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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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命懸けの戦い3

「大丈夫……」


「大丈夫ではないじゃないか! 血が出ておるぞ!」


「軽く切っただけだよ」


 キズクは左腕から血を流していた。

 地面を転がった時に腕を軽く切ってしまったのである。


 血は出ているものの、それほど傷は深くない。


「ただ……ピンチだな」


 傷は深くないのでそんなに動きに影響はない。

 しかし見上げるとサイクロプスがもう目の前に迫っていた。


「なーんか、俺ばっかり狙ってないか?」


 どのタイミングからか分からないけれど、リッカではなくキズクの方がサイクロプスに狙われている。


「ご主人様に手を出すなぁ!」


 ゆっくりと腕を上げたサイクロプスの足にリッカが噛み付いた。

 キズクのピンチにはリッカも黙っていられない。


「ギャン!」


 リッカの鋭い牙も大きなサイクロプス相手では小さなダメージしか与えられない。

 サイクロプスが足を振り回すとリッカはあっけなく振り払われてしまう。


「リッカ! この!」


 キズクはグレイプニルで剣を抜いてサイクロプスの目を狙って飛ばす。

 けれども正面から剣を飛ばしたところで、馬鹿正直に攻撃を受けてくれるはずもない。


 サイクロプスは手を顔の前に出す。

 剣はプスリとサイクロプスの手のひらに刺さって目には届かなかった。


 それでもいい。

 キズクの狙いは他にあった。


 もう一本のグレイプニルをサイクロプスの足元に伸ばしていた。


「おりゃああああっ!」

 

 両足を巻き込んでグレイプニルで縛りつける。


「くっ……!」


 サイクロプスが足を広げようとするとグレイプニルに強い力がかかる。

 切れることがないようにすら思えるグレイプニルであるが、決して切れないわけではない。


 強い力がかかって限界を超えると破壊されてしまう。

 そして無理やり破壊される反動はキズクに返ってくるのだ。


 サイクロプスの力は強くて、キズクに反動が返ってきている。

 それでも耐え抜いた。


 両足を縛られたサイクロプスはバランスを崩して倒れる。


「リッカ!」


 肩にノアを乗せたキズクはリッカのところに走る。

 振り払われて地面に叩きつけられたリッカはグッタリとしていた。


「大丈夫か?」


「ご主人様こそ……大丈夫?」


「俺は平気だ」


 キズクはリッカを抱き起こす。

 ひとまず話せるのなら重篤ではなさそうだ。


「……思い出した」


「思い出した?」


 リッカの言葉にキズクは不思議そうな顔をする。


「ダメそうなら使いなさいって」


「何を言ってるんだ?」


 何がダメで、何を使うのか。

 キズクには分からない。


「アイツ許さない……」


 リッカはゆっくりと立ち上がる。

 サイクロプスは足を縛られていてジタバタとしている。


 実際足を開いてグレイプニルを引きちぎるのは厳しく、なかなか抜け出せないでいる。


「アオーーーーン!」


「ななな!?」


 立ち上がったリッカが遠吠えをする。

 遠くまで響き渡るような澄んだ声の遠吠えにノアは驚く。


「……なんの遠吠えだったのだ?」


 相変わらずサイクロプスは暴れている。

 遠吠えの余韻も無くなったが、なんの変化もない。


 何かを使うようなことを言っていたのに、何も起きないとノアは首を傾げた。


「うぅっ!」


 急に強い力が加わって、グレイプニルを出していた左手に激痛が走る。

 見るとサイクロプスはグレイプニルを手で掴んで引きちぎろうとしている。


「もう……限界だ!」


 グレイプニルを完全に引きちぎられたらどうなるのかキズクも知らない。

 けれど耐えがたい痛みにキズクはグレイプニルを解除した。


「クソ……」


 もう打つ手もない。

 結構粘ったのに誰も助けに来てくれない。


 立ち上がったサイクロプスはキズクたちを探して目玉を動かす。


「どうする……」


 それでもキズクは諦めずに方法はないかと考える。

 サイクロプスはキズクを見つけた。


 体をねじり、腕を上げる。

 手からまばゆいほどの雷がほとばしり、再び投擲の体勢を取る。


 グレイプニルで防げるか。

 リッカは走れるか。


 近くの木にグレイプニルは届きそうか。

 死ぬ瞬間まで諦めない。


「グッ!」


 グレイプニルを出そうとした瞬間、左手に再び激痛が走った。


「キズク!」


「ご主人様!」


「ヤバい……」


 サイクロプスはすでに投擲し始めている。

 もはや回避することは難しい。


「……なん、だ?」


 雷を投擲しようとした腕が中途半端なところで止まった。


「グレイプニル……?」


 サイクロプスが己の腕を見る。

 手首のところにヒモ状のものが絡まっていて、サイクロプスの投擲を止めていた。


 それはキズクがスキルで生み出しているグレイプニルのように見えた。


「どこから伸びて……」


 ただ今サイクロプスの腕に巻きついているものはキズクが出したものじゃない。

 となるとどこからグレイプニルが来ているのか。


 キズクは体を傾けてサイクロプスの向こう側を覗き込む。


「なんだ、あれ?」


 サイクロプスの向こう側にグレイプニルの根元が見えた。

 グレイプニルを出しているのは石だった。


 宙に浮いた手のひらサイズほどの石からグレイプニルが伸びている。

 なぜ石からグレイプニルが伸びているのかと思ったら他にも石が浮き上がっていて、次々とグレイプニルが石から放たれてサイクロプスの体に巻き付いていく。

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