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伝説級モンスターを育てて世界の滅亡を防ぎます〜モンスターが人型になれるなんて聞いてないんですけど!?  作者: 犬型大


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ゲート攻略演習3

「警戒すべきブラックゲート……よほど死にたいか、自信がない限りは…………逃げろ。レッドゲートは分かっていない限り避けられるものじゃない」


 ヤシマの目にどこか迫真めいたものを感じた。

 もしかしたらどこかでブラックゲートに接触したことがあるのかもしれない。


「今回は一般的なブルーゲート。中も調査済みでレッドゲートではない。さて……事前にゲート情報は配ってある。内容を確認して頭に叩き込むように言ってあるはずだ。フジタ、モンスターの種類は?」


「えっ? あっ……その……えっと」


 ヤシマに指名された生徒が口ごもってしまう。

 ちょっと不真面目な男子で、バスの中でもトランプでワイワイと遊んでいた。


 そんなふうに聞かれるだなんて思ってなかったのかもしれない。

 あるいはヤシマもちゃんとゲート情報を確認してなかったことを見ていたのかもしれない。


「浮かれる気持ちは分かる。常に緊張状態では疲れてしまう。だが常に気を抜いていてはいけない。必要な情報を頭に入れておくことで生存率は変わってくる。必要な時に気を抜けることと怠惰は違う」


「はい……」


 今もうゲートの前に立っている。

 必ずしも安全だと断言できない状況にあるのだ。


 万が一モンスターが出てくるような事態が起きても、どんなモンスターが出てくるのか分かっていれば、分かっていない時に比べて落ち着いて対処できるだろう。

 もちろん攻略する時だって、分かっているのと分かっていないのでは危険が段違いに変わってくる。


 どうしても事前に分からないこともあるが、分かっているのに知ろうとしないのは怠惰という他にない。

 もはや命がかかっている場なので、ヤシマも厳しさを見せる。


「ウエスギ、ゲートの情報は頭に入っているな? 出てくるモンスターは?」


「はい、コボルトです」


「ちゃんと確認しているようだな。魔力係数は319、十等級に当たるな。決して魔力係数も高くはない」


 ゲートの難しさというものは入る前にある程度推測される。

 どうやって推測するのかというと魔力係数という数値で判断する。


 通常、ゲートから入る前にゲートから漏れてくる魔力を特殊な機械で測定して数値化するということを行う。

 その数値が高いほどにゲートの危険性が大きくなっていく。


 十等級が一番低く、一等級が一番高い危険度である。

 今回のゲートは魔力係数が低く、十等級という危険度の低いゲートとなっていた。


 ブラックゲートは特一等級で例外になる。


「魔力係数、あるいは等級で危険かどうかを判断するのは危険だ。中の環境、モンスターの種類、あるいは戦うお前たち自身の人数や組み合わせ、相手との相性で危険度などいくらでも変わりうる」


 オオイシが話すと柔らかい雰囲気になるのだけど、ヤシマが話すとピリリとした雰囲気になる。

 言っていることも大事なのでみんなしっかりと聞いていた。


「ひとまず今日はゲートに入らない」


 えーっ! という声が何人かから上がる。


「まずは攻略に取り掛かる前準備。野営のためにテントを設営したり食事の準備に取り掛かる」


 アカデミーのカリキュラムはこうしたところで細かくていいなとキズクは思う。

 覚醒者と聞くとゲートに入ってモンスターを倒すというイメージばかり先行しがちだ。


 しかし攻略の前と後にもやるべきことは多い。

 都心部に近いゲートなら宿に泊まって攻略に向かうこともあるだろう。


 だがゲートが人里近くに現れてくれるとは限らない。

 泊まってから迎えるような場所にないことも決して少なくないのだ。


 時間の調整が難しく、到着することには攻略を始めるのに遅い時間になってしまうこともあるだろう。

 他にもゲートの中が広くて数日に分ける場合や詳細な調査が必要な場合もあれば、ゲートの攻略よりもモンスターを倒して回収することが目的で時間をかけて攻略することもある。


 そのような場合、都市部から遠いのになんの備えもなく攻略を始めたりしない。

 多くの覚醒者は事前の準備をしておく。


 今回キズクたちはテントを立てる。

 アカデミーが用意して、バスに積んできたものがある。


 他にも組み立てられるバーベキューグリルや鍋などの調理器具なんかもあってテントの後は料理もする。

 こんなことを一から丁寧に教えてくれるなんてことは珍しい。


 今なら大きめのバンのような車に乗ってきて車中泊とか、お金があるならキャンピングカーを使う人もいる。

 こうした事前準備をキャンプ的に楽しむ人だって一定数存在するものだ。


「これどうすんだ?」


「それ先じゃなくて、そっちに差し込んでからやるんだよ」


「なるほど。よく知ってんな」


 何組かに分かれてテントを立てていく。

 ヤシマやオオイシは聞かれない限りは手を出さず、生徒たちで試行錯誤している。


「君たちのところは早いね」


 鼻歌を歌いながらオオイシがキズクたちのところにやってきた。

 他の班は本格的なテントの組み立てに慣れないが、キズクたちのところはほとんどできてしまっている。


「みんなの手際が良くて」


「違うだろ! お前の指示が良かったんだ」


 ケンゴはピッとキズクのことを指差す。


「ふぅーん、やったことあるのかな?」


「……ちょっとだけ」

 

 今世では特にテントを立てたことはないが、回帰前は雑用もこなしていた。

 テントを立てることだってもちろんあったのだ。


 ないと誤魔化すのもおかしいのでやったことがあると言っておく。

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