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第23話 初筋者

 大暴れするマッチョマン達、ジェラート陛下、そして赤熱の大猩兎(フュアリアスレッド)。デカい。余りにもデカかった。聳え立つ頂きの霞む霊峰の如く。


「怪我は無いかね? エノ君」

 腰を抜かして尻餅をついてしまった僕に、ジェラート陛下が手を差し伸べて下さった。僕は言葉を発する事も出来ずに頷いて手を取る。その手はとても暖かかった。


「どうやら私は、歯牙にもかけない取るに足らん存在だったようだ」


 陛下はほんの一瞬だけ寂しそうな表情を見せた。


「鍛錬を続けるとしよう。私は未だ初筋者ビギナーなのだ」


 陛下は遠くを見つめてそう呟くと、数名の側筋を引き連れ、その場を後にした。



 ※※※



「Afla Team 瓦礫を撤去し使用可能な備品を選別! Bravo Charlie Delta Team 資材を確保し拠点を再建! 残兎は速やかに処分せよ」

「「Yes sir !!」」


 アイアンさんが指示を飛ばすとマッチョマン達が一斉に動く。完璧に統率された行動だった。油の差された歯車が噛み合い、淀みなく回転するかの様に。


「驚いた? エノ君」

 優しい眼差しでマリアさんが声をかけてきた。いつの間にかメイド服に着替えている。

「ここは軍隊の拠点だったんですね!」

「そうよ。兎の襲来に備えるためのね。私の部隊は炊き出しを始めるわ。手伝ってくれない?」

「はいっ! もちろんです!」


 大勢のマッチョマン達の勇姿を目の当たりにした僕は高鳴る胸を抑えきれず、じっとしてはいられなかった。興奮するロッテの気持ちが少し分かった気がする。


 焚き火に火が灯り、パチパチと音をたて始めた。仄かな熱と共に煙が昇り、枯れ木の焼ける匂いが広がる。


 僕は忙しなく動くメイド服姿のマッチョマン達に混じって、日が暮れるまで炊き出しの手伝いを続けた。





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