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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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生活の変化1

「生き延びた……」


 目を覚ましたキズクはつぶやいた。

 見慣れない天井とちょっと硬めのベッドに、ぼんやりとした頭でも病院だとすぐに分かった。


 体が重いと思った。

 頭だけ上げて自分の体を見る。


「ふふっ」


 色々ダメージを受けたから体が重いのもあるだろう。

 しかしもっと直接的な原因があった。


 胸の上にはノアが、そしてお腹にはリッカの頭が乗っていた。

 どっちも寝ているようで、キズクが目を覚ましたことには気づいていないようである。


「よかった……」


 リッカもノアも寝息を立てている。

 無事だったのだなとホッと安心する。


「ノア」


「はっ!」


 キズクは微笑みを浮かべながらノアのを撫でようと指を伸ばした。

 指が頭に触れた瞬間、ノアは起きる。


 体の割に大きな目が微笑むキズクの顔を見つめる。


「ギズグゥ〜!」


「おおっと」


 ノアの目から涙が溢れ出し、キズクの顔に飛び込む。


「うおおおん! 心配したのだぞー!」


 ピーッと泣きながらノアはキズクの頬に頭を擦り付ける。


「ごめんごめん」


「んん、はわっ! ご主人様ーーーー!」


 ノアの泣き声にリッカも目を覚ます。


「どわっふ!」


「ぎゃふっ!」


 リッカも立ち上がるとキズクに飛び込む。

 デカウルフのリッカが飛び込んできて、ノアごとキズクの頭がモフモフに押し潰される。


「ベロ! ベロベロベロ!」


「リ……」


 リッカはキズクの顔を舐め回す。

 呼吸もできないほどに激しく舐められてもキズクはそれを受け入れる。


 一舐めごとに顔の皮膚が持っていかれるような感じがあるけれど、これもまた愛なのだ。


「ぬ……むぐぐ……ええい!」


「きゃん!」


 リッカの腹毛の中からノアが這いずり出てくる。

 ノアとてキズクが目を覚ましたことを喜んでいたのに水をさされた。


 怒ったノアがリッカの鼻先をクチバシで突いた。


「こらこらケンカしない」


 顔面がよだれでビシャビシャになったキズクは体を起こしてティッシュを探す。

 サイドテーブルにティッシュがあったのでリッカのよだれを拭く。


「リッカとノアも無事だったんだな」


「うむ、レイカが助けに来てくれたのだ」


「母さんが?」


「あのイザヤとかいう男に対してとても怒っていたな」


 ノアは怒っていたレイカの顔を思い出してブルリと体を震わせる。


「とりあえず……ここは病院なのか?」


 リッカも少し落ち着いてキズクの横に寝て太ももに頭を乗せる。

 キズクが頭を撫でてやると目を細めている。


「そうだぞ。本当は入っちゃいけないらしいんだけどレイカが入れてくれたんだ」


 医者の胸ぐら掴んであの子の手足みたいなものなんだからいいじゃない、と言っていたレイカは少しかっこよかったなとノアは思う。


「キズク! 目が覚めたのね!」


「母さん……うっ、苦しいよ……」


 ナーフでも呼ぶべきかと思っているとレイカが病室に入ってきた。

 起き上がっているキズクを見て駆け寄ると抱きしめた。


「あなた三日も寝ていたのよ」


 骨が折れてしまいそうなほどにレイカは強くジケを抱きしめる。

 ちょっと痛くて苦しいけれど、嫌じゃない


「三日も?」


 キズクは驚いてしまう。

 まさかそんなに長いこと眠っていたとは思わなかった。


「あの男……漆原イザヤにやられたのね」


「アイツのこと知ってるの?」


 イザヤのフルネームが出てきてキズクは目を丸くする。


「知らないわよ。ただアイツは以外有名な犯罪者みたいね」


 キズクを助け出した後イザヤのことを追った。

 しかし結局見つけられなかった。


 ただ特徴的な見た目はしていたので特定は早かった。

 国際指名手配犯としてイザヤは情報が出ていたのである。


「イザヤ……あっ!」


「どうかしたの?」


「あ、ううん、なんでもない」


 なんとなく聞いたことがあるような気がしていた。

 戦いの最中だったので深く考えるようなことはしなかったが、今思い出した。


 回帰前でもイザヤの名前は聞いたことがある。

 多くの覚醒者を引き連れて世界を荒らしたことがあった。


 その時のキズクは戦場には遠かったので直接関わったことはないけれど、ニュースでは見たことがある。

 結局イザヤがどうなったのかキズクの記憶にはない。


 しかしだいぶ後半までイザヤは生き延びていたような気がする。

 一体何者で、サイクロプスをどうしたのか。


 手から出ていた黒いモヤは何であって、複数の力が使えたのはなぜなのか。

 イザヤにおける疑問は多い。


「もう少し休みなさい。後で覚醒者協会や警察から話を聞かれると思うわ。お父さんもあなたと話したいそうよ」


「ご当主様が?」


「……そうよ」


 キズクがご当主様と呼んだことに少しレイカは目を細めた。

 けれどもフッと笑ってキズクをベッドに寝かせる。


「やらなきゃいけないことは一つずつゆっくり片付けていきましょう。まずは体を休めて、治すこと」


「……分かった。そういえばサカモトさんは?」


 サカモトはサイクロプスを引きつけてくれた。

 その後サイクロプスはゲートの中に戻ってきた。


 サカモトがどうなったのか気になっていたのである。


「あの人なら無事よ。途中で自分のことを無視してゲートに行ってしまったって言っていたわよ」


「無事ならよかった……」


「何でまたあんな危ないところに行ったのかしら?」


「俺に聞かれても……」


 リッカが行ったから、というのが理由である。

 そういえばリッカにも聞きたいことがあるなとキズクは思い出した。


 ただベッド横に座って優しく頭を撫でてくれるレイカを見ていると、今はそんなこといいかと思えてきてしまったのであった。


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