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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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アカデミー入学試験3

「他の人には悪いけど……さっさと勝たせてもらうよ」


 始まりの合図とともにキズクは動き出した。


「は、速い!」


「うっ!」


 瞬く間の出来事だった。

 キズクは一瞬にして三人を倒してしまった。


 ろくに抵抗もできず三人は倒され、キズクはチラリとカナトに視線を送る。


「くそっ……な、何なんだ……」


 カナトの中でのキズクは、ひょろひょろとしてろくに剣も触れなかった印象が強い。

 なのに三人をいとも容易く圧倒してしまった。


 カナトも問題なく相手を倒したけれど、キズクのように圧倒的に瞬殺したわけではない。

 そもそもカナトはテイマーであり、戦えるとはいってもモンスターとの共闘を念頭に置いてる。


 現段階でそれほど剣を極めるつもりもないのだろう。

 だがリッカの件で殴り飛ばされてから差を少しずつ感じ始めていた。


 圧倒的に下だったはずが、いつの間にか後ろに迫り、そして上にいかれてしまったような感覚がある。

 カナトは拳を握りしめ、怒りやら嫉妬やらの醜い感情でキズクのことを睨み返していた。


「……おい、レオン、何を見てんだよ?」


 キズクのことを見ている人がもう一人いた。

 別のグループで呼ばれているレオンである。


 レオンはキズクに負けたことがある。

 そのことは今でも忘れていない。


 いきなり現れたやつがレオンを倒して、いきなり北形家に入ってきた。

 キズクがアカデミーにも通うこととなってレオンはキズクのことを嫌でも意識してしまっていたのであった。


「チッ……おい! 無視すんな!」


 キズクを気にするレオンだが、レオンの方も戦いに直前である。

 坊主頭の背が高い青年は無視されたことに苛立ったように舌打ちする。


 桐生幹哉キリュウミキヤという青年は、北形家と同じく剣を得意とする覚醒者を多く輩出している桐生家の出だ。

 要するに北形家とはライバル関係の家の出身ということなのである。


 ミキヤとレオンは顔見知りである。

 ライバル関係の家であるし、同じ年ということで比べられることも少なくはなかった。


 レオンは直系の子ではなく、傍系の子である。

 しかし昔から剣の才能があって注目されていたので、ミキヤはレオンのことをライバル視していた。


 レオンも他の家の子はライバルであると思っていた。

 だが今のレオンの目にミキヤは映っていない。


「くそ……どこ見てんだよ!」


 試合が始まってミキヤはすぐさまレオンに斬りかかった。

 レオンはキズクから視線を外すとミキヤの攻撃を弾き返す。


「龍牙剣一式・青龍大口!」


 剣法は何も北形家のものだけではない。

 剣の動かし方、魔力の動かし方によってそれぞれの家に剣法がある。


 龍が大きな口を開けて迫ってくる様を模したと言われる青龍大口は、非常に強い勢いがある。


「帝形剣法一式・立帝出立!」


「くっ!」


 重たい剣に対してレオンは帝形剣法で対抗する。

 帝形剣法の一式は走り始めたばかりのような軽やかさを持っている。


 正面から対抗しては龍牙剣の方が力がある。

 レオンは素早い剣でミキヤの力を上手く受け流す。


 頬を剣がかすめてミキヤは顔をしかめる。


「チッ……傍系のくせに!」


 苛立ったようにミキヤは剣を振り回す。

 傍系のくせにと言われたことに少しの苛立ちを感じつつも、レオンは冷静にミキヤの攻撃に対処する。


「龍牙剣三式ぃ!」


 勝負が長引くと不利になると察したミキヤは一気に勝負をつけようと動く。


「荒い……」


 レオンは剣法も扱えないキズクに負けた。

 剣法が使えれば強いことは間違いない。


 しかし剣法を扱えなくとも相手を倒せる。

 そもそも剣術の名家でもなければ、剣法なんてものを知らない人だって多い。


 剣法に頼りすぎないことも大事である。

 レオンはキズクに負けて気づいた。


 龍牙剣は一つ一つの挙動が大きい。

 ということはそれだけ隙ができやすいと言える。


 威力ばかりに目を向けているミキヤの龍牙剣はまだまだ未熟で隙だらけだとレオンは見抜いた。


「一度の隙があればいい……」


「なっ!」


 レオンは振り下ろされるミキヤの剣を受け流す。

 ミキヤは体が流れて完全に隙だらけになる。


「はっ!」


「ぐっ!」


 レオンはミキヤの脇腹に突きを繰り出した。

 回避も防御もできずにまともに突きをくらったミキヤは痛みに顔を歪めて床をゴロゴロと転がる。


「くそっ……」


 これでミキヤは脱落となる。


「こ、降参します……」


 戦いは四人で行われる。

 レオンとミキヤが戦っている間に残りの二人も戦っていて、一人が勝ち残っていた。


 ただレオンとミキヤの戦いに割って入るような実力もなく、勝ち残ったレオンに挑むようなやる気は完全にへし折られていた。


 降参するのもまた勇気である。

 審判役の先生も流石にレオンと戦わせるのは酷だろうと降参を認めた。


「次は負けない……」


 戦いに勝った。

 それでもレオンに嬉しそうな素振りはない。


 あくまでも見ているのはキズクの方だった。


「この……」


 負けたものが勝者にかける言葉などない。

 自分のことをどこまでも無視するレオンにミキヤは怒りの表情を浮かべていた。


 こうして戦いが繰り返されて勝ち残った人だけが残っていく。

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