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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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一悶着1

「……可愛い」


 シホが正式に第二テイマー部に入部した。

 テイマー部でやることの多くはモンスターのお世話である。


 これは新入部員だろうと三年生だろうと変わらない。

 シホも例に漏れずモンスターのお世話をしていた。


 テイマーに偏見のないシホは、モンスターにも特に偏見も恐れもなく接している。

 普通に動物も嫌いでないようで、馬のモンスターの頭を撫でている。


 シホは割と大和撫子っぽい感じがあるので馬に乗っても似合いそうだなとキズクは思った。

 馬の方もシホに好意的な態度をしている。


 もしかしたら親和性の相性がいいのかもしれない。

 シホが第二テイマー部に入ると聞いて、チトセはとても驚いていた。


 それでもシホの選択なら尊重とすると呆れたように言っていた。

 良い友達である。


「次は池の方に行こうか」


「ん」


 リッカもバケツを一つ咥えて持ってお手伝い。


「テイマー部はどうだ?」


「雰囲気いいね」


 シホはニコリと笑う。

 どこか別の部活に入っているのかもと心配していたが、シホはどこにも入っていないようだった。


 シホの言うように第二テイマー部の雰囲気はとても良い。

 アットホームで、仲良し感が強い。


 距離の近さが嫌な人もいるだろうが、キズクは割と好きだった。

 テイマー部は当然のことながら、リッカに対しても受け入れは非常に早かったのでそこも気に入っている。


「てっきり剣術系の部活に入ってると思ってたよ」


 スポーツとしての剣道部はあるが、それ以外にもサークルのような形で派閥で固まっているものもある。

 北形家は特に固まっていないが、剣術名家が中心となって互いに切磋琢磨するための部活を起こしていることもあるのだ。


 もちろん広く人を募集している実戦的な部活もある。

 そうしたものにシホも所属していると思っていた。


「……人といるの苦手だから」


「テイマー部もあれだったか?」


「最初はね」


 シホが人と接するのが得意なタイプではなさそうなことは見ていて分かる。

 約束だから我慢して入っているのだとしたら悪いことしたなとキズクは思ったけれど、シホは池にエサをばら撒きながら微笑む。


「ここは悪くないよ。強いね、って言葉だけで終わって怖い目をしないから」


 強いと周りに嫉妬される。

 覚醒者は実力主義なところもあるので、強さを何より基準に置いている人も少なくない。


 レオンはキズクに負けて、キズクに対して暗い思いを抱いていた。

 キズクよりも強いシホはもっと色々と良くない感情を持たれていてもおかしくない。


 強くて才能があることは多くの嫉妬、憎しみ、足の引っ張り合いを生む。

 だからシホは人と接することが苦手であったのだ。


 純粋に腕を競い、切磋琢磨しようとしても実力を見せつけているとか陰口を叩かれてるぐらいなら交流なんてしない方がよかった。

 一方で第二テイマー部も強くなることには積極的だが、一緒に強くなろうという感覚が大きい。


 魔獣だけでなく、他の人も含めて強くなろうという意識がある。

 剣の道を進む人が孤独に強くなるなら、テイマーはモンスターと共に強くなることがあるからかもしれない。


 シホのことを純粋に強いといって、輪に加えてくれる第二テイマー部はシホにとっても居心地が良かった。

 なんならチトセも誘おうかと思っているほどだ。


「まあなんにしてもウエスギが仲間になってくれて嬉しいよ」


 一人では何も変わらないかもしれない。

 しかしそれが十人になり、百人になれば変わってくることもあるだろう。


「あとはウエスギも親和性の高いモンスター見つけて契約だな。……なんか騒がしいな?」


 良い感じに話もまとまったと思っていたら、建物の方から騒がしい声が聞こえていた。

 何かは分からないが、テイマー部が騒がしくしているのではなさそう。


 敏感なモンスターの何体かが騒がしさから逃げるように走っていく。


「行ってみようか」


 エサやりも終わった。

 不穏な気配を感じたせいかチラリと顔を出していたタコの子も池の中に隠れてしまった。


「誰がどこに入ろうが自由だ!」


「才能あるものがこんなとこに入れば才能が腐ってしまうだろ! ふさわしい場所がある!」


 今日は部長のムギがいない。

 なので今日は副部長のソウが場の責任者である。


 そのソウが見知らぬ男子学生と睨み合っている。


「お前のところにいたら性格の方が腐ってしまうだろ!」


「はっ! 負け犬の遠吠えが空しいな!」


「何があったんですか?」


「あー……その、な」


 キズクは近くにいた二年生の柴崎尚輝シバサキナオキに声をかけた。

 シバサキはキズクたちの方を振り返って気まずそうな顔をする。


「ウエスギ!」


「おいっ……」


 なんでそんな顔したのかと聞く前に、ソウと睨み合っていた男子学生がシホに気がついた。

 背中に大きな剣を背負った男子学生はソウのことを無視して、ズンズンとシホに近づく。


「こんなところにいないで行くぞ!」


 男子学生はシホの手を乱雑に掴んで引っ張る。


「うっ……」


「ちょっと!」


 事情は分からない。

 でも手を引かれたシホが痛そうな顔をしたので、キズクは思わず男子学生の手を掴んだ。

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