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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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テイマーの凄さ2

「くっ……」


 流石のシホも三方向から攻撃を受ければ対処は厳しい。

 キズクの剣が体をかすめて、シホの目が完全に本気になった。


「上杉流……第一剣・出龍大川」


「ようやくお前も本気になったか」


 剣術名家ならどこでも一つぐらい自分の家の剣技を持っているものだ。

 北形家における帝形剣法のようなものがシホにもあると思っていた。


「帝形剣法一式!」


 シホの剣に魔力が込められて、冷たく感じるほどの殺気が向けられる。

 キズクもシホに対抗して帝形剣法で迎え撃つ。


「うわっ……すごっ!」


「あれが一年生かよ」


 鋭く速く重たい剣。

 流れる大きな川から龍が飛び出してきたようなシホの攻撃にキズクは何とか喰らいつく。


「ぬおっ!」


 何とか邪魔しようとしたノアも見逃さず、シホは攻撃の流れて剣を向けた。

 ギリギリ回避したけれど危ないところだった。


「やっぱりこの程度……」


「ははっ、まあ見てろって」


「なっ……」


 リッカがシホに飛びかかる。

 キズクを助けようとしてのことかもしれないが、不用心である。


 リッカさえ倒してしまえば、ノアがいてもキズクを相手にすることは難しくない。

 そう思って振り返ったシホは振り上げた剣が動かなくなって驚いた。


「ふっ!」


 振り下ろされたリッカの前足を、状態を逸らしてギリギリかわした。


「これは何……」


 シホが右腕を見るとロープのようなものが巻き付いている。


「うっ!」


 それが何かを考える暇もなくノアが飛び込んできて左目の近くを突かれた。


「この……!」


 続けてキズクが斬りかかる。

 ロープの先はキズクに繋がっていて、防御のために振り上げようとしたシホの腕を引っ張って邪魔する。


 ロープはキズクの本気、グレイプニルである。


「あれは……」


「魔獣との契約スキルね」


「契約スキル……」


「あなたも聞いたことあるでしょう? 特別な魔獣と深い絆を結んだ時に使えるようになる特殊なスキル、魔法のことよ」


 戦いの様子を見ていたムギは驚いた。

 契約スキルなんて話にばかり聞くレアなもので、実際に見たこともなかった。


 それを目の前で見ることができるなんて、すごい経験だと興奮すら覚えている。


「これぐらい!」


 シホは手首のスナップを効かせて剣を投げ、左手に持ち替える。

 キズクの攻撃を防ぐとグレイプニルを切ろうとする。


「切れない!?」


 簡単に切れるだろう。

 シホはそう思っていたが、スキルで生み出されたグレイプニルはしなやかで頑丈、簡単に切ることなどできない。


「かはっ……!」


 グレイプニルがさらに動いてシホの剣に巻き付く。

 完全に動きを止められたシホの腹をキズクは剣で突いた。


「まだ終わってないか……」


 決まったと思ったが、シホは自ら身を引いてダメージを軽減させていた。

 ムギがチラリとパネルを確認すると保護魔法の残量はほんのわずかに残っていた。


「どうして?」


「まだやるだろ?」


 キズクは一度グレイプニルを引っ込めた。

 グレイプニルは秘策であり、切り札的な存在として使った。


 何も知らないシホとしては不意打ちにも近かっただろう。

 実戦なら腹を剣で突かれた時点で終わりだ。


 しかし今回はまだ終わっていないのならキズクももうちょっと戦いたくなった。


「油断してると終わりだぞ!」


 キズクはグレイプニルをシホに向かって伸ばす。

 シホが飛び退いてかわすも、グレイプニルはシホを追いかける。


「はっ!」


 あと一撃でも喰らえばシホは負ける。

 剣でグレイプニルを振り払う。


「ほら、まだまだいくぞ!」


 グレイプニルを振り払ったからと終わりではない。

 キズク、リッカ、ノアがそれぞれシホを狙う。


「上杉流第四剣・天龍降牙!」


「帝形剣法三式……プラスグレイプニルだ!」


 キズクとシホの剣がぶつかる。

 シホの方が剣も速く、キズクの技量では防ぎきれない。


 けれどもキズクは防ぎきれない剣をグレイプニルで受け止めた。

 自分の剣の動かし方はわかっているので邪魔にならないようにグレイプニルを周りに広げていた。


 もっとシホの技量が強ければ分からないが、今の段階でシホがグレイプニルを切ることはできない。

 グレイプニルに当たった剣は柔らかく受け止められて威力を殺される。


「ワオーン!」


 威力を殺されてシホの攻撃速度が落ちた。

 後ろに迫ったリッカが大きく口を開けて吠える。


 魔力の込められた咆哮をまともに受けたシホは一瞬体が止まってしまう。


「ホー!」


 次の攻撃に備えねばならない。

 シホはほとんど無意識に声に反応して剣を振った。


 相手がキズクだったら一撃入っていたかもしれない。

 けれども声の主はキズクではなく、ノアだった。


 剣はノアに当たることもなく大きく空振る。


「あっ……」


 シホの体にグレイプニルが巻き付く。

 苦しいほどに縛られて、身動きが取れなくなったシホはキズクが剣を振り下ろすのを見た。


「……流石だな」


 優しくコツンとキズクの剣がシホの頭に当たった。

 保護魔法が保護の限界を迎え、シホの体から魔法が光って消えていく。


「私負けたよ?」


 何が流石なのかとシホは不満そうな顔をする。


「最後まで目を逸らさなかったろ? 負けるにしたってそんな奴は多くない」


 最後の最後で手は抜いた。

 しかしキズクだって直前まで本気で一撃加えるつもりだった。


 それなのにシホは目を閉じることもなく最後まで攻撃を見ていた。

 シホの精神力は非常に強いとキズクも驚く。

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