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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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コボルトゲート異常事態4

「俺は! お前が! 嫌いだ!」


 レオンは剣を振り下ろし、キズクはそれを受け止める。

 思っていたより重たい一撃、そして思っていたよりも重たい本音に驚いてしまう。


「いきなり現れて、いきなり全部を持って行ったお前が憎い!」


「……リッカ、ウエスギ! こっちじゃなくデカい方に行け!」


 レオンの攻撃を防ぎながらキズクは指示を飛ばす。

 こんな状況でも冷静に指示を出すキズクのことを見て、動こうとしていたヤシマは手を出すことを控える。


 他の教師も止めて、キズクに戦いを一任する。

 リッカもキズクの方に加勢するか迷っていたが、キズクの指示を聞いてデカいコボルトの方に向かう。


 デカいコボルトの方はキタジマとユウキがなんとか持ち堪えている。

 ここにシホとリッカが加われば十分に戦えるだろう。


 そしてレオンはキズクが相手する。


「帝形剣法一式!」


「本気のようだな」


 どうにもレオンはキズクのことしか見えていない。

 ならばキズクが相手するしかないし、このままみんなで止めるのは何か違うような気がした。


 レオンの帝形剣法に対してキズクも同じく帝形剣法を繰り出す。

 同じ動きの剣がぶつかり合う。


 キズクが北形家を訪ねて勝負した時よりもレオンの剣は素早く鋭くなっている。


「傍系の俺でも期待されるのだと思ってた……重たい期待だと嫌になった時もあったけど俺は努力していた! なのにいきなりやって来て全部をお前が掻っ攫っていった!」


 レオンは北形家の直系子孫ではない。

 傍系だの直系だの、くだらないなとキズクは思うのだけど渦中の本人にとっては大切な問題である。


 キズクが来るまでレオンが北形家の中でも期待されていた。

 全てを一身に背負うというほどではなかったものの、両親はレオンに大きく期待していた。


 だがキズクが現れて北形家の話題を全て持っていってしまった。

 年齢が上や下ならまだしも、レオンと同い年というところも悪く、レオンへの注目はすっかりキズクの方に向いてしまった。


 テイマーなのもあって良い意味での注目も悪い意味での注目も全てをとられてしまったのである。


「それなのにお前は天才なんて呼ばれて……プレッシャーを感じている様子もない……なんなんだよ!」


 才能がある。

 天才。


 そんなふうに呼ばれていたのはレオンだった。

 今北形家の中にいる人の中でそう呼ばれていることは理解していたが、良い気にもなったし、やはりプレッシャーもあった。


 それなのにキズクは何も気にした様子はない。

 レオンを上回るような成長を見せて天才と呼ばれるようになりながらも、プレッシャーに押しつぶされそうになっている様子もない。


 全部が気に入らない。

 レオンは喉が張り裂けそうなほどに叫んだ。


「……俺はお前の好きだぞ」


「はっ?」


「お前は頑張ってる。努力を重ねて、傍系だとか直系だとかそんな壁乗り越えようとしている」


「……バカにしてるか!」


 レオンは本気でキズクのことを斬ろうとしている。

 実際戦ってみるとキズクの方も余裕があるわけではない。


「バカになんてしてないさ。本気でそう思ってる。努力して強くなろうとしているお前の姿は俺は好きなんだ」


 真の天才と呼べるのはシホのような人だろう。

 レオンも才能はあるけれど天才ではない。


 でもレオンは才能の差を努力で埋めようとしている。

 そんな姿をキズクは好ましく思っている。


 あえて表現するなら努力の天才という分類なのかもしれない。

 無視されて態度が悪くてもキズクが不快に思わないのはレオンのことを好ましく思っているから、というところも大きかった。


「なんの努力もしてないくせに!」

 

「それは違うぞ!」


 レオンの剣を防ぎ、鍔迫り合いになる。


「俺だって努力してる。プレッシャーだって感じてないわけじゃない。ただ俺には俺のやり方があって、俺には俺の守りたいものがあるんだ」


 努力していないと言われると流石に少しムッとする。

 キズクがレオンよりも強いのは努力の結果だ。


 レオンにとっては短い間の天才的な成長速度に見えるかもしれない。

 しかしキズクの努力は回帰前からの、腐りながらも希望を捨てきれずに細く続けてきた苦しい努力の積み重ねがその根底にあるのだ。


 今だってもちろん努力している。

 手を抜けばレイカに殺されるというぐらいの鍛錬をしているのだから必死に頑張っている。


「うるさい!」


 見たくないものを見なければキズクの努力など見えなくても仕方ない。

 レオンは帝形剣法の第二式でキズクに斬りかかる。


「俺はお前と友達になりたいぞ!」


 少し悪かったとは思う。

 でもそんな状況でもレオンは諦めずに剣を振っていた。


 キズクに負けて大きなショックがあったのだろうが、心が折れることはなかった。

 立派だと思う。


 そんな心の強さはこれからの激しく辛い戦いでもきっと生きてくる。

 仲間に、そして友達になりたいと思っている。


「帝形剣法第三式……」


 帝形剣法の第二式を第二式で受け切ったキズクはそのまま第三式を繰り出す。

 まだキズクの実力では多少無茶になるがしょうがない。


「くっ!」


 キズクの攻撃を受けきれずレオンの手から剣が飛んでいく。

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