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出来ることから7

「でもこれなら……」


 トシは何か思いついたようにゲートから出て行った。


「何をするつもりかな?」


 ノアが首を傾げてゲートを覗き込む。


「おろ?」


 程なくしてゲートの向こうからロープが飛び出してきた。

 ロープの端はそのまま崖を降りていく。


 ただロープの逆の端はゲートの外につながったままになっている。


「よいしょ……」


「あっ、トシさん」


 トシが再びゲートの中に入ってきた。


「外の木にロープ繋いできた。これで降りられるだろ」


 持ってきていた荷物の中には長いロープもあった。

 ゲートは森の中にあるので、近くの木にロープを結びつけて逆の端をゲートの中に投げ入れたのである。


「上から照らしててくれ。お前は降りなくてもいいからな」


 キズクが懐中時計で照らし、トシが慎重に降りていく。

 下まで降りたトシがタカマサに駆け寄る。


「大丈夫なのか?」


「俺だって色々やって生きてきたんだ。これぐらい大丈夫だよ」


 トシがタカマサに気を向けている間にキズクも降りようとする。

 ノアは心配そうな顔をする。


 キズクとノアが出会った時には、もうキズクはあまり目立った活動していなかった。

 今はリッカの能力を活かして偵察役のようなことをしている。


 ノアと出会った後のキズクもノアの能力を使って同じようなことをしていた。

 どちらにしても前に出て戦うようなことはしなかった。


 まだまだ体は未成熟なのでちゃんと降りられるのか心配なのだ。

 だけどキズクは笑ってノアの頭を撫でる。


「ほっ!」


 キズクはロープを伝ってスルスルと下に降りていく。


「おおっ、上手いものだな! 見直したぞ!」


 キズクは危なげなく下まで降りてしまい、ノアは思わず感心してしまう。

 下に着いたキズクは崖を見上げる。


 暗い中で上から見ると分かりにくいけれど、下から見るとゲートが見えないぐらい高さがある。


「軽やかだな」


 リッカはどうするのか。

 そんなことをノアが思っていると、リッカは上から普通に飛び降りてきて軽やかに着地した。


 ふふんと鼻息を立てたリッカはノアに視線を送る。

 自分はこんなこともできるのだぞ、と言っているようだ。


 一々突っかかってくるリッカにノアは目を細める。


「見ておれ……僕だってもっと力取り戻せば凄いんだからな……」


 今は悔しいけれど流すしかない。

 時を戻すなんて大業を成し遂げて、ノアは完全に力を失っている。


 人型になれるほどの力を持っているのだけど、今はリッカの尻尾にすら勝てない。

 

「どうですか?」


「お前……降りてこなくていいっていったのに」


 キズクはタカマサの足を診ているトシに声をかける。

 降りてきていたキズクを見て、トシは少し呆れた顔をした。


「まあいい。どうやら足をやっちまったようだ」


「……すまねえ」


 チラリとズボンのすそから見えるタカマサの足は、赤紫色になってパンパンに腫れていた。

 ねんざで済めばいいけれど、ひびや骨折といったぐらいまで傷めている可能性がある。


「命に別状ないのはいいけど……これじゃあ登れないな」


 トシは崖を見る。

 タカマサはE級覚醒者なので、崖でもロープが一本垂らされていれば登れるだろう。


 しかし片足が動かせないほどの怪我をしていては登れるものも登れない。


「んー……どうするか」


 トシは頭を抱えてしまう。


「やっぱり助けを……」


 ピクンとリッカのミミが反応を見せた。

 顔を上げてダンジョンの奥を見つめる。


「助けを呼びに行ってる暇はなさそうです」


「キズク君?」


 キズクが剣を抜き、リッカは小さくうなる。


「聞こえ始めたね」


「…………この音は」


 カサカサとした音が聞こえる。

 リッカにのみ聞こえていた音がキズクたちにも聞こえるほどに相手が近づいている。


「チッ!」


 トシもようやく剣を抜く。

 相手が遅いからまだ間に合うが、もっと速い相手なら危ない判断速度である。


「トシさん、明かりを用意してください!」


「あ、ああ!」


 懐中電灯片手に戦うのは難しい。

 手を使わず安定した明かりが戦う上では必要である。


 ランプのような置くタイプのものあるけれど、今回使うのはサイリウムであった。

 パキッと折れば発光し始めて持っている必要はない。


 トシは何本か光らせて周りにサイリウムをばら撒く。

 これもモンスターが来るとわかった時点で用意すべきで、トシが戦い慣れしていないことがハッキリと分かる。


「来ます……!」


 通路の暗がりからカサカサと音を立てる正体が姿を現した。


「アリか……?」


「気持ち悪いな」


 現れたモンスターは大きなアリだった。

 洞窟のようなゲートの中のダンジョンはアリの巣であったのだ。


 大型犬ぐらいの大きさがあるアリが五体、キズクたちに襲いかかってきた。


「キズク君、無理はするなよ!」


「くっ……足さえ無事なら……!」


 トシが戦い始めるけれど手が震えているのが見え見えだ。

 タカマサは立ちあがろうとしたけれど、足に激痛が走ってまた座り込んでしまった。


「あわわ……キズク、大丈夫か?」


「大丈夫だよ」


 キズクはアリの噛みつき攻撃をかわす。

 何となく感じていたけど、才能があるとか何でもできるとか言う割にノアはキズクのことをできない子扱いしているような気がする。

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