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第1話 テンプレッ!異世界転生ッ!

「アシュラバースト!」

 ウェービーな黒髪を揺らして女性が叫ぶ。露出の多いビキニアーマーを身に纏うその身体が淡い光を放ち、瞳が燃える様に紅く輝いた。


 彼女の眼の前には自らの倍の身長は有ろう巨躯の豚頭の怪物(オークジェネラル)が立ちはだかっている。


「蓮花連脚!」

 女性が華麗な連続蹴りを放つ。


「ぶももっ!」

 蹴りをくらった怪物は額に青筋を浮かべた。怒りに身を任せ巨大な斧を振りかざす。


「アレス! スイッチッ!」

「おうよっ! エレメントスラッシュッ‼」


 女性が横に跳ぶと、白銀の鎧を着た男性が入れ替わるようにして剣を叩き込んだ。虹色のエフェクトが煌めいて弧を描く。


「ぶもば―――っ!」


「これで終わりっ! 恐怖の焔よ迸れ、アングストフレイム‼」

 漆黒のローブに身を包んだ女性の杖から赤黒い炎が巻き起こり怪物が激しく燃え上がる。


「ぶもぉぉぉぉっ……!」

 ゴゴゴゴゴゴ……しゅわわ〜ん


 豚頭の怪物が輝くポリゴンとなって砕け散っていった。



 ※※※



 暗い部屋の中でディスプレイが光を放っている。


――――――

 アレス『おつあり〜』

 †クロノワ†『パテありがと!』

 エノ『ありがとうございました!』

 アレス『ウィークリークエ終わったし落ちるわ。またぬ!』

 エノ『はーい! また明日!』

 †クロノワ†『私もお風呂落ち〜。エノまたね〜』

 エノ『ノワさん行ってら!』


 アレスがログアウトしました。

 †クロノワ†がログアウトしました。

――――――


 輝くディスプレイの中。チャット欄はその動きを止めて、ビキニアーマーの女性が森の中に佇んでいる。その肩には緑髪の妖精がちょこんと腰掛けて、羽をパタパタさせていた。


「ふぅ〜。そろそろ僕も落ちるか」


 僕は榎田俊一。好きな物はゲーム。嫌いな物は体育の授業。

 黒髪黒目でヒョロガリメガネ。モブ感満載の中学二年生。

 

 ディスプレイに映るのは【青い惑星(ブループラネット)オンライン】略して【ブルプラ】だ。

 今どハマリしているオンラインゲーム。このところ毎晩遅くまでプレイするのが日課となっている。


 カチカチ……


「あれっ? おっかしいな。ログアウトできないぞ?」


 カチカチ……


 メニュー画面左下のログアウトボタン。何度クリックしてもゲームが終了しない。


「バグかな? まぁいいか。強制終了っと」

 仕方なく僕はウィンドウ右上の✕ボタンを押した。すると……


 べかべかべか〜っ‼


 突如ディスプレイが黄色いネズミの放つ電撃のようにフラッシュした!


「うわっ! なんだ⁉ えわあぁああ‼」


 瞬く光の洪水と共に僕の意識は遠のいて行った。



 ※※※



「……ん? ここは?」 

 お尻をついた石の床がひんやりと冷たい。目覚めた僕はキョロキョロと辺りを見回す。

 空に浮かぶ白い円形の地面。円周に沿って白い彫像が並ぶ。ある意味見慣れた景色だった。


「ここ……ブルプラのログイン画面じゃん‼ なんてテンプレ展開ッ‼」

 マジか‼ と驚きつつも僕は内心飛び跳ねて喜んでいた。

「夢にまで見た異世界転生! しかもブルプラにっ‼ したらこの後は……」


 ぴゅるぺらぶるぷらん♪


 ワクワクしながら待っていると、変な効果音と共に目の前がパッと光って緑髪の妖精が姿を現した。


「キタキター! おなじみの妖精ちゃん‼」


 緑髪の妖精も見慣れた存在。ブルプラのマスコットであり、自キャラと常に一緒に行動する案内妖精(ナビゲートピクシー)だ。初めてゲームにログインすると、案内妖精(ナビゲートピクシー)によるチュートリアルが始まる。


 僅かに発光して厳かな雰囲気を纏いつつ妖精が口を開く。


『……私は筋肉妖精(マッスプライト)……ん?』

「えっ。案内妖精(ナビゲートピクシー)じゃなくて?」

 

 ふわふわした緑髪の可愛らしい姿は案内妖精(ナビゲートピクシー)そのものなんだけど……。


『ゴホン……。私は筋肉妖精(マッスプライト)ホエイプロテイン……アレッ? なんでっ⁉』

「ホ、ホエイプロテイン?」


 ふわふわ浮かぶ妖精は小さな羽をバタつかせて物凄く慌てている。何だか様子がおかしいぞ? 周囲の彫像もゲームでは神々の像だったはずが、ポーズをキメたムキムキマッチョマンの像ばかりだ。


 そして自分の身体を見ると元のヒョロガリのままだった。これは転生じゃなくて転移か?


『ま、まぁいいわ。勇者様、今この世界は危機に瀕しています。あなたの筋肉が必要なの。き、筋肉⁉ ……とにかくっ! あなたは世界を救うために選ばれた勇者なのっ‼ 魔王を滅ぼすためにその筋肉をお貸しください……? 変ね……なんかおかしいわ』


 筋肉妖精(マッスプライト)ホエイプロテインは顔を青ざめて口をパクパクしている。焦り散らかす筋肉妖精(マッスプライト)ホエイプロテインを手のひらに乗せて休ませてあげると、困惑と羞恥の混じる表情でチラチラとこちらを見上げてきた。


(うっ。この子めっちゃ可愛いなっ‼)


 それが、ニマニマと変な笑みを零してしまった僕と、この先長い苦楽を共にすることになる筋肉妖精(マッスプライト)ホエイプロテインとの出会いだった。


「……ねぇ、筋肉妖精(マッスプライト)ホエイプロテインて長いからホエイって呼んでいい?」

『嫌よそんなの! なんかミルク臭そうじゃないっ!』


 筋肉妖精(マッスプライト)ホエイプロテインはソッポを向いてしまった!

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