれる。

「車の中で食べても良いよ。その間に移動しちゃうから」

親切な運転手さんだった。

 女子がお握りを買っているなか

「俺も一つ買おうかな」

と間下くんが言うと、女子達が

「お詫びに奢るよ」

とご馳走していた。僕はさっきのでお腹が一杯だっから、少し離れた所にいた。

 タクシーの中でみんながお握りを食べる。スキューバダイビングでお腹が空いていた彼女達は、一つでは満たされず、タクシーの運転手さんに次の目的地の美味しい物を聞いていた。

「はい」

「ん?」

「食べ掛けだけど、食べる?」

「良いの?」

「美味いよ。折角だから、ちょっと食べてみなよ」

本当は食べたかったけど、一つは無理だったんだ。嬉しい。

「有難う」

パクッと一口食べると、めちゃくちゃ美味しかった。スパムと玉子のお握り、初めて食べた。



*****



 自由行動は食べてばかりだった。しかも、女の子は写真を撮るのが好きなのかな?みんながみんな写真を撮る。

 間下くんが呼ばれて、一緒に写真を撮っていると、他の女の子が

「あのさ、、、。間下くんと二人きりになりたいんだよね、、、。協力してくれない?」

と言われた。

「いつ?」

「明日、空港に行く前の買い物の時間で」

「そう、、、なんだ」

「お願い!」

「上手く出来るか分からないけど、、、」

「有難う!」



**********



 珍しく田代が女の子と二人で話しをしている。

 と、思いながら写真に付き合わされた。

 そう言えば、田代と写真撮って無いな。後で、一緒に撮ろう。


 タクシーの運転手は、時間通りに行動出来る様に、上手く誘導してくれた。

 夕方ホテルに着き、明日の午前中の打ち合わせを軽くして、解散する。

 夕食は自由で、バイキング形式だった。

「このまま夕食に行く?」

と女子に聞かれた。部屋に戻ってから降りて来るのも面倒で、食べてしまう事にした。


 夕食を摂りながら

「そう言えば、間下くんスキューバダイビングじゃ無かったね」

と言われて

「ダイビングやりたかったけど、あれ、めっちゃ高かったよね。親に予算オーバーって言われちゃってさ」

と誤魔化すと

「私達、可愛い水着買ったのに、ダイビングスーツ着たから意味無かったよ」

と水着の写真をわざわざ見せられた。


 げー、、、。


「間下くんはオプショナルツアー、何にしたの?」

「田代と水族館行った。めちゃくちゃ綺麗だった。な!田代」

田代が上の空だった。

「あ、うん」


 田代?



*****



 夕食後部屋に戻ると、同室の二人も帰っていた。

「そう言えば、昼飯食べる時間無かったんだって?」

と聞くと

「え?普通に食ったよ。ダイビング終わって、すぐホテルに戻って下のレストランで食う奴もいたし、外に食いに行った奴もいたよ?」

「同じ班の女子が、時間が無くて食べて無かった」

「11時半にはホテルにいたから、食べたと思うけど?」


 、、、何なんだ一体、、、。


 田代が、お土産のぬいぐるみを抱いて、何か考えていた。


「お前等お揃いで土産買ったの?」

「そ、可愛いだろ?」

そう言ってジンベイザメを抱き締める。

「良いな、俺もそれ欲しいな」

意外と男子もぬいぐるみが好きだった。



*****



 風呂から上がると、田代はぬいぐるみを抱いて寝ていた。疲れたんだな。そう思って寝かせておく。

 そうだ、写真一枚も撮って無いから、寝顔の田代を撮っておこう。



**********



 修学旅行って、時間が早く過ぎちゃうな。

 そう思いながら、帰りの荷物を準備する。

 リュックの中身を必要最低限にして、ぬいぐるみを入れる。


「???」


 この場合、頭を上にするべきかな?尻尾かな?

 悩んでいたら、間下くんがジンベイザメの頭をリュックから出して、前抱えでニヤニヤしている。

「可愛い、、、」

 あ、僕も同じにしよう。

 真似してリュックを抱える。

「田代、田代、写真撮って貰おう!」

と言って、同室の子にスマートフォンを渡す。

 数枚撮って貰って、確認すると


「っ?!」


 僕の寝顔写真!!!

「そうそう、昨日撮ったんだよ。後で写真送るね」

と言われた。



**********



 仲の良い友達とか、好きな人がいつもと違うと何と無く分かるよね?

