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scene5 見果てぬ夢……

 家に帰り着くと職場から連絡があったのか、両親が心配してくれた。だけど………


『ちょっとめまいがしただけだから大丈夫……』


 そう言って園長達から自分の保育について注意を受けた事は、黙っていた……。


 両親は、私が保育士として働くことをとても楽しみにしていた。その事を身近で感じていた2人……そんな私の保育が働き始めて早々『杜撰だ』と言われたなんて……とても言えない……。


 その日の夕飯は、私の好きなハンバーグだった。お母さんが私を元気づける為、その日の献立を変えてくれたみたいだったけど……食欲が無く半分も食べきれなかった。


『ごめんなさい……』


そうお母さんに誤って自分の部屋へ。


 ベッドに横たわると……どうしても考えてしまう。園長先生に言われた『杜撰』と言うフレーズ……そしてその横で大きく頷く主任の姿が……まるでスクリーンに映る映画を観てるように頭の中に映し出される。


 だから私は、その言葉を思い浮かべないように、心の中で自分に言い聞かせた。


『クラスを外されても子ども達と会えなくなるわけじゃない、どういった形でも子ども達と毎日会えるならいいじゃない』


 そう言い聞かせた……。



【そして……私は壊れた……】


 次の日の朝。いつも通り目覚まし時計の音で起きる。目を開けて天井を見つめながら思った。


(昨日の事……夢じゃなかった、現実だったんだ……)


 夢であって欲しかった……と手で顔を覆い仰向けのまま、大きくため息をついた。


 そして起き上がり机の前に座り鏡を見る……。


「酷い……顔……」


 そう呟き身支度を始める。

 

 着替えを済ませ、再び鏡の前に座り、髪をとかして縊ってお団子にする。そして薄く化粧をしてリップクリームを塗って……鏡に映る酷い顔の自分に向かって呟く……。


『頑張れ私…』


 頬を『パンパン』と叩きリビングに降りる。


「おはよう」


 両親が朝の挨拶をする。


「おはよう……」


 私も挨拶を返す、返しでお母さんが心配そうに『大丈夫?』と聞いてくる。


(2人に心配かけちゃいけない……)


「うん、大丈夫だよ!」


 精いっぱいの笑顔で返した。


 朝食は、いつも通りご飯とみそ汁と目玉焼きにウィンナー、それと今日は私の大好きな苺が添えてあった。


 でもやっぱり食欲がなかったので、ウィンナーと苺だけ食べる。


「じゃぁ行ってくるね……」


「いってらっしゃい……」


 心配そうに見送る両親……。


 私は、リュックを背負い玄関へ向かう。土間に座ると靴が見当たらない。多分私が昨日無意識に下駄箱へ片付けたのだろう。下駄箱を開け靴を取り出し下に顔を向けた。


すると『ポツッ』と靴の横に雫が落ちた。(えっ? 何)と思った瞬間、私の両眼から止めどなく涙が流れだした。


(えっ? えっ? 何これ? 涙? 私泣いてるの? どうしちゃったの涙が止まらない!?)


 そう思った瞬間、急に体が震えだし脚の力が抜け、玄関にうずくまり大きな声を上げ、号泣を始めてしまった。


「ウワァーン! ワァーン! アウ、アウッ!」


 驚いた両親が玄関に飛んできて私を宥めようとした、お母さんは私を抱きしめて耳元で何か言ってくれてるけど聞こえない! 泣きすぎた子どものように嗚咽が止まらなかった!そこからの記憶は曖昧だ。息が……息が出来なくて


『お母さん助けて』


と思ったのをかすかに覚えている。


そのまま意識が遠のいていった私は、

すぐに救急車で病院に運ばれた。


 救急車の中で『保育園に行く、子ども達が待ってるの……』とうわごとのように言っていたらしい。


 病院に運ばれ、事なきを得た私。その後、検査をしたけど、どこにも異常はなかった。


 自分ではなんとなく分かっている。自分の中に押し込めていた感情がこんな形で表に出てしまったって。


 でも今回の件で、精神的にダメージを受けた私は、病院から帰った次の日から家の外に出る事が出来なくなってしまった。


 そしてそれだけではなく、人と話す事にも恐怖を感じてしまうようになった。そしてテレビも見れない、携帯電話もパソコンも怖くて使うことができなくなってしまった。


 私は、しばらく休職した後、そのまま園に……職場に行く事なく退職した。


scene6へ…つづ……かないかもしれません……ごめんなさい…


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