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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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アカデミー入学試験4

「よっ! ……嫌われたかな?」


 キズクはレオンに声をかけてみたけれど無視された。

 レオンも同じく北形家にいるのだけどあまり顔を合わせることがない。


 平日日中は別の学校に通っているし、家の中でも何となく避けられているような気がする。

 キズクとしてはもうちょっとお近づきになりたいのに、難しそうである。


「まあ、まだ機会はたくさんあるしな」


 回帰前のレオンがアカデミー出身なことは知っている。

 何もなければこのままアカデミーに入学することになるだろう。


 キズクも順当にいけばアカデミーに入学することはできそう。

 同じクラスになるかは分からないが、同じ学校に通うならチャンスはあるはずだ。


「母さんにいい結果、伝えなきゃいけないからな」


 アカデミー合格程度では生ぬるい。

 全員薙ぎ倒してトップ合格しなさい。


 それぐらいレイカは言いそうだ。

 合格できそうだから手を抜いたなんて聞いたらきっと怒るだろう。


 できる限りはやってみようと呼ばれた他の三人を見る。

 一回目とは違って気を引き締めなければいけない。


 少なくとも一回目は勝ち上がってきた人たちなのだ。

 素人の中で頭一つ抜きん出ているのか、戦える人なのかはまだ分からないけれど、一回目のように乱雑に戦っては不意を突かれる可能性もある。


 相手はキズクを含めて男が三人、女が一人である。

 

「来ないならこっちから行くぞ!」


 四人はそれぞれ相手の出方をうかがって動かない。

 流石に四人もいれば、誰を相手にするのか戦略的な思惑がそれぞれの中にある。


 睨み合っていても何もならない。

 キズクは自身から見て右手にいる男子に向かった。


 一人動けば全員が動き出す。

 キズクが向かってきた男子はキズクの方を向く。


 残りの二人は判断を迫られる。

 キズク、あるいは男子に加勢するか、それとも第三者として乱入するか、それとも残りの二人で戦うか。


「……おっと!」


 キズクが切りかかった男子はあまり強くない。

 素人ではなさそうだけどキズクの方が強く、このまま押していけば勝てるはずだった。


 けれども横槍が入った。

 もう一人の男子が、キズクに槍を突き出してきたのである。


 女子と戦うよりも戦いに乱入することを選んだのだ。


「はっ!」


 三つ巴の戦いとはなったが、実際はキズクが二人から攻め立てられていた。

 キズクは二人の攻撃をうまく防ぐ。


 槍を受け流してもう一人の男子の邪魔になるようにしてやると、二人は互いに遠慮しあって動きが止まる。

 その間に頭に一発ずつ木剣を落とす。


「強いね」


「この日のために頑張ってきたからな」


 残るはキズクと女の子だけである。

 女の子の方はあえて戦いに参加せずに様子を見ていた。


 狙われていないのなら一歩引いて様子見することも立派な作戦である。

 この子が一番強そうだなとキズクは思っていた。


 女の子は黒髪なのだけど、光の具合によってはうっすらと青みがかっているようにも見える。

 体質的なものという可能性もあるが、髪が青く見える理由は別にある。


 魔力の影響だろうとキズクは感じた。

 時々魔力の影響が容姿に出る人がいる。


 特に影響が出やすいのは髪や目で、回帰する前には髪や目が真っ赤に染まっている人もいた。

 魔力が強い人ほど影響が出やすい。


 髪が青く見え始めているということは、女の子にはもう強い魔力の片鱗があるということになる。

 魔法の使用こそ禁止されているが、魔力の使用は禁止されていない。


 よほど危険でない限り審判の教師も止めはしない。


「はあっ!」


 キズクが女の子に切りかかる。

 まずは様子見がてら軽く攻撃する。


 女の子はキズクの木剣をかわして反撃した。

 やはり戦いの方もただの素人ではなさそうである。


「女の子にも手加減なしだね」


「勝負の世界に男も女もないだろ?」


「うん、そうだね。その考え好きだよ」


 キズクが激しく攻め立てる。

 女の子はやや苦しそうに防御している。


 キズクは勝負を焦ることなく冷静に女の子を追い詰めていき、反撃の隙を与えない。


「……っ!」


「なんだ?」


 キズクの木剣が女の子の腕をかすめた。

 その瞬間に女の子の目つきが鋭くなり、瞳の縁がほんのりと青くなる。


 キズクは本能的に危険を感じて大きく飛び退く。


「……いけない」


 危険な雰囲気をまとう女の子はハッとしたような表情を浮かべて目を閉じた。


「降参」


 女の子の異様な雰囲気が収まっていき、手を上げて降参を宣言する。


「魔法を使おうとしたな?」


 一瞬感じた魔力は魔法の前兆だったのだとキズクは気づいた。

 意図的な威嚇や攻撃というよりは、咄嗟に使おうをしてしまったという感じだった。


 感情や魔力のコントロールが甘いのかもしれない。

 ただ危ない状況に、一瞬で魔法を発動させようとするほど魔法に慣れ親しんでいる。


 剣が得意という感じではなさそうだし、剣術系の覚醒者一家ではなく魔法系の覚醒者の家系なのかもしれない。


「何人か強いのがいるな……」


 剣術を誇る家門は北形家や桐生家だけではない。

 むしろ北形家も剣術名家ではあるものの、剣術におけるトップではない。


上杉志保ウエスギシホ……」


 他のグループの中に知った顔を見つけた。

 ただし知り合いではない。


 回帰前に見たことがある覚醒者なのだ。

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