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十九話

「そうだ。保護魔法がかかっている。イーヴィーに危険が迫った時に、守ってくれる。」


 そうなのね!お店で買った時に、魔法をかけて貰ったみたい。胸が歓喜で溢れる。私はリーヴァイに微笑みかけた。


「そうなんですね!ありがとうございます!」


 リーヴァイは笑顔を浮かべながらああ、と頷いた。


 お礼を言った後、私は目を瞑り、考える。一時的に抜けて来たけど、まだ仕事があるのよね。私は下を向き、時計を見た。そこそこ時間が経ってるわ。戻らないと。顔を上げる。私は緑色のスライムを撫でているリーヴァイに、声をかけたわ。


「リーヴァイ。」


「何だ?」


 銀色の目をこちらに向け、首を傾けるリーヴァイに私は話をした。折角来て貰ったのに悪いけれど、仕事があるからまた後にして欲しいこと。今日は仕事は早く、三時くらいに終わる予定と言ったわ。彼は眉を下げると、自分が仕事の日に来たことを謝ったの。私は首を横に振って気にしないで欲しいと言ったわ。彼は終わるまで村で過ごすって言ったわ。


「スライム達の相手もしていただけませんか?皆、リーヴァイに会いたがっていますの。」


 私はリーヴァイの肩で笑顔を見せている緑色のスライムを示した。スライムもいるので、近くにいるモンスターはリーヴァイに気付いてやって来るはず、と私は言った。


 私の言葉に、リーヴァイは笑顔で首を縦に振って肯定する。


「ああ、分かった。」


 それから、私はスライム達が家の近くの庭付近にいることを教えて、別れたわ。


 早く戻らないと。私は急ぎ足で仕事場に戻った。



 時間が経ち、三時。私は仕事が終わり、村の中心部へ向かった。そこで見かけた青い髪に、私は声をかける。


「リーヴァイ!」


「イーヴィー。仕事は終わったのか?」


 首を傾けるリーヴァイに、私はええ、と首を縦に振った。彼は銀の目を細め口元を緩めた。そうか、と頷く。


 それから、私達は私の家に向かった。中に入ると、私は待ってて、と言って、お茶の用意をしたの。お構いなく、と首を横に振るリーヴァイに、私はいいえ、と同じく首を横に振って否定した。辺りに紅茶の香りと、クッキー等の甘いお菓子の香りが広がる。それに心が躍り、口元が緩んだ。リーヴァイも美味しそうだな、と微笑む。それから私達は紅茶の入ったカップやお菓子を手に、話をした。


 最初家に招こうとしたら、リーヴァイが首を縦に振らなかったのよね。昼間とは言え一人暮らしだし、自分は男だから、って。気を遣って遠慮しているの。村の友人も男女気にせずに招いている。気にしなくて良いわ、と言うと、彼は眉間に皺を寄せながら頷いた。思わず少し笑ってしまったわ。リーヴァイは不満そうに銀の瞳をこちらに向けていたけれど。


 改めてお祝いに来てくれたことと、ネックレスへのお礼を言ったわ。リーヴァイは微笑んで頷いてくれたわ。


 リーヴァイに聞いたら、今日は村に泊まって、明日仲間のところに戻るらしいわ。さっき、宿を取ったらしいの。そうなのね。思わず笑みが漏れた。村の人達は勿論、モンスター達も喜ぶわ。勿論、私も。


 それから、合格してから今までのことを話したわ。村人総出で祝ってくれたことを言うと、良かったな、と言ってくれたの。そうね、ありがたいわ。私もええ、と笑顔で頷いた。


 私は紅茶を口に含んでから、昨日のことに触れた。


「昨日、王宮魔術師が尋ねて来たんです。」


 リーヴァイは息を呑んだ。銀の目は驚きに見開かれている。彼は考え込むように顎に手を当てたわ。鋭い視線でこちらを見ている。


「王宮魔術師が……。何の用事だ?」


 私はそれにふ、と目元と口元が緩む。手を下ろし、目を瞬かせるリーヴァイ。私は胸の前に手を組み、弾むような大きい声で答えたわ。


「モンスター達をミーハナブル領から転移させてくれたんです!これからはモンスター達も一緒ですわ!感激ですわ!」


 嬉々とした声で言う私に、リーヴァイは顔を伏せ、そうか、道理で……、と言った。そして顔を挙げ、笑顔を向ける。


「イーヴィーはモンスター達のことを気にしていたからな。……良かったな。」


 私はそれに満面の笑みを向けた。


「はい!」


 少ししてから、我に返ったわ。頰が少し熱くなる。私はクッキーを摘み、口に入れたわ。甘い味が口の中に広がる。美味しい。数回咀嚼した後、紅茶を一口飲んだ。前を見ると、リーヴァイも紅茶を啜っていたわ。再び私は話し出す。


 上位と分かる男性魔術師の名前を出すと、リーヴァイは合点がいったようにあの人か、と頷いたわ。


「知っているんですね。」


 私が目を向けると、彼はまあ、と頷いた。そして、眉を下げて苦笑する。目には同情の色が浮かんでいたわ。


「有名人だからな。俺も直接は会ったことはないが、見かけたことはある。……何と言うか、凄みがある人だ。緊張したんじゃないか?」


 こちらを窺う彼に、ええ、と頷いた。それでも、と口元が緩んだ。


「ケセランパサランを連れていましたし、お願いしたら見せてくれました。途中から緊張が緩みましたわ。」


 リーヴァイは驚いたように銀の目を瞬かせる。そして、苦笑した。


「そうか。イーヴィーも見たんだな。」

 

 リーヴァイは上位の魔術師だけでなく、ケセランパサランを連れていることでも有名だと言ったわ。私は成る程ね、と首を縦に振った。


 そんな私をリーヴァイはじっと見つめたの。何かしら?首を傾げると、彼は口を開く。


「ちなみにあの人もドラゴンと契約している。」


「そうなんですの!?」


 身を乗り出す私に、リーヴァイはやや身を引きつつああ、と頷いたわ。そんな彼の様子に、私は椅子に座り直してから、目を向ける。きっと私の目は爛々と輝いているに違いないわ。彼はそんな私にやや口元を緩めながら口を開く。


「契約してるのは、レッド・ドラゴンだ。」

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