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scene23 超絶美形男子? 現る 

海への二人っきりのドライブから数か月。彼が帰り際に言った通り、ここに来るどころか電話も掛かって来ない、それほど忙しい日々を送っているのだろう。


あの日、別れ際に彼が言ってくれたあの言葉……とても嬉しかった。嬉しかったけど、やっぱり私とは、何もかもが違う、違いすぎる! 考えれば考えるほど迷いが出てくる。考えるな私!


そうして私は、余計な事を考えないように、仕事に集中した。


「きみちゃん、どうしたんだい? 眉間にシワなんか寄せて、なにかあったのかい?」


「なんにもありませんよ、なんか変ですか?」


「クスクス……いや、なんにも……変じゃないよ、きみちゃん!」


薄ら笑いをしながらどらさんが言った。


【東京からの使者】


いつものお昼時、お店の中は、スーツを着たサラリーマンさんやOLさん、作業服を着た人達でお店の中は、ごった返していた。今日の私のシフトは、どらさん、村田さんと厨房担当だった。3人でひっきりなしにくる注文をフル回転でさばいていた。


そしてようやくお昼の混雑時のピークを過ぎ、交代で休憩に入る事が出来た。昼食を済ませくつろいでいると、カウンターにいる内藤さんから呼ばれた。


「きみちゃぁぁん、お客様よ!」


(私にお客? 誰だろう?)


そう思いながら表に出て行くとカウンターの前に男性がこっちに背中を向けて立っていた。


「おまたせしました!」


私が声を掛け、振り向いたその人は、黒い細身のスーツと真っ白いシャツに朱色のネクタイ、すらっとした長い脚で身の丈175センチぐらいかな。髪型は短めで金髪、例えるのなら宝塚の男役のような超絶イケメン! この方もこの近辺では絶対お見掛けすることがないような出で立ちだった。


その人と目が合い、軽く会釈をするとその方も会釈を返しながら胸ポケットから小さいケースを出し、そのケースから名刺を一枚取り出すと私に差し出し自己紹介を始めた。


「初めまして君子さん。私、ライジングサンプロダクション統括マネージャー兼社長秘書を務めさせていただいております上妻真咲と申します、以後お見知りおきの程、よろしくお願い致します」


「は、はあぁ……」


私は手にした名刺をじっと見た。確かに『ライジングサン プロダクション 統括マネージャー兼第一秘書 上妻真咲』と記してあった。


(この人……男性の割には顔ちっちゃくて肌が白くて凄く綺麗……声もなんか……男性にしては高いし……『彼』か『彼女』か……わからない……どっちだろう?)


そう考えながらその人の姿を上から下へ何回も見直していると……それを察してか笑みを浮かべ、俯き右斜め45度の目線で髪をかきあげながら……


「ふっ……私は、女性ですよ」


かっこよく返され、私は顔が赤くなるのが自分でもわかるくらい恥ずかしくて……


「あっああぁぁ……そういうつもりじゃぁぁぁ……す、すみません……」


と思わず俯いて誤ってしまった。


【社長からの招待】


それから上妻真咲さんが話を始めた。


「今日ここに伺ったのは君子さんにお話……いや、お願いがあって伺ったのです。この後お仕事の終わる頃に出直して参りたいと思います。何時に伺えばよろしいでしょうか?」


すると、どらさんが


「裏の休憩室を使っていいからそこで話をするといいよ、今からの時間どうせ暇なんだしさ!」


そう言ってくれたので何故か村田さんが横から入って来て真咲さんを休憩室に案内した。


そして二人で向かい合ってテーブルに座ると、すぐに内藤さんがお茶を用意してくれた。そのお茶を一啜りした後、真咲さんが今日ここに来た理由について話を始めた。


「君子さん、誠に急な話ではありますが再来週の週末、千隼が主演する映画の完成披露試写会に是非、貴方をご招待したいと、社長が申しておりまして……そのご案内に伺った次第でございます」


「千隼が主演する映画?」


そう……この映画の撮影は、私が卒業した大学を使って行われ、千隼と初めて会った場所でもあった。彼との初めての出会いは余りにも最悪で、ここで私は千隼から酷い言葉を浴びせられ体調を悪くした。あまり思い出したくはないけれど、今はもう何とも思っていない。


「何故私が? もしかして千隼さんが無理を言っているのではないでしょうか?」


「いいえ今回、このご招待の件に関しましては、千隼本人は一切関わっておりません。ご招待するのは我が社の社長です。あなたに辛い思いをさせてしまった、せめてもの罪滅ぼし……という思いもあるのかと存じます。無論、全ての費用は、こちらで負担させていただきますし、ご希望がございましたらご家族、ご友人何人でもご同行されて結構でございます」


(千隼がいる東京へ……会いに行けば……答えを……返事をしなければいけなくなる……私のこの中途半端な気持ちのまま、会いに行っていいの?)


そう思いながら 私が俯いて考え込んでいると『ガラガラガラ!』と戸が開き、幕内三人衆が捲し立てた。


「行っておいでよ、きみちゃん! 彼の事好きか嫌いか分かんなくなってんだろ?」


「そうだよ! 行ってはっきりしてきなよ!」


「そうですよ! 行くべきです!」


三人衆の後押しがあってか、私は、試写会に……東京に行く事を決めた。


東京に行くにあたってひとつだけ真咲さんにお願いをした。それは、試写会での私の座席を真咲さんが掲示した関係者席ではなく一般招待者の席にしてもらう事だった。


そして家に帰ると両親にこれまでの事を……大学であった出来事、そしてそこで加藤千隼に出会い、告白されその返事に悩んでいる事を話した。二人とも少し心配そうな表情をしていたけど最後には『行っておいで君子!』と快く言ってくれた。



scene24へ……私……飛行機怖い

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