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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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部活対抗戦4

ははっ! いいな!」


 リュウセイは楽しそうに笑う。

 シホはなんとかリュウセイの攻撃を防いでいた。


 ややリュウセイの方が優勢となっているが、本気で戦っても紙一重のところで攻めきれないぐらいのわずかな差しかない。

 油断のできない戦いにリュウセイは血が湧き立つ思いだった。


「月影刀法第三式!」


「上杉流第四剣!」


 リュウセイの攻撃がシホの腰をかすめる。

 戦うほどにシホの保護魔法の耐久度が少しずつ削られていく。


 このままでは絶対的な一撃がなくても、シホが負けてしまう。


「おっと? 何か手があるならさっさと使うがいい」


 シホが一度距離を取る。

 ただの仕切り直しにしては、シホが何かをしようとしているとリュウセイは感じた。


「じゃあ……」


 シホはポケットに手を突っ込む。


「なんだ……?」


 シホがポケットから取り出したのは一枚の紙だった。

 四つに折り畳まれた紙を開くと、魔法陣が描いてある。


「私を手伝って、プララム」


 シホが手にしていたのは魔獣移転魔法陣が描かれた紙だった。


「なっ……魔獣を呼ぶのか!?」


 紙に描かれた魔法陣が空中に浮かび上がる。


「卑怯だぞ!」

 

「卑怯? どうして?」


「どうしてって……」


「私はテイマー部だよ?」


 魔法陣から魔獣が飛び出してきた。

 スッと差し出したシホの手の上に一匹のトカゲが飛び降りた。


 シホが魔獣を使うとは思っていなかったのだろう。

 リュウセイどころかタケダたちも驚いている。


 純粋な実力で勝負していたのに魔獣を出してくるなんて卑怯だとリュウセイはいうが、魔獣だって実力のうちだ。


「魔獣は禁止されてない」


 今回の部活対抗戦において魔獣も共に戦うことはルールの内である。

 ここだけはソウは譲らなかったのだ。


 テイマー部と戦うのに魔獣を禁ずるのは対面が悪く、タケダも魔獣は認めざるを得なかった。

 どうせアカデミーにいる一年の魔獣など底が知れていると侮っていたところもある。


 それにシホは魔獣を使わないだろうと思っていた。

 たとえテイマー部に入ったとしても、そのぐらいのプライドはあるはずだと考えていたのだけど、別にシホは魔獣と契約することになんの偏見もないのだ。


「くっ……」


 ルール上禁じられていない。

 文句を言うのは自由だが、互いの合意で決めたルールに文句をつけるだけ情けなさが目立つだけである。


 それにシホが呼び出した魔獣はどう見たって強そうじゃない。

 手のひらサイズの黒っぽいトカゲは、モンスターだと言われても信じられないぐらいである。


 大きなモンスターならともかく、ただのトカゲを卑怯だと言うだけリュウセイがそれを恐れているように見えてしまうだろう。


「それじゃあいくよ」


 手のひらのトカゲがシホの腕を上る。

 シホはそのままリュウセイに斬りかかる。


「何をするつもり……」


 なんの力もなさそうなトカゲが増えたところでなんだというのだ。

 契約を済ませているなら魔獣から多少の魔力を受け取っているのだろうが、それは戦い始めた時から変わらない。


 トカゲの動きという気にするところは増えたけれども、特に何ができるわけでもないだろう。

 シホが攻め立てるものの、動きに変化はない。


「みかけ倒し……うっ!」


 ただちょっとしたブラフだったのだろうとリュウセイは考えた。

 しかし足元に鋭い痛みを感じた。


 一瞬視線を下げると黒いものが見えた。


「こいつ……」


 それはシホが呼び出した魔獣のプララムだった。

 シホの腕にいたはずなのに、いつの間にかリュウセイの足に移動していたのだ。


 力の弱い魔獣でも、人間は大抵防御力が低いのでかじられると普通に痛い。


「うっ!」


 プララムに気を取られてシホへの対処が遅れた。

 シホの剣がリュウセイの肩に当たった。


 保護魔法の耐久度がギュッと減るも、これぐらいではまだ終わらない。


「この!」


 もう一ガブリとかじられてリュウセイは顔を歪める。


「意外と馬鹿にできないんだよなぁ」


 戦いの様子を見ていたキズクはニヤリと笑う。

 小さい魔獣を馬鹿にする人は多い。


 確かに強いモンスターに対して小さい魔獣では力不足なことも少なくはない。

 だが何もできないわけではない。


 相手にダメージを与えることはできなくとも連携を取れば小ささを生かすこともできるのだ。

 ノアも飛んで動き回り、相手を撹乱することができる。


 小さなくちばしも油断しているところに攻撃されると意外と痛く、死ぬようなことはなくても注意は削がれてしまうのだ。

 リュウセイはプララムが何にもならないとすぐに意識の外に追いやってしまった。


 だが小さな魔獣は人間のような相手には特に有効になり得る。


「ふざけたことを……!」


 シホに集中しようとすればプララムがかじりつく。

 だが少し足を振ったぐらいじゃプララムは振り払えず、しっかり振り払おうとするとシホに大きな隙を見せることになってしまう。


 さらに面白いのは、この試合においてはプララムの攻撃でもリュウセイの保護魔法の耐久度が削れることである。

 シホの魔獣親和性の検査結果はまだ出ていない。


 けれどもたとえ親和性的に相性が悪くても、魔獣と契約できないものではない。

 プララムはなんてことない魔獣に見えるが、実は何人もの人と契約してきたベテラン魔獣である。


 人をよく理解している頭が良いモンスターで、今回シホの隠し玉として契約してくれたのだ。

 こっそり相手に近づいて、振り払いにくいところから攻撃するなんてことをプララムは見事に実行してくれていた。

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