仲間を求めて
ボブゴブリンとの戦いで心身ともに疲れ果てたマコトは、ダンジョンの出口へたどり着いた。
彼の息遣いは荒く、全身の痛みが彼の身体能力の限界を知らせていた。
ダンジョンの外に出ると、現実世界の静かな空気が彼を迎え、マコトはようやく緊張を解くことができた。
「まさか、あんなに強いなんて…」
マコトはうつむきながら独り言をこぼした。
初めてのボス戦で負けを喫し、自分の未熟さを痛感したのだ。
「もう少し準備してから挑戦するべきだったか…」そう思いつつも、悔しさと情けなさが胸の中で混ざり合い、マコトはどうにも気持ちが収まらなかった。
「まずは武器屋に寄って、体を休めなきゃな。」
マコトは心の中でそう決め、重たい足を引きずるようにして武器屋へと向かった。
武器屋のドアベルがチリンと鳴り響く。
いつもならこの音がマコトの心を軽くするのだが、今日は違った。
彼は無言で店内を見渡し、カウンターの向こうに立っている人物に目をやる。
「いらっしゃいませ!」
元気な声が響き渡った。そこに立っていたのは、マイ先輩だった。
彼女はこの武器屋で働いており、マコトにとって頼れる存在でもあった。
「お、おいマコト!どうしたんだ、そんなボロボロの姿で…!」
マイは驚きと心配の入り混じった表情で駆け寄ってきた。
「えっと、ちょっと…ダンジョンでやられてしまって…」
マコトは苦笑いしながら説明したが、その声はどこか弱々しかった。
「やられたって、どこで?もしかしてボスに挑んだの?」
マイは真剣な眼差しで彼を見つめた。
彼女はその経験から、ボス戦の危険さを十分に理解していた。
「ボブゴブリン…強すぎて、手も足も出なかったよ…」
マコトは肩を落としながら言葉を続けた。
「もっとレベルを上げないと無理だと思った。」
「それは無茶だったわね。でも、そんなに落ち込まないで。」
マイは少し笑って、彼の肩に手を置いた。
「まだ初めてなんだから、誰だって失敗するものよ。それに、君にはまだ可能性があるんだから。」
「でも、もう少し準備してから挑戦するべきだったんだ。少し無謀だったかもしれない…」
マコトは自分を責めるように呟いた。
「そんなことないわ、マコト。無謀かどうかは結果でしかわからないのよ。大切なのは学ぶこと。」
マイは彼に優しく言った。
「そう…かな。」彼は少し顔を上げ、マイの言葉を受け入れようとした。
「とりあえず、今は体を回復させるのが先よ。これ、サービスだから。」
そう言って、マイはポーションを取り出し、彼に差し出した。
「えっ、でも…いいの?」マコトは驚いた様子で、ポーションを受け取る手をためらった。
「いいのよ。大切なお客様だからね。」
マイは微笑んでポーションをマコトに押し付けた。
「ありがとう、マイ先輩。」
マコトは感謝の言葉を口にしながら、ポーションを飲み干した。
すると、体の中から温かい力が湧き上がり、疲れた筋肉が回復していくのを感じた。
「これで少しは元気になった?」
マイは笑いながら尋ねた。
「うん、すごく楽になったよ。本当にありがとう。」
マコトは力強く頷いた。
「それにしても、ボブゴブリンか…あいつは1人じゃちょっと厳しいかもね。」
マイは考え込むように視線を遠くに向けた。
「次は誰か仲間を連れて行ったほうがいいわ。」
「仲間か…」
マコトはその言葉に反応し、少し考え込んだ。
これまで1人で挑むことにこだわっていたが、今日の経験が彼に新しい考えをもたらした。
「確かに…1人じゃ限界があるかもしれない。」
マコトは小さく頷いた。
「次は仲間を増やして、もう一度挑戦してみるよ。」
「そうね、それがいいと思う。」
マイは再び微笑んだ。
「それで、誰か心当たりはあるの?」
「うーん…まだ誰にも声をかけてないけど、幼馴染や友達がいるし、きっと誰か手を貸してくれると思う。」
マコトは少し考えながら言った。
「そうならいいわ。仲間と一緒なら、もっと強くなれるわよ。」
マイは自信満々にそう言った。
「ありがとう、マイ先輩。次はきっと勝つよ。」
マコトは決意を新たにし、彼女に感謝の意を伝えた。
「その意気よ、マコト君。私も応援してるから、頑張ってね。」マイは励ますように声をかけた。
「うん、頑張るよ。」マコトは笑顔を見せ、武器屋を後にした。
武器屋から出たマコトは、新しい決意に満ちていた。
彼は今度こそボブゴブリンを倒すために、仲間を見つけることを第一に考えた。
「次は誰に声をかけようかな…」
マコトは幼馴染や親友の顔を思い浮かべながら、街を歩いていった。
心の中で新しい冒険への期待と、自分自身の成長への希望が交錯していた。
「まずは準備だ。仲間と一緒なら、きっともっと強くなれる。」
彼はそう自分に言い聞かせながら、一歩一歩を力強く踏み出していった。
次の挑戦は、ただのリベンジではない。
新たな仲間と共に、自分を強くするための戦いだと彼は感じていた。
そして、そのための最初の一歩が、今まさに踏み出されたのだ。
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