十二話
王宮ではドレスに着替えることになったの。今日は泊まって、明日謁見することになるらしいわ。見てすぐにとても高価だと分かるドレスに固まった。貴族とは言え、ここまでのは着たことがないわ……。そんな私を見て、侍女は首を傾げたの。明日の謁見の時のドレスの方がもっと豪華、って言われたの!国王様や王妃様に会うからって。衝撃が走ったわ。
当日のドレスは普段よりも装飾や生地、デザインなどが豪華だったわ。アクセサリー等も付けることになったし……。背筋が伸びた。胃が痛くなって来たわ……。
そこから国王様や王妃様に会ったの。緊張から変な動きになりそうになったけれど、何とか耐えたわ。
スミニアナ王国の国王様や王妃様とはブレーズ王子の婚約者候補だった時に会ったことがあるけれど、候補から外れてはあまり会わなくなったもの。最近は遠くから見かけるくらい。
会ったことのない国王様達と会って、緊張しないはずがないわ。
国王様は話の中で、スミニアナ王国の国王様から連絡が来て、学園が何が合ったかは知っている、と言っていたわ。大変だったろう、同情する、と言ってくれたの。まさか国王様達が知っていて、そんな風に言ってくれるとは思わなくて、目を見開いたわ。
そして、私にこの国で侯爵の爵位を渡す、と言ったの。領土は急に用意するこは難しいから、我慢して欲しいと言われたわ。
私は最初申し訳ないと言って断ったのだけれど、国王様達はそう言う訳にはいかないと首を縦に振らなかったの。
結局、侯爵の爵位を貰って、領土はこの国での様子を見て、と言うことになったの。
国王様はブレーズ王子達やあの伯爵令嬢達犯人がどうなったかを教えてくれたの。
ブレーズ王子や騎士団長の息子と言った攻略対象の男子達は、卒業してから一定期間謹慎処分になるみたい。仕事以外では家に謹慎らしいわ。ブレーズ王子は一定期間王国の仕事行わず、教育を受け直すの。王子としての仕事に付くのは早くて半年、遅くて一年以上先みたいよ。
ブレーズ王子達は気に食わないけれど、スミニアナ王国が潰れて欲しいわけじゃないわ。信用は多少落ちたかもしれないけれど、頑張って、って感じね。ただスミニアナ王国には家族や友人がいるから、特に王子に関しては心配だわ。彼が次期国王で大丈夫かしら……。
ティフィーに嫌がらせをして、私に罪を擦り付けた犯人達に関しては、処分は色々みたい。伯爵令嬢は主犯だとバレて、退学になるらしいわ。彼女は貴族の爵位を剥奪されてしまうの。王国の端の地方で平民として暮らすことになるわ。一定期間、奉仕活動することが義務になるの。肩身が狭いし、暮らすのは大変でしょうね。幾ら何でも死ぬことはないとは思うけれど。
国王様は主犯について、そして王族関係のことだからか、特にブレーズ王子に関しては詳しく教えてくれたわ。ティフィー達や他の犯人達については、後で返事が来たら友人達に聞いてみようかしら。
魔術師として働くつもりであると言ったら、王都での試験を受けることを勧められたの。アーマルズ王国に住んでいるし、爵位も受けるから、試験を受けられるみたい。考えておきます、と答えたわ。その後も色々な話をしたわ。
話の中で、今住んでいる村での生活を聞かれたの。村の人達は親切だし、何とかやっていけていると答えたわ。
話の流れで貴族の時に着ていたドレスとかはあり過ぎても荷物になるので、大部分を置いて来たことを伝えたの。そうしたら、帽子なども含め何セットも用意されそうになったの!遠慮したら、三セットだけ貰うことになったの。帰りの馬車に積んで貰えるみたい。王宮で着たドレス等も持って帰って良い、とまで言われてしまったわ。昨日に、今日、謁見の時。三セットもあるのに!?申し訳ない、と断ると、謁見の時に着たドレス等だけでも、持って帰ることになってしまったわ……。
私がお礼を言って頭を下げると、気にしなくて構わないと二人とも笑っていたわ。
暫くして、謁見が終わった。最後には出来る限り支援すると言ってくれたの。もう一度お礼を言って頭を下げた。
その日は王宮に泊まって、村に帰ることになったの。
帰って来たら、村の領主である地方貴族も来ていたの!王宮の使者が来たと言うことを手紙で知って、慌てて駆け付けたみたい。違う領に出ていて、私が出発した後に到着したみたいだけど。貴族と村人に質問責めにあったわ。私が貴族だったことがバレてしまった。
侯爵の爵位を受けたことを伝えると、村の人達は顔を見合わせてどう接したら良いか悩んでいたわ。今まで通りで構わない、と言うと、皆安堵のため息を付いていたわ。
貴族は顔を強張らせていたわ。身体が微かに震えている。私を見る鋭い視線には威嚇と怯えが混ざっている。他国の元とは言え貴族が来て、自分の管理している村で暮らしていたんだから、仕方ないわね。更にその女が自分よりも爵位の高い女侯爵の爵位を貰ったんだもの。乗っ取られないかと言う心配をしていることが表情からすぐ分かったわ。
私はそんなつもりはないのに!
私は無用の心配だと声をかけようとしたわ。するとその様子を見ていた騎士達が手を挙げて私を静止したの。こちらを見る視線に、彼等に任せることにしたわ。貴族は彼等に声をかけられて、安心したみたい。強張っていた表情が緩み、こちらを見る視線から鋭さが消えたわ。
良かったわ。ここで住む上で、領主との確執があったらやっていけないもの。
家に帰ると、着替えて白い布に上半身を埋め込んだ。全身の力を抜く。ふかふかの柔らかい感触が私の顔を包む。私は深いため息を付いた。
疲れたわ……。
◇◇◇