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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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アカデミー入学1

「忘れ物はない?」


「ないよ」


「鍛錬は怠らないのよ?」


「うん、頑張るよ」


「もし何か辛いことがあったら……いつでも帰ってきなさい。文句言うやつは全員ぶっ飛ばしてあげるから」


「分かった。ありがとう、母さん」


 手続きは滞りなく進んで、アカデミー入学の日を迎えた。

 言うなればもう高校生である。


 アカデミーには寮もあって、家が遠いキズクは寮に入る。

 高校生だから見送りもないという人もいるが、レイカはわざわざキズクの見送りに来てくれた。


「リッカとノアもキズクのこと、頼むわよ?」


 レイカはリッカとノアの頭を撫でる。

 リッカもノアも任せておけ! というようなキリリとした顔をする。


「キズク様、こちらをお使いください」


 見送りにはサカモトも来ている。

 短い間だったけれど、なんだかんだとサカモトにはお世話になったものだ。


 サカモトは細長い袋をキズクの前に差し出した。

 何を背負っているのだろうとキズクはずっと気になっていた。


「これは……剣ですか?」


 袋を開いてみると剣の柄が見えた。


「私が若い頃に使っていたものを改めて打ち直してもらいました。名剣には及びませんが、主の命をしっかりと守ってくれる剣でしょう」


「いいんですか? こんなものもらって……」


「老体が振り回すにいささか重いシロモノです。いつかキズク様がキズク様に合った剣を手に入れられる日までお使いください」


「……ありがとうございます」


 ムサシよりもよほどサカモトの方がおじいちゃんみたいだと思う。


「どうせなら一番になりなさい。勉強も、強さもよ」


「ああ、母さんの息子として恥ずかしくないようにするよ。行ってくるよ!」


 アカデミーに入ってからも色々とやることはある。

 あまり長く別れを惜しんでもいられない。


「……寂しいものね」


 未来への希望を背負うキズクの後ろ姿を見てレイカは思わず呟いた。

 三日もあれば人は変わるという。


 ただ実際に三日だけで成長することもないとは思うのだけど、キズクの成長を思えばあながち間違いなこともないと思えた。

 北形家に単身乗り込んで、保護を求めた時にも成長を感じて寂しくなった。


 その時も一緒にいることには変わりなかった。

 しかし今キズクはレイカの手を離れようとしている。


 また一つ息子が成長し、さらに大きく飛躍しようとしている。


「覚悟していたはずなのに……いつかこういう日が来ると」


 キズクの成長を感じ始めた時から自分の下を巣立つ時が来ると分かっていた。

 覚悟をしていたのに、それでも胸に湧き起こる感情を抑えることはできない。


「私ですら寂しさを感じているのです。母親であるレイカ様ならなおさらでしょうね」


 サカモトも目を細めてキズクの背中を見送っていた。


「今から飲めるところあるかしら?」


「まだ朝ですよ?」


「そんな気分なのよ。サカモトさんも行くわよ」


「……お供いたします」


 ーーーーー


「ええと……まずは寮に荷物置かなきゃな」


 アカデミーの中に入ったキズクは大きなキャリーケースを引っ張りながら、アカデミーのパンフレット裏の地図を見ていた。

 これから入学式がある。


 けれども大きな荷物を抱えたままでは邪魔になる。

 先に入ることになっている寮に行く必要があった。


「君、一年生?」


「あ、はい」


 あんまり時間もないなと思っていると男子生徒に声をかけられた。

 首元には三年生の証が付けられている。


 キズクよりも頭半分ほど背の高い男子生徒の首には太いヘビがかけられている。

 キズクと同じテイマーだろうとすぐに分かった。


「どこに向かってるのかな?」


「ええと……テイマー寮のA棟です」


「テイマー寮のA棟……か」


 キズクが向かっている場所を聞いてヘビを連れた男子生徒は目を細める。


「ついてきなよ。案内してあげる」


「ありがとうございます」


 ヘビを連れた男子生徒はニコリと笑ってキズクに背を向ける。

 案内してくれるというのでキズクは後をついていく。


「もう良い魔獣と契約しているんだね」


 ヘビを連れた男子生徒は、ヘビの頭を撫でながらチラリとリッカのことを見た。

 ノアもいるのだけど、ノアはリッカの毛に埋まって寝ている。


「ええ、俺の大切なパートナーです。先輩も強そうな魔獣ですね」


 チロチロと舌を出すヘビと目が合う。

 キズクは爬虫類系もまったく苦手ではなく好きである。


 つぶらな瞳をしていて可愛いなと思う。


「僕の魔獣のケムさんだ」


「ケムさん……」


「ケムラッカというモンスターらしくてね。そのままだけど響きが可愛いからケムさんって呼んでるんだ」


「素敵な名前ですね」


 デカい狼とデカいヘビ。

 流石に周りの人もキズクとヘビを連れた男子生徒を避けている。


「あそこの人に聞くといいよ」


「ありがとうございます、先輩」


「僕は内村隆之介ウチムラリュウノスケだ。テイマーならまた会うこともあるかもしれない。これからよろしくね、後輩」


 リュウノスケは軽く笑顔を浮かべると去っていく。

 首に乗るケムさんも尻尾を振ってくれているような気がした。


「寮案内でーす」


 リュウノスケがあそこといったところには長テーブルが置いてあって、寮案内の紙が貼ってある。

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