 今日の田代は少し変だった。

 朝食を摂りながら、考え事をしている様な、心配事でもある様な、何とも言えない変な感じがした。

「田代?どうした?」

「え、、、?」

なんか変だよ」

「そうかな?」

「、、、」

朝食の後も、部屋でぬいぐるみを抱いてベッドでゴロゴロしている。

「田代、具合悪い?」

「そんな事無いよ」

「そろそろロビーに行こうか」

四人でキャリーケースを運びながら移動する。

 送り状を確認して、荷物置き場に預け、班で集合した。

「田代くん」

と呼ばれて、田代はゆっくり顔を上げた。

「今日、よろしくね」

と彼女が笑うと、田代は小さく頷いた。


 何だ、、、?


 タクシーに乗り、最後の買い物に行く。

 ふと気付いたら田代が距離を置いている。俺はすぐに田代の側に行く。

 田代はあまり話さなかった。

「田代、今日変だね」

と言うと、横から

「間下くん!」

名前を呼ばれた。


 何だよ、今、忙しいのに、、、。


「一緒にお土産選んでくれないかな?」


 何で?


顔に出ていたらしい。


「お兄ちゃんのお土産なんだ、だから男子の意見聞きたくて」

「あ?、、、今は無理、田代の調子悪いから」

「僕、平気だよ。お土産選んで上げて?」

シャツの裾を握りしめて、緊張している、、、。

「分かった」

田代がホッとした顔をする。

「5分で戻る」

と言って、彼女の買い物に付き合う。


「お兄さん、何が好き?」

「お兄ちゃんはそうだなぁ、チョコレートはよく食べてる。お酒も飲むし

「未成年は買えない」

「あ、そうだよね。えっと、、、

「早くして」

「お菓子にしようかな?」

「お菓子ね。じゃあ、これ、俺の一番のお勧め」

そう言って、チョコレート菓子の箱を渡した。

「じゃあ」

と言って、田代の元に戻る。

「あ、、、」

「俺、田代と土産買うの楽しみにしてたんだ。邪魔しないで」

意地悪だけど、はっきり言わないと。

「ごめん、、、有難う、、、」



*****



「田代」

「、、、」

「用事終わった」

「お帰り、、、」

「何があったの?」

「あの、、、」

「、、、」

「あの、、、」

俯いてしまった。

「怒って無いから、何があったか知りたいだけだから」

「昨日、、、間下くんと二人きりになりたいからって」

「協力してって言われた?」

田代が頷いた。

「俺は田代とずっと一緒にいたかった。お土産も二人で色々見たいよ。アイツのお願いより、俺のお願い叶えて、、、」

「うん」

「アイツのお土産はちゃんと選んだから。ちゃんと二人きりになったし。その先は田代が心配する事じゃ無いからね。田代は約束を守ったし、それをモノに出来ないのはアイツが悪いだけだよ」

「有難う、、、」

田代は俺の顔を見た。少し泣いてるみたいだ。


「帰りの飛行機、隣り同士になれると良いね」

「うん」


 お土産を買い、最後の班行動で昼食を取る。


 班はギクシャクしてしまったけど、何とか空港の集合時間に間に合った。


 帰りの飛行機は隣同士、なんて上手い事は無く、俺は3人席の真ん中で、田代とも離れてしまった。

 まぁ、空港から先も一緒に帰るから良いんだけどね。

 

