ゲート攻略演習6
「リッカとノアは少し下がってて」
キズクを始めとして、リッカとノアも出ればコボルトなんて瞬殺だ。
しかし今はみんなで経験を積む場である。
キズクもあまり前に出るつもりはないし、今回リッカとノアにも見守りに回ってもらう。
リッカは明らかにつまらないという目をしているので、わしゃわしゃと撫でてご機嫌を取っておく。
「ほら、向こうも気づいたぞ。こちらで補助する準備はできているから好きに戦いなさい」
丁寧で細かく教えてはくれるが実際やるところは自分でやれ、というのがヤシマの方針である。
戦い方の基礎も授業では習っているのだからやってみろというのだ。
迫ってくるのは三匹のコボルト。
相手にも見つかった以上は相談している時間はない。
「俺が一体引きつける! ウエスギとレオン、ミスミとケンゴでそれぞれ一体ずつ相手するんだ!」
「なんでお前の命令を……」
「もうモンスターは目の前にいるんだぞ! 他にいい考えがあるなら文句じゃなくそっちを言え!」
「うっ……」
やはりというかレオンが反発した。
けれどももう目の前にコボルトが来ている状況で口論などしていられない。
キズクの叱責にレオンはたじろぐ。
「動け! 動かなきゃ死ぬぞ!」
モンスターは学生だからと手加減をしてはくれない。
シホも渋々といった感じでキズクの言うことに従って動き出す。
「ほっ、やっ!」
コボルトはどこかで拾ってきたような粗末な木の棒をキズクに振り下ろす。
キズクは木の棒を剣で受け止める。
今使っている剣はサカモトから受け取ったものである。
サカモトから受け取った剣は、真面目なサカモトを思わせるような遊びのないまっすぐな剣だった。
重さは軽めでありながらも丈夫で扱いやすい。
木の棒如きでいくら殴りつけられても折れるどころか、傷つきすらしないだろう。
受け止めた木の棒を押し返す。
キズクはオオイシとの鍛錬で多少覚醒者としても強くなっている。
コボルトを押し返すぐらい訳はない。
「ほっと!」
「うむ、出るまでもないな」
「私なら全部倒せるのに……」
万が一の場合はリッカとノアもキズクを助けるつもりだった。
キズクがサクッとコボルトを倒してしまったので、助ける必要は無くなった。
「他のみんなは……」
コボルトを倒したのでキズクは周りの様子を確認する。
「問題なさそうだな」
冷静そうなシホとケンゴを、少し緊張しているように見えるレオンとチトセを組み合わせた。
とっさの判断だったが、悪くなかったとキズクは我ながら思った。
シホとレオンの方はシホがあっさりと片付けてしまっている。
レオンとしては不服かもしれないが、コボルトを仲良く分け合って倒すというのも難しいので仕方ない。
ケンゴとチトセの方は上手く連携をとるように戦っている。
戦ってみると意外とケンゴの動きも固い。
結果として二人でうまくフォローし合うような形になっていたのだ。
「はあっ!」
「くらえ!」
連携もまだまだで、必死のコボルトに攻撃をかわされ続けていた。
ケンゴが剣で、チトセが槍と違う武器種なのも連携が少し慣れない理由かもしれない。
しかし偶然二人でコボルトを挟み込むように攻撃する形となって、コボルトは回避しきれずに斬り裂かれて倒れた。
「やった!」
「よっしゃ!」
コボルトが倒れて、チトセとケンゴはハイタッチして喜びをあらわにする。
出番がなくてレオンは不満そうだが、状況によって活躍できない人が出てしまうことはしょうがない。
「よくやってくれたな」
「全く手を出す必要もなかったね。流石だ。頑張ってくれた一班にみんな拍手」
意外とモンスターとも戦えそう。
キズクたちの戦いを見てみんなも自信を持ち始めた。
コボルトの顔と比べたら、リッカの顔って可愛いのだな。
そう思った生徒も意外と多かった。
「何か見られておるな」
「ご主人様意外に見られても嬉しくありません」
「まあそれはそうだな」




