表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/24

第13話 青と赤と

 両手に持ったキャンディを見つめる。

 ツヤツヤと輝く青い飴と赤い飴。よくある駄菓子の人工的な色味。


 僕はその二つを同時に口に含んだ。

 安っぽい合成甘味料の甘み。懐かしい思い出を伴って舌先に絡み付く。


「正一兄さん……」


 数分先に産まれただけなのに、何故か僕よりずっと大人びていた。僕とそっくりなヒョロガリメガネ。透けるような白髪に赤い瞳。病院を抜け出して、コッソリ買った二つの飴。一緒に舐めようって言ったのに。赤い飴はその手から転がり落ちた。


 涙が溢れ、頬を伝って落ちていく。


 ロッテが、アイアンさんが、マリアさんが、愉快なマッチョさん達が、流れる銀河のような光の粒子に変化して行く。その顔は皆、笑顔に溢れている。祝福するかのように。満足したかのように。


 いつの間にか、空に浮かぶ円形の地面に僕は立っていた。目の前には枠の無い全身鏡が浮かんでいる。映っているのは白髪に赤い瞳の正一兄さん。少しずつ白髪は黒髪に、赤い瞳は黒い瞳に変わって行く。


「俊一君だね」

 黒縁メガネのスリムな男性が鏡の横に現れた。

「はい。俊一です」


「野暮かもしれないが……説明しても構わないかな?」

「はい……お願いします」


「この世界は【青い惑星(ブループラネット)オンライン】を元に創ったフルダイブ型VR医療システム。その残骸と言った方が良いかもしれないな」


「兄が被験者となっていたシステムですよね」

「その通り。そして正一君の意志……魂とでも言うべき存在が支配してしまった世界だ。彼の望んでいた事、やってみたかった事、心残り。それがこの世界を創り変えて現れていたんだ」


 僕達はひんやりと冷たい床に座る。


「兄は変な漫画やゲームが好きでしたからね」

「そうだったな。マッチョ同士の格闘ゲームとか、妙なポエムばかり表示されるレースゲームとかだね」


 クスクスと笑いあった。


「この世界では私も大変だったんだぞ? 彼の思うキャラクターを演じないと、私自身の存在すら揺らぎかねなかったからな」


 スーツの男性が空を見上げた。光の粒子がキラキラと舞っている。


「医療システムを元に戻したかったんですか?」

「いや、このまま消えていくのを眺めるとするよ。私は縛られた彼の魂を救いたかっただけだからね」


「ありがとうございます」


「……正直なところ、なぜ君がこの世界で正一君の姿になって現れたのか、そして君が元の世界に戻れるのかも、私には分からないんだ。すまない」


「いえ、きっと大丈夫です」


「そうか、君がそう言うのなら、そうなのだろう。また、会えることを楽しみにしているよ。俊一君」


「この世界は……きっと、僕を……」


 やがて溢れ出る涙と光が混ざり合い、全てを覆い尽くして何も見えなくなってしまった。



 ※※※



 暗い部屋の中でディスプレイが光を放っている。黒髪の少年が机に突っ伏して、すうすうと寝息をたてている。その顔は満足げに微笑んで見えた。


――――――

 正一『俊一。楽しかったよ! ありがとなっ! またなっ‼』


 正一がログアウトしました。

――――――


 輝くディスプレイの中。チャット欄はその動きを止めて、ビキニアーマーの女性が森の中に佇んでいる。その肩には緑髪の妖精がちょこんと腰掛けて、羽をパタパタさせていた。


 スヤスヤと眠る少年の隣で、青い飴と赤い飴が仲良く寄り添い合っている。






ここまでお読み頂きましてありがとうございます。楽しんで頂けたでしょうか?このエピソードで本編は完結となります。この先はエノが飴を一つしか食べなかった世界線のifストーリーで連載を継続します。良ければブックマーク、コメント、評価等、お気軽にお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