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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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キズクの進路1

「なぜ呼ばれたのだろうな?」


「さあね」


 なんとか連休中に帰ってくることができたキズクは、レイカに怒られることもなく日々を過ごしていた。

 今日も鍛錬だ、と思っていたらキズクはムサシに呼び出された。


 なんとなく応援してくれているような感じはあるものの、ムサシの考えはよく分からない。

 特に会話することもないし、家にいないということもままある。


 だから今回なんで呼ばれたのか、予想もできていない。

 問題は起こしていないし、日々真面目に鍛錬している。


 怒られるようなこともないだろう。


「失礼します」


 呼び出されたのはいくつかある道場のうちの一つ。

 北形家には訓練などのために複数の道場がある。


 今回呼び出されたのは中でも小さめの道場だった。

 道場の中に入ると木刀を持ったムサシとレイカがいた。


「お呼びですか?」


「キズク」


「えっ、ああ、リッカ」


 レイカが手に持っていた木刀をキズクに投げた。

 当然のことにもサッと反応したキズクだったけれど、先に動きを見せたリッカが口で木刀をキャッチした。


 ナイスキャッチを見せたリッカは尻尾を振りながらキズクに木刀を差し出す。


「ありがとう」


 キズクが木刀を受け取るとリッカは頭を差し出す。

 頭を撫でてやるとリッカの尻尾の振りが速くなる。


「それで……どうしたら?」


 木刀を受け取ったものの、どうしたらいいのか分からない。

 キズクが困ったような視線を向けるとレイカはニコリと微笑んだ。


「どれだけ強くなったのか……確かめさせてもらおうか」


「まさか……」


「ワシと手合わせしてもらおう」


 ムサシが木刀を構える。

 途端に道場の中の空気が一気に張り詰めて、空気感の変化にキズクは鳥肌が立つ。


「リッカ、ノア、離れてろ」


 これは自分で挑まねばならない。

 そう思い、リッカとノアには離れていてもらう。


 背中にノアを乗せたリッカは壁際に寄ったレイカの近くでお座りする。


「先手は譲ってやろう」


「ありがとうございます!」


 キズクは一気にムサシと距離を詰める。


「帝形剣法一式!」


 一気に勝負を決めるぐらいのつもりでキズクは挑む。

 剣や体の動きに合わせて魔力を動かし、攻撃の威力を最大化させて剣を振る。


「ほう、なかなかやるな」


「チッ……」


 流れるような連続攻撃。

 これまでの中でも一番完成度の高い攻撃を繰り出せたのに、ムサシはその場から動くこともなく全ての攻撃を防いでしまった。


「帝形剣法二式!」


 攻撃が防がれたからとキズクは諦めない。

 次の剣法を繰り出して攻撃を続ける。


「剣筋はいい。魔力の運用も素早く的確だな。動きに固さもない」


 続く帝形剣法二式もムサシはその場から動かずに防いでしまう。


「それではワシも行くぞ」


 来る。

 そう思った瞬間には目の前に刃が迫っていた。


「くっ!」


 ギリギリ防いだ。

 けれども防いだなんて思う間もなくムサシの次の攻撃が迫っていた。


「踏ん張るんだ……!」


 ここで引いたらもう前に出ることは出来なくなってしまう。

 辛いからと下がっては次がないのだから、前に出るしかない。


「ほぅ」


 ムサシの木刀を受け流し、一歩足を踏み出しながら反撃する。

 ちゃんと受け流しきれなくて木刀が頬をかすめた。


 木刀なのに攻撃の鋭さに頬が浅く切れるけれども、キズクは気にすることもない。


「ふふふ……気迫があるな」


 ムサシは思わず口の端を上げて笑う。


「ならば……これはどうだ?」


「……うっ!」


 ムサシが抑えていた魔力を解放する。

 まるで一瞬にして深海に沈められたようだとキズクは思った。


 ムサシの魔力がキズクの全身を締め付けて、体が動かなくなる。

 ただ魔力を放っているだけなのに呼吸すら苦しい。


 だが頭だけはハッキリしている。

 ゆっくりと木刀を振り上げるのが見えていた。


 今自分は切られそうになっている。

 何としても体を動かして防御せねばならないとキズクは思った。


「うご……けぇ!」


 キズクは歯を食いしばってムサシの魔力の圧力に抵抗しようとする。

 圧力に感じられるほどの魔力を跳ね返すような魔力をキズクは持たない。


 精神力で抗うしかない。


「うわああああっ!」


 ムサシが振り下ろした。


「…………見事なり」


 カランと音を立ててキズクの木刀の先が床に落ちた。

 なんとかキズクは動いた。


 木刀を持ち上げて防御しようとした。

 しかし防ぎきれなかった。


 同じ木刀なのに、キズクの木刀はムサシの木刀に両断されてしまったのである。

 キズクの額寸前のところでムサシの木刀は止まっていた。


 寸止めしてもらわなかったら額をかち割られていたことだろう。

 滝のような汗を流しているキズクは、悔しそうな表情でムサシのことを睨みつけていた。


 負けると分かっていても悔しかったのである。

 今回の人生で血のにじむような努力をしてきたのに、ほとんど何も出来ずにあっさりと負けてしまった。


 何もしてこなかった人生の時は負けても何も思わなくなっていたのに、努力している今は悔しくて仕方ないのである。


「はっはっはっ! ワシにそんな顔をするか!」


 キズクの悔しそうな顔を見てムサシは笑う。

 どこか達観したような目をすることも多いキズクの感情の昂りをムサシは嬉しく思っていた。

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