第2話 チュートリアルッ!
「それじゃあ、プロテインだから……ロッテ! どうかなぁ?」
『ま、まぁなんか甘ったるそうだけど勇者様がそう呼びたいならそれでいいよ……』
筋肉妖精ホエイプロテインは羽をパタパタさせてモジモジしている。満更でもなさそうだ! 分かりやすくてよろしい!
『ハッ……勇者様、この世界を救う為に筋肉をお貸しいただきたいのです』
筋肉妖精……ロッテは仕事を思い出したようだ。
「でも僕ヒョロガリだけどいいの?」
『え?……そうね筋肉なんて無さそう。アンタホントに勇者様? でもまぁなんでもいいわ。……先ずはステータス画面を開いて強化ポイントの割振りをしてみましょう』
「キタコレ! ゲーム転生の定番! ステータスオープンッ‼ ってどうやって開くのっ?」
『筋肉強化メニューオープンって叫ぶのよ。やってみて』
「ビ、筋肉強化メニューオープン!」
ぶおぉん、びゅらん!
おお、空間に半透明のタブレットみたいなのが浮かんでるー‼ 効果音は変だけど!
「ええっと。早速ステ振りするか。なになに……」
僕は中に浮かぶ文字に目を通す。
☆バルク 【1】
☆ディフィニション 【1】
☆バランス 【2】
☆バスキュラリティ 【25】
☆シンメトリー 【3】
★残り強化ポイント 【10】
「……ねぇロッテちゃん。バルクって何?」
『バ、バルク? 分かんないわ。あたしだって初めて見るもの』
だめだコイツ……
『ちょっと、可哀想な子を見るような目やめてよね!』
バスキュラリティも何だか分からないけど初期値が高い。ま、とりあえず極振りが定番だよな! ポチッと【35】。これでヨシ! ゲーマーの経験と勘を信じるのさっ!
「……なんにも変化無いような気がするけど、僕強くなってるのかな?」
『知らないわよ! なんか血管が浮いて見える気がするけどね。……ポイントの割振りが完了しましたね。それでは強化された筋肉を試してみましょう』
急にチュートリアルに戻るロッテちゃん、ちょっと恐い。
『勇者様、共に参りましょう』
べかべかべか〜っ。もーわもーわもーわーん。
「うわぁ眩し、わぁわあああ」
僕は再び眩しい光と変な効果音に包まれて意識を失った。
※※※
「うぅ。ここは?」
目を覚ますと森の中にいた。湿った土と草の青い匂いがする。
「ああ、ここは鼠鳥有の森か」
ゲーム通りの展開だ。案内妖精に連れられて来るこの森では雑魚モンスターとの戦闘が行われる。ボタンポチッで終わる呆気ない戦闘。
『さあ! 勇者様の筋肉を魅せる時が来ました!』
なんか所々言葉がおかしいけど、最早ロッテは気にしていないようだ。瞳をきらきら輝かせて「準備は完了しましたか?」と言いたげにこちらを見ている。
「はいはい。分かったよ。ラビットスライムだろ? やってみるよ」
ラビットスライムは兎耳の様な突起がプニッと2つ突き出た小さなスライムだ。ゲーム中で最弱のモンスター。まぁ余裕だろ。
「え。ちょ、ロッテちゃんアレ……何?」
余裕ぶっこいてた僕の前に現れたのは兎耳のついた白いゴリラだった。胸板の厚さと腕の太さが見るからにヤバい。赤い瞳で鋭く睨みを効かせながらジリジリとこちらに近づいてくる。
『盛り上がる大胸筋の張り! 見事だわ……ジュルリ』
「ロッテちゃん? よだれ垂れてるよ」
『ハッ。えと。何だろ、あたし知らない!』
ロッテはテヘペロっと舌を出すと頭の後ろにへばり付いて震えだした。
『チュートリアルを完了しました。勇者様のご武運を祈ります』
「えっ。ちょっ! めっちゃ中途半端やんか〜っ‼」
因みに僕は関西出身なので追い込まれると関西弁が発動するのだ!
ぱっぱらぱっぱ、てててってって♫
『筋肉の惑星オンライン』
てーてててーててててー♫
奇妙な音楽と共にオープニングタイトルが表示されて流れていく。
迫る兎ゴリラの頭上に。
『筋肉の惑星。それは汗と熱気に包まれたむさ苦しい男達の惑星。俺達はようやく登り始めた。果てしない筋力トレーニングの坂を。俺達の戦いはこれからだ!』
ぱーってれてれーぱらぱぱっぱらー♪