 飛行機を降りて集合し、注意事項を聞いてから解散になった。

 まっすぐ帰る生徒もいれば、少し遊んで帰る人もいる。

「田代、展望デッキ行かない?」

彼はリュックを前抱きにして、ぬいぐるみに触る。

 まだ、俺に何かを遠慮しているみたいだ。

「飛行機の離着陸とか見れるらしいよ。俺、まだ田代と一緒にいたいな」

可愛く言ってみても、上手くいかない。


「、、、良いよ、、、」


、、、小さな声だな。


 俺達は、屋上の展望デッキに出てみた。

「うわっ、、、広い。飲み物でも買ってくれば良かったね」

田代は小さく笑う。


「、、、ねぇ、、、俺の事、嫌いになった?」

「え?」

「田代、喋ってくれないから」

「違うよ。折角の修学旅行なのに、最後雰囲気が悪くなって、申し訳無かったな、、、って。間下くん、ごめんね」

「田代は悪く無いよ」


 あの女が勝手な事をするから、、、。


「俺さ、、、修学旅行、本当に楽しみだった」

「うん」



「夜景、、、綺麗だね」

「うん」


 11月の夕方の夜景は、信じられない位綺麗だった。

 夜の藍色が、夕日のオレンジ色を包んでいく様な、浸食して行く様な、不思議な感じがする。


「それ、気に入った?」

「?」

やっと田代が俺を見た。

「ジンベエザメ」

「うん」

ちょっと笑ってくれた。


 夕日があんまりにも綺麗だから


「俺、田代の事、好きなんだ」


と言ってしまった。


 田代が涙を堪えて、ぬいぐるみに顔を埋める。

「田代は?」

うん、と言うみたいに頷く。

「ちゃんと言って?」

「僕も間下くんの事、好き、、、。ごめんね」

「どうして謝るの?」

「好きなのに、二人きりになりたいって言われて、間下くんに嫌な思いをさせた、、、」

「、、、」

「頼まれた時に、断れなかったクセに、二人きりになって欲しく無かった。、、、なんか自分の気持ちがごちゃごちゃになって、どうしたら良いか分からなかった、、、」

「、、、」

「僕も、ずっと一緒にいたかった。あんな約束しなきゃ良かった、、、」

「じゃあ、俺達、同じ気持ちだったんだ」

「うん」


 俺は田代の首筋を触り、そっと俺に寄り掛からせた。田代の髪に頬が触れる。


「帰りたく無いね」

「うん、、、」



**********



 「二人きりになりたいから協力して」と言われて、僕の気持ちはどんどんおかしくなっていった。

 最初から乗り気では無かった。

 それでも、折角の修学旅行だし、思い出を作るのに協力した方が良いのかな?と考えてみたり。

 そう思ったかと思うと、でもやっぱり僕だって間下くんとお土産が見たい。

 色々な気持ちがぐるぐる回って、疲れてしまった。

 最終的に、間下くんに嫌な思いまでさせて、、、。

 怒ってはいないけど、いつもと違う間下くんは怖かった。



 僕の所為だ、、、。



 泣きたい位の気持ちだった。

 悲しいのか、辛いのか、淋しいのか、、、何だか分からない気持ちが一杯で、僕は口を開く事が出来なかった。



 飛行機を降りると、間下くんはいつもの間下くんに戻ろうとしていた。

 それは、それで僕に気を使わせて悪いな、、、と思ったり、、、。



 展望デッキで夕焼けを見ていたら、空がどんどん夜になっていく。自然の色が凄く綺麗で圧倒された。


「俺、田代の事、好きなんだ」


 涙が出そうになった。夕焼けに心を洗われて、それだけでも泣きそうに感動していたから、ポロリと涙が溢れそうだった。


 泣いたら嫌われる、、、。


 そう思って、ぬいぐるみに顔を埋めた。

 僕の気持ちを聞かれて、「僕も好きだよ」と頷いた。



*****



 いつまでも、いつまでも間下くんと一緒にいたい。

 でも、帰らないといけない。



 帰りの電車の中で誰にも見えない様に、僕はそっと間下くんの手を繋いだ。



**********



 修学旅行から帰って来てから、弟がヤケにご機嫌だった。


 気持ち悪い、、、。


「何?彼女でも出来た?」


 修学旅行の浮かれた頭で、告白しちゃったとか?


 

 弟は俺の言葉に暫く思考を巡らせ、ふふっと笑った。


「彼女、、、」


 ジンベエザメのぬいぐるみを抱えてニヤニヤする弟、、、気持ち悪い、、、。



**********



 朝の登校時間、駅からバスに乗っていると、田代が自転車で走っているのが見える。

 俺がバスから見ている事、知らないんだろうな。


 バスが彼を追い越し、俺は先に学校に着く。

 その足で駐輪場に回ると、丁度田代の自転車が入って来た。

 

 田代は俺に気付く。


 自転車を駐輪場に停めて

「お早よう」

と言う。

「お早よう」

肩を並べて教室に向かう。


 俺が田代を見ていると

「どうしたの?」

と聞いて来た。

「田代って、俺のモノだよね?」

と聞くと、一気に真っ赤になって

「ま、間下くんは僕のモノだからね!」

と叫んだ。



 可愛かっわいいなぁ、、、。




健全なBLも好きなんです、、、。

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