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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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アカデミー入学試験5

「同い年だったのか」


 シホの存在は知っていた。

 会話したこともないが、剣豪と呼ばれるほどに剣術の腕前に優れた覚醒者であった。


 回帰前のキズクがシホの存在を知ったのはだいぶ後のことである。

 大人になれば年齢の上下などあまり気にすることもない。


 年が近いかもしれないとは思いつつも、同じ年であったことまでは知らなかったのだ。


「対するはレオンか。どうなるだろうな?」


 シホのグループにはレオンがいた。

 キズクの見立てでは他の二人はシホとレオンに敵わない。


 実質的にシホとレオンの一騎打ちになると見ている。

 ただ戦いは四人のバトルロイヤルである。


 どう動くのかと見ていたらシホ以外の三人が同時に動き出した。

 狙うはシホ。


 示し合わせたわけでもないのに、三人はシホの方に向かった。

 ちょっと意外だったけれど、シホがもうそれなりに名前が知られているのだとしたら納得もできる。


 強い相手を潰すことは定石だ。

 三対一ならばチャンスがあるかもしれない。


 そうキズクも思っていた。


「ぐっ……くそ…………」


 しかし結果はレオンを含めて三人が返り討ちにあってしまった。


「恐ろしいほどに強いな……」


「知らないのか?」


「あっ?」


 急に横にいた男子生徒に声をかけられた。


「彼女のことだよ」


 隣にいた男子生徒はシホのことを顎で示す。


「彼女は氷華剣って二つ名があるんだよ」


「氷華剣?」


 初耳だなとキズクは思った。


「15歳以下で行われる剣術大会で準優勝をして、その時につけられたんだとさ。華のように綺麗な見た目をしながら冷たく鋭い剣ということで氷華剣、なんだとさ」


「へぇ」


 求めたわけでもなく一方的に話されたものだけど、そんなことがあったのかと感心してしまう。

 シホはもうすでに二つ名があるほど有名であった。


 キズクがシホの存在を知った時には氷華剣なんて二つ名ではなかった。

 手強そうだなと思った。


 剣術も徹底的に叩き込まれたが、所詮は数ヶ月の付け焼き刃なところは否めない。

 キズクよりも前から剣を握っていて、より才能のある人と戦うのは厳しい。


 そもそもキズクもテイマーである。

 本来ならリッカやノアと一緒に戦ったり、契約スキルであるグレイプニルを活用したりするのもキズクの戦い方だ。


 グレイプニルを使ったら魔法扱いで反則になるだろうか、とかキズクは考えていた。

 さらに戦いは進んで人が減っていく。


 意外と強いのか、あるいは組み合わせが良かったのかキズクに加えてカナトも残り八人にまで残った。

 八人がそれぞれ二組に分けられた。


 キズクはカナトと同じ組になった。


「ここで当たることになるとはな」


「チッ!」


 四人がそれぞれ四隅に立って、対戦相手の様子を窺う。

 キズクの正面にはカナトがいる。


 幸いシホはもう一つのグループに振り分けられていた。

 残り二人は女の子で、戦いぶりを見ていたキズクの感想では結構強い。


 一人でも大変で、三人同時に相手にするのは無理だろう。

 混戦か、一人ずつ相手にできるように戦いたい。


「おい! まずはあいつをやるぞ!」


「はあっ? なんであんたの命令なんて聞かなきゃいけないのよ?」


 試合が始まってカイトは剣をキズクに突きつけて叫んだ。

 なんとしてもキズクに負けるわけにはいかない。


 三人がかりでならキズクも倒せる。

 カイトは他の二人を扇動してキズクと戦わせようとした。


 しかしキズクもカナトも二人の女の子とは知り合いではない。

 事前に示し合わせたわけでもない。


 共同して一人を狙う作戦は悪くないものの、カナトの上から目線の命令に女の子の一人が強い嫌悪感をあらわにする。


「相変わらず偉そうだな!」


 一瞬、三人で攻撃してきたらどうしようかと身構えた。

 けれども嫌悪感をあらわにした女の子だけでなく、もう一人の子も冷静に様子を見ていて動かない。


 結局カナトの目論見は上手くいかなかった。

 嫌悪感をあらわにした女の子が、むしろカナトの方に襲いかかりそうな視線を向けた。


 カナトが怯んだ隙を狙ってキズクはカナトに攻撃を仕掛けた。

 ほっとけばまた二人を煽って向かわせようとするかもしれない。


 そうなる前に戦いを始めてしまう。


「……なんだか二人の間には何かありそうね。どうする? 私とやる? それともどっちか狙う?」


 嫌悪感をあらわにしていた女の子は、キズクとカナトの戦いに目を細めた。

 カナトがキズクを狙わせたことといい、睨み合っていたような感じといい、二人の間に因縁がありそうだと感じた。


 だからもう一人の女の子に目を向ける。

 邪魔しないで戦わせてあげてもいいかもしれないと思っていた。


「そう、私とやるのね?」


 もう一人の女の子は嫌悪感をあらわにしていた女の子に剣を向けた。

 キズクとカナトの戦いに乱入ではなく、女の子同士で戦うことを選んだようである。


 望むところだ、と嫌悪感をあらわにしていた女の子は笑った。


「くそっ! 役に立たない奴らめ!」


 女の子同士で戦い始めて、カナトは盛大に舌打ちした。

 三人で狙えば一人は楽に落とせるのにと不満が声に漏れる。


「そんなんだから協力してもらえないんだよ!」


 もう少し下手に出たり、丁寧な態度だったら今頃キズクは三人から攻撃されていたかもしれない。

 カナトの尊大な態度のせいで手伝ってもらえなかったのである。

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