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因縁の相手1

「少ないがとっとけ」


 レイジはキズクに封筒を手渡した。


「これって……」


「これでも少ないぐらいだが……こっちもあまり余裕がなくてな。これで我慢してくれ」


「そんな、多いぐらいですよ」


 封筒の中には十枚ほどの紙幣が入っていた。

 少ないとレイジは言うが、中学生にとっては大きな金額である。


「二人してお前に助けられたというからな。電話もしてくれたし助かったよ」


「ゲートはどうなったんですか?」


「何も知らないことにした。俺たちは普通にゲートを見つけて、ただ報告しただけだ。中に入っていないし、中から何も持ち出していない。もちろん何も、な」


「あっ……」


 レイジは意味ありげに笑った。

 ゲートからレイジが入ってきた時、いきなりのことだったので剣を隠すことを忘れていた。


 レイジを下ろした時には体の後ろに隠していたけれど、その前に見られてしまっていたようである。

 ただ今更レイジは剣について触れるつもりはなかった。


 もうゲートは覚醒者協会に報告してあるし、キズクが見つけたものはキズクのものである。

 タカマサとトシを助けてくれたことも含めてお目こぼしすることにした。


「それはそうとして今日も仕事頼むぞ」


「こうしたときは休みじゃないんですか?」


「いつゲートが現れるか分からないから休むわけにはいかない。昨日の例もあるからな。それに昨日のことで人手も足りないんだ」


 タカマサは足を骨折していた。

 結局そのまま入院することになってしまったのである。


 キズクたちを助けようと非番だった人たちも呼び出したし、タカマサがしばらくいない分の穴もある。

 本来ならキズクは昨日が休みで次の日が仕事の予定であった。


 休みにしてあげたい気持ちもあるけれど、結局色々な人が動くことにはなったので結局ほとんどそのままのスケジュールになった。


「こうして渡すものあったし、どうせお前は平日学校で急に予定はいれられないだろ」


「まあそうですね」


「ゲートは今攻略するギルドを決めてるところで、周辺は封鎖されてる。だからいつもよりも短く済むはずだ」


「行ってきます」


「ゲート見つけても入るなよ?」


「はーい」


 ーーーーー


「はぁ、疲れた」


「うむ、お疲れ様」


 仕事を終えて帰ってきた。

 同じ方向に帰る人の車に乗せてもらい、近くで降ろしてもらって残りをのんびりと歩いていた。


 昨日は結局疲れていて早くに寝てしまったので、今日こそは今後の計画を考えるぞと思ってた。

 ただやっぱり昨日の疲れもあるのか、ちょっと疲れた感じは残っている。


「ちなみにお金ってどうしているのだ?」


 レイジからいくらかまとまったお金をもらった。

 キズクの家が裕福でないことは分かりきっているので、お金をどう使っていたのかノアは気になった。


「基本的に貯金しながらリッカに使ってるよ」


「んん? こやつに?」


 ノアはキズクの横を歩くリッカを見る。


「リッカにかかるお金もバカにならないからな」


 主にかかるお金としては食費であるが、覚醒者ライセンスの更新や移動にも契約した魔獣分の費用がかかる。

 魔獣用のフードは買っているのだけど、それだけじゃリッカには足りていない。


 だからリッカ用の食べ物なんかを買ったり覚醒者としてかかるお金の諸々は自分で払っていた。


「あとは日持ちする砂糖とか塩とか買って、こっそり継ぎ足したり……」


 キズクの母親は、中学生の息子が覚醒者として危ないことをして稼いだお金を喜んで受け取る人じゃない。

 砂糖や塩をこっそり継ぎ足したり、シャンプーの詰め替えを自分で買って入れておいたりと少しでも助けになればとやっていることもある。


「多少怪しいとは思ってるかもしれないけど、まだ多分気づかれてはいないかな?」


 砂糖や塩も節約気味に使うのでそんなに減るものではない。

 減りは遅いと思ってるかもしれないが、キズクが足してるなんて思いもしないだろう。


「ノア?」


 肩に乗ったノアがキズクの頬に体を寄せた。


「君は優しいね……」


 一般の家庭がどうなのかノアは知らない。

 しかしキズクの行いが一般的なものでないことは分かる。


 まだ子供といっていい年齢のキズクがそんなことをするのは簡単ではない。

 今は回帰した中身なので大人だけど、回帰する前はただの子供であったのだ。


「ありがとう。……リッカもね」


 ノアに対抗するようにリッカもキズクに体をこすりつける。


「今度はもうちょっと母さんにも楽させてあげたいな」


 誰かを救うこともできた。

 なら生活も変えることができるはず。


「さっさと帰って計画練ろう」


 何にしても考えなしに行動しては変えられるものも変えられない。

 キズクは帰る足を少し速めた。


「よう、キズク」


 キズクの家である古いアパートが見える角を曲がったところで一人の少年がキズクの前に現れた。


「カナト……」


 キズクと同い年ぐらいの少年はキズクのことを馬鹿にしたような目で見ていて、ノアはすごく不快感を覚えていた。


「久しぶりだな? 元気にしてたか?」


「おかげさまで。お前も変わりないようだな」


 キズクの体調など気にしていないだろうと思いながら表面的な挨拶を交わす。

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