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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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封じられしもの4

「だが……」


 ノアは目を細めてサイクロプスに絡みつくグレイプニルを見る。

 ところどころがほつれてちぎれそうになっている。


 サイクロプスは外に出ようと暴れ、その度にグレイプニルがほつれてちぎれていく。

 そう長くは持たなそうである。


「リッカ!」


 キズクが声をかけるとリッカはハッとした顔をして振り返った。

 リッカはキズクが来ていることに気づいていなかったようで、驚いている。


「危ない!」


 サイクロプスがグレイプニルを引きちぎった。

 そのまま勢いよく走り出してリッカに向かって腕を振り下ろした。


 リッカは飛び退いて攻撃をかわす。


「ひょ……」


「これはなかなかマズイですね」


 サイクロプスの腕が地面を砕く。

 砕けた小石が飛んできて、サカモトが剣で叩き落とす。


 今の一撃だけでもサイクロプスの力がものすごいことがはっきりと分かった。

 

「リッカ! 何がしたいんだ!」


 リッカも弱くはないが、強くもない。

 サイクロプスのような大型のモンスターを相手にするにはリッカの力は足りていない。


 今リッカがやってることはキズクを危険にさらす行為でもある。

 なのにリッカは退こうとしない。


「……やっぱり何か関係があるんだな」


 サイクロプスを拘束していたものはグレイプニルに見えた。

 よくよく考えてみればおかしい。


 リッカは王親家に封印されていたモンスターであった。

 それをたまたまキズクが見つけて封印を解いて契約したのである。


 デッカくてモフモフしていて、最初は牙を剥き出していたけど怖くなかった。

 王親家では騒ぎになったが、契約できたなら何の問題もないと祖父はキズクのことを撫でてくれた。


 よくカナトが言った。

 犬っころと。


 体格なりの強さはあったが、封印されていたにしてはリッカは特別に強いモンスターではなかった。

 なのに急にカナトはリッカを欲しがった。


 回帰前に見た記憶でもリッカはそんなに活躍しているような様子もなかった。

 なぜリッカをそんなに欲しがったのか。


 なぜリッカは封印されていたのか。

 謎が多い。


 でも契約スキルを使える。

 ということはリッカの能力は決して低くないはずなのである。


 リッカには何か秘密がある。

 キズクが知らない何かがあるのだ。


 知らない何かはきっとサイクロプスと関わりがあるのだと感じた。


「リッカ! 何がしたいのか知らないけど……お前一人でやろうとするんじゃない!」


 キズクに怒られてリッカは気まずそうにキューンと鳴いた。


「お前はいつでもそばにいてくれた……だから今度は俺がそばにいる番だ!」


 キズクはグレイプニルを手から出して伸ばす。

 サイクロプスの足にグレイプニルを巻き付けて着地の時を狙って引っ張る。


 かなり力が必要だったけれど、上手くサイクロプスのバランスを崩して転ばせることができた。


「ぬ? 分かった!」


「どうした、ノア?」


「ゲートに入りたいそうだ」


 ノアはリッカの言葉が分かる。

 あまりリッカはおしゃべりな方ではないらしいし、通訳は面倒だと言葉を伝えてくれることは少ない。


 しかし今はリッカからのメッセージがあった。

 どうやらリッカはゲートの中に入りたいらしい。


 そういえばグレイプニルらしきものも、ゲートの中から伸びていたなとキズクも思った。


「ただちょっと……」


 サイクロプスはゲート前で暴れている。

 攻撃を掻い潜ってゲートに入るのはかなり大変そうだった。


 しかも狙われているのはリッカだ。

 注意を逸さなければゲートに向かえない。


「……サカモトさん!」


「どういたしますか?」


 その聞き返し方はありがたい。

 何も聞かずに、何かをする前提でいてくれる。


「少しあいつの気を逸らしてください。俺たちはゲートに入ります。その後は逃げてください!」


「……分かりました。ただ逃げるのではなく助けを呼んでまいりましょう」


 キズクを見捨てて逃げられるものか。

 サイクロプスを引きつけてゲートに入りたいということはサカモトもすぐに理解した。


 問題はその後だろう。

 サイクロプスがどうするかである。


 おそらくキズクとリッカがいなくなれば狙われるのはサカモトになる。

 だからキズクは逃げろという。


 しかしさっさと逃げてしまえばキズクたちを追いかけてしまうかもしれない。

 ある程度引きつけつつ、程よいところで逃げて助けを呼ぼうとサカモトは考えた。


 どうせ止めたところで止まらないのなら、どうするかを考えた方がいい。


「しかしながら……年寄り使いが荒い」


 サイクロプスがサカモトの方を振り向いた。

 執拗にリッカを追いかけていたのに、一つの大きな目を見開いてサカモトを見ている。


「少し遊びましょうか」


 サイクロプスは本能的に感じた。

 この場にいる中で一番危険な存在がサカモトであると。


 リッカを狙うよりも危険な存在を倒すことの方が優先であるとサイクロプスはサカモトに向かう。


「帝形剣法第五式……天龍牙降!」


 サイクロプスがサカモトに腕を振り下ろす。

 サカモトは腕をかわして剣を振る。


 一瞬の交差だった。

 なのにサイクロプスの腕に複数の傷が刻まれて血が吹き出す。


「リッカ、今だ!」


 サイクロプスが痛みに怯んだ。

 リッカに声をかけると、リッカはキズクに向かって走り出す。

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