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第3話 邂逅ッ!

「ウッホウッホ!」


 すえた獣臭が鼻につく。心做しかニヤついた兎ゴリラが迫ってきている。丸太のように太い腕も怖いが、口に見え隠れする巨大な牙もヤバそうだ。


「クソッ。こっちはビキニアーマーすら着てないってのにっ!」

 ゲームの自キャラであれば戦えただろう。しかし今の自分はヒョロガリメガネの中学2年生だ。得意技のアシュラバーストと蓮花連脚は到底使えそうにない。


「万事休すか! せっかく異世界転生したのに、こんなところで……」

 恐怖で脚が竦んで動けない。身体はブルブルと震えている。


 兎ゴリラの太い腕が僕の顔目掛けて伸びてきたその時――


「諦めたら、そこでトレーニング終了だぞ? 少年よ」

 バッと更に太く黒光りする腕が現れ、兎ゴリラの手首を掴んだ!


筋咬マッスルバイト


 ごりゅごりっ! ぴぎゃーっ!

 骨が砕ける音が響き、兎ゴリラが悶えた!


『これは! 前腕部屈筋群が絡まり合う蛇の如く畝って途轍もないピンチ力を発揮しているわ。間違いなく200kgを超える握力……ジュルリん』

「ロッテさん?」


 目の前には黒光りするムキムキマッチョマンの背中が、聳える大木の如くたちはだかっている。身に纏うのは赤いトランクスのみという潔さだ。


上腕二頭筋頸動脈圧殺バイセプスチョークブレイク


 怯んだ兎ゴリラの背後に回ったマッチョマンが二の腕で首を締める。

 ぐぐ、ぎゃみゃ、あ、ぁ……!

 兎ゴリラは動かなくなってしまった。


『見事なスリーパーホールドだわ! 盛り上がり引き締まって血管の浮き出る力瘤は正にドラゴンの腕の如し……ダラリダラリ』


 僕の後頭部はロッテのヨダレでヌルヌルだ!


「少年。怪我はないか?」

「はっ、はい! 助けて頂いて有難うございますっ‼」


 ニカッと白い歯を覗かせたマッチョマンは名乗りもせずに背中を向けて歩き出した。その腕には兎ゴリラがぶら下がったままだ。


『待って! 私の勇者様‼』

 ロッテはヨダレを垂らしたままフラフラと飛び立ち、マッチョマンを追い始めた。

 

「ロッテ! 置いてかないで!」

 僕は腰が抜けてしまって立ち上がれない。


『え? あんた誰だっけ』


 ごみ溜めの蛆虫を一瞥するが如く、ロッテの冷え切った氷の瞳が僕を見下げていた。

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