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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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コボルトゲート異常事態3

「……これは!」


 遠吠えが聞こえてきた。

 みんなはリッカのことを見たが、遠吠えしたのはリッカではない。


「コボルト……の群れの長か何かだな」


 もう一度遠吠えが聞こえてきて、みんな音の方を振り向いた。

 気づいたらもう見える位置に大きめのコボルトがいた。


 普通のものよりも一回りほど大きく、ほかと違うことは見ていれば分かった。

 ややサイズの合っていない胸当てを身につけていて、手にはほとんど棒のようになっている錆びついた剣を持っている。


「もう一体、何かいるな」


 大きなコボルトがボスだろう。

 みんなはすぐに察した。


 ただ現れたのはボスコボルトだけではなかった。

 ボスコボルトの横には別のコボルトがいる。


 逆にこちらのコボルトは普通のものよりも一回りほど体格が小さい。

 小さいコボルトと同じぐらいの長さがある、杖のようなゴツゴツとした木の棒を持っている。


「なんだか……目が変だな」


 小さいコボルトはなんだか虚な目をしている。

 普通のコボルトに比べて、どこ見ているか分からないぼんやりとした視線をさまよわせている。


「ボス攻略班、前へ!」


 思っていたよりもボスが近く、あまり長々と観察している猶予もない。

 キズクが動き出すと他の子も慌てて前に出る。


「二体一対のボスかもしれない。気をつけて挑め!」


 通常で考えたら大きなコボルトの方がボスであり、小さいコボルトは取り巻きモンスターだと考えられる。

 しかし時にボス個体が複数いることもある。


 小さいコボルトもなんだか様子がおかしくて、大きなコボルトと小さいコボルト二体合わせてボスなのかもしれないとヤシマは思った。


「ウエスギ、小さいやつを狙うぞ! キタジマとユウキで大きい方を引きつけろ!」


「わかった」


「任せとけ!」


「オーケー!」


「リッカも小さいのを狙え!」


「わふっ!」


 キズクが素早く指示を出す。

 弱そうな方から素早く倒して戦力を集中させるのは戦いの定石である。


 だが今回はそれだけでなく、小さいコボルトになんだか嫌なものを感じたからだ。


「お前はこっちこいよ!」

 

 ヤシマが選んだ四人は、単純に動きを見て優秀な順に上から選んだわけではない。

 キタジマは左手に剣を持ち、右手に盾を持っている。

 

 戦いの役割として大きく分けると、接近戦闘を行う人と遠距離戦闘を行う人がいる。

 接近戦闘の中でも攻撃をメインに行う人や相手を撹乱する人、相手の攻撃を引き付ける人など細かい役割は様々だ。

 

 キタジマはその中でもタンクと呼ばれる、攻撃を受けたり引き付けたりする役割を担っていた。

 大きなコボルトに向かいながら声をかける。


 キタジマの挑発に、大きなコボルトはキッと牙を剥き出してキタジマのことを睨みつける。


「何をするつもりだ?」


 大きなコボルトは見た目に敵意を剥き出しているのに対して、小さいコボルトはいまだになんだかぼんやりとしている。

 両手で杖を掲げるように持ち上げると、ゆっくりと回転させるように振り回す。


 杖を振り回すということは魔法でも使うのかと警戒しながらキズクとシホ、リッカは小さいコボルトに向かう。

 魔法を使うなら厄介だ。


 やはり先に処理してしまいたい。


「ゆけ、リッカ!」


「私のかつやーく!」


 ちなみにノアはリッカの背中に乗っている。

 キズクとシホよりも早く小さいコボルトに近づいたリッカは小さいコボルトの喉に噛み付くと、ぶんと高く投げ上げた。


「えぇ……」


 見上げるほどに高く飛んだ小さいコボルトはなんの抵抗もなく落ちてきて、地面に頭から衝突してグシャリと音を立てる。

 キズクとシホが駆けつけた時にはもう小さいコボルトは動かなくなっており、その横でやりました! という顔をしてリッカはお座りして尻尾を振っていた。


 とりあえず軽くリッカを撫でつつ小さいコボルトのことを確認する。

 首が変な方向に曲がって完全に死んでいる。


「……あっけないね」


 シホも少し驚いたような顔をしている。

 怪しさの割にあまりにも簡単に死んでしまった。


 何かしようとしていたのか、あるいは何もできなくてただのポーズとして杖を振り回していたのか。

 どちらだったのか今となっては分からない。


 ともかく倒せたのだから問題はない。


「次はデカいの……」


「うわあっ!」


「おい、いきなりどうしたんだよ!」


「なんだ?」


 小さいのを倒したのだから次は大きいのと思っていたら、見学していた生徒たちの方から悲鳴が上がった。

 何かと思って視線を向けると、腕を斬られて倒れる生徒と剣を抜いているレオンの姿が見えた。


「キタカタ、何をしている!」


 何が起きたのかヤシマにも分かっていない。

 キズクたちに何かがあればすぐに助けに入れるようにと前にいた。


 振り向いたらもうレオンが他の生徒を傷つけたところだった。


「くっ!」


 近づくとヤシマにレオンは剣を振る。

 その目は虚ろで、様子がおかしいとすぐに気づいた。


「キズク……」


 ふらふらとしているレオンは何かを探すように視線をさまよわせ、そしてキズクと目があった。


「キズクゥゥゥゥ!」


 レオンがキズクに向かって走り出す。

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