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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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アカデミー入学試験7

「リッカ!」


 キズクが声をかけるとリッカはハッとした顔をした。

 リッカはトラに顔を近づけると何かを言うように口を動かす。


「クゥーン?」


 トラの上から手を離したリッカは小さくなりながらキズクのところに駆けてくる。

 キズクの足元に滑り込むようにして、そのままお腹を見せる。


 何もしていませんよ? 的な目をしているけれど、何をしていたのかはバッチリ目撃していた。


「あ、あいつを失格にしろ!」


 ともあれリッカが勝手なことをするはずがない。

 何があったのか見ていた教員がいるだろうと思ったら、聞き慣れた声が聞こえてきた。


 見てみると、カナトがリッカのことを指差して見張りをしているメガネの中年男性教員に何かを訴えかけていた。

 なんでこんなことが起きたのか、なんとなく原因は分かった気がする。


「キズク」


「ノア、何があったんだ?」


 キズクの肩にノアが止まる。

 肩先からススっと耳元まで移動して他の人には聞こえないように声をひそめる。


「あの猫が悪い……いや、それよりもそれよりも猫の飼い主だろうな」


 あのサイズを猫というのは無理があるだろうとキズクは思うが、今はスルーする。


「マヌケがリッカのことを見つけてな。何やらささやいたのだ。するとあの猫がちょっかいをかけてきた」


 キズクの戦いなど見たくもないとカナトは先に帰った。

 どうやらカナトも自身の魔獣を連れてきていたようで、体育館に迎えに来たのである。


 そこでリッカのことを見つけた。

 ノアによるとカナトが自分の魔獣に命じてリッカにちょっかいを出させたようだ。


 それに耐えかねたリッカが怒って、カナトの魔獣を押さえつけたらしい。


「アイツが俺のライコを攻撃したんだ!」


 カナトはまるで被害者かのように訴えかけている。


「確かに魔獣をちゃんとコントロールできていないのは問題だな……」


「なっ……!」


 見ていたなら悪いのはカナトだと分かるはずだ。

 それなのに少し考えたような素振りを見せた教員はカナトの方に同調し始めた。


 あまり予想していなかった展開にキズクは驚いてしまう。


「この場で問題を起こしたものに入学の資格はない」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 呆然としてしまったキズクよりも早く反応を見せたのは、同じく監視役をしていたアカデミーの生徒だった。

 真面目そうな黒髪の男子生徒で腰の左右に一本ずつ剣を差している。


「先に手を出したそちらの方でしょう! どうして彼の方が処罰を受けなきゃいけないんですか!」


 キズクは一瞬自分の方がおかしいのかと思っていたが、やはりカナトの言い分や教員の意見の方がおかしいと思う人もいて少し安心する。


「少しじゃれ合うぐらいあることだろう? そんなことにことにも耐えられず暴れるようならアカデミーにはふさわしくない」


「じゃれ合いって……それにも限度ってものが」


「それとも何かね? 君は私の判断に文句があるというのかね」


 教員はメガネを指で軽く押し上げる。


「それは……」


 抗議していた生徒はウッとした顔をする。

 同じく魔獣の監視をしているが、生徒と教員という立場の違いがある。


 たとえ間違っているようなことでも、高圧的な態度に出られると生徒の方は弱かった。


「ではあの生徒は……」


「おい、何を勝手なことを言っている?」


 このままでは受験失格を言い渡される。

 そう思った時、部屋の隅に椅子を置いて、剣を抱きかかえるように腕を組んでいた教員がスッと目を開いた。


 ずっと目を閉じて動かないので寝ているのかと思った。

 子供が泣き出してしまいそうなコワモテの男性教員で、よく見ると顎のところに傷がある。


「あなたこそ急になんですか?」


 メガネの教員は怪訝そうな顔をする。


「寝ていたくせに私に文句ですか?」


「俺が寝ていたというのか? ずっと確認でもしていたのか?」


「目を閉じていたでしょう?」


「俺を見ていたならば魔獣の同士の争いをお前は見ていないということになるだろう」


「そんなずっと見ていたわけでは……」


「ならば俺がどうして寝ていたなどと断ずることができる?」


 コワモテの教員の言葉にメガネの教員は顔をしかめる。

 わざわざ声をかけて寝ているか確認したわけでもない。


 確かに見た時に目を閉じていたというだけで、寝ていて事態を見ていないと断言することはできない。


「……ふん、見ていたとしてなんなのですか?」


 見ていた見ていないは、もはや水掛け論にしかならない。

 メガネの教員は舌打ちしたいような気分だった。


「ミズハラが言っていただろう。ちょっかいをかけたのはそちらの方だとな。反撃に出たことは間違いないが……あれをじゃれ合いなどと言うのならお前こそ何も見ていないのではないか?」


「なんですと? 私は正しい判断を……」


「お前……テイマーズギルド出身だろ」


「……それがなんの関係が……」


「そこのガキの名前は王親、だろ?」


「それは……」


 メガネの教員の顔が引きつる。


「テイマーズギルド……」


 キズクもテイマーズギルドのことは知っている。

 北形家が自分の家でギルドを抱えているように、王親家でも自分の家でギルドを持っている。


 それがテイマーズギルドであった。

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