部活対抗戦6
「嘘だ!」
タケダが叫ぶ。
キズクが勝利して、第二テイマー部の部活対抗戦勝利が確定した。
色々と条件はつけられていたが、中でも大きなものは負けた方の廃部である。
キズクたち第二テイマー部が勝利したということは、同時にタケダたち花菱会の廃部が決定したということである。
首のすげ替えや即時に部活を復活させないために、廃部になったらしばらく部活を起こすことはできない。
三年生のタケダはもう花菱会を復活させることは不可能なのである。
「そんな……何かの間違いだ!」
認められないといった顔をしてタケダはステージに上がってくる。
「なんの間違いでもない。そちらが負けたのだ」
「なっ!?」
「……ヤシマ先生」
キズクに詰め寄ろうとするタケダの前に割り込んだのは、ヤシマであった。
第二テイマー部の顧問は、実はヤシマであった。
ほぼほぼ放任主義で時折しか見にこないので、あまり部活で顔を合わせたこともない。
ただ顧問がヤシマだから部活対抗戦が承認されたことも不思議だった。
放任的だが生徒を見ていないわけじゃない。
厳しいがしっかりと生徒のことを考えてくれている人だ。
それなのに廃部という条件のかかった部活対抗戦を認めるはずがないと思っていた。
教師の中でも若干浮いた雰囲気はあるので、何かの圧力があった可能性は否めない。
もしくは、キズクたちなら勝てるとヤシマは考えていたのかもしれない。
「部活対抗戦の結果はすでに確定した。結果を受け入れられないのなら最初からやるべきではなかったのだ」
「でも……廃部なんて……」
「そもそも廃部はこちらではなく、そちらが言い出したことだろう」
「うっ……そ、それは……」
タケダはチラリと観客席を見る。
もうそこにはカネシロの姿はない。
「今回のことは良い経験になっただろう。軽々しく部活対抗戦を突きつけたり、廃部を条件にすることの重さは他のこととも大きくは変わらない。部活対抗戦というわがままを通したのだ、その結果はしかと受け止めろ」
「あ……う……くそっ!」
タケダは武道場を飛び出していく。
元花菱会の面々もタケダがいなくてはなんともならず、同じく武道場を後にした。
「キタカタ」
ヤシマの目がキズクに向けられる。
タケダに向けられていたものよりいくらか優しい視線をしている。
「よくやってくれたな」
ヤシマは目尻にシワを寄せて笑うと、キズクの肩に手を乗せた。
「あんな無茶な戦いを止められずにすまなかった……」
「いえ、どんな条件、どんな相手だろうと勝つつもりだったので大丈夫です」
やはり裏では何かあったのだなとキズクは思った。
厳しい戦いにはなるかもしれないが、いくつかの条件さえ守ってもらえれば勝てるだろうと考えていた。
キズクの言葉にヤシマは微笑む。
「まあ君たちならやってくれるかもしれない、そう思っていた。まさかキタカタレオン君も引き込むとは思わなかったがな」
「相手も何か引き込んでいたみたいだし、ちょうど良かったです」
「特待生のヤナギリュウセイだな。タケダや花菱会とは関わりがないはずだが、今回起きたことを考えるに第二テイマー部をよく思わない奴がいるのだろうな」
ヤシマも裏に誰がいるのか薄々勘づいているようだ。
「これだけのことをして……失敗したのだ。しばらく手を出すようなことはないだろうが……目をつけられた可能性はある。気をつけろよ」
「……分かりました」
「俺も生徒は守る……だが思っているよりもアカデミーは簡単じゃないからな」
どこでもくだらない政治ゲームのようなものは起こりうる。
権力争いは世の常である。
対抗するためには自らもどこかの勢力に入るか、権力争いをものともしないほどに強くなるしかない。
キズク的にはテイマー勢力を上手くまとめて、存在感を増したいところだ。
だがそのためにも色々と大変そうである。
「第一テイマー部……なんでテイマーで潰し合いするかな」
キズクは思わずため息をついてしまう。
「ん? ああ、まあ、今は喜ぼうか」
暗い顔をしているのを見てリッカが鼻をキズクの手にこすりつける。
悩んでも仕方ない。
やれることを一つずつやっていくしかないのだ。
キズクはリッカの頭を撫でる。
ともかく今回は第二テイマー部という居場所を守ることができたのだった。




