来る、ダンジョン!
2030年、ある日突然、世界はその均衡を大きく崩す出来事に直面した。
何の前触れもなく、世界中の至る所に無数の「ダンジョン」と呼ばれる異次元への入り口が出現したのだ。
そのダンジョンは初め、ただの奇妙な建造物や異空間への入り口として捉えられていた。
しかし、好奇心から入った者たちはすぐに恐ろしい事実を目の当たりにすることになる。
ダンジョンの中には、現実世界とは異なるモンスターが徘徊し、命を奪う危険に満ちていたのだ。
最初は何人もの冒険者が帰らぬ人となった。
ダンジョンの存在は次第に世界中に広まり、恐怖の対象となっていった。
しかし、一部の勇敢な者や、より大きな力を渇望する者たちは、その恐怖に立ち向かい、ダンジョンに挑戦する道を選んだ。
彼らはモンスターを倒し、生き延びることで自らの力を強化していった。
そう、ダンジョンに入った者は、倒した敵から「経験値」と呼ばれる謎のエネルギーを得て、能力を向上させることができたのだ。
この現象は、かつてのゲームの世界が現実になったようなものだった。
やがて、人々は「冒険者」としてダンジョンを探索し、力を得ることを一種の職業として捉えるようになっていった。
彼らの中にはその力を悪用し、暴徒となる者も現れ、都市で破壊や略奪を繰り返す。
だが、その一方で、正義を志す者たちが集まり「自警団」として人々を守る存在へと成長していった。
「ダンジョンに入ったら、誰でも強くなれるらしいよ」
友人たちの会話が耳に入るたび、マコトは心の中で胸が高鳴るのを感じていた。
テレビでも、ネットでも、今やダンジョンは日常の一部となり、冒険者や自警団の活躍が連日取り上げられていた。
誰もがダンジョンで得た力に夢を抱いていたが、それは命をかけた過酷な挑戦であり、失敗すれば二度と戻ってこれないことも珍しくなかった。
「強くなりたい…」
マコトは小さい頃から正義の味方に憧れていた。
スーパーヒーローが悪を倒し、弱者を守る姿に感動し、いつか自分もそんな存在になりたいと思っていた。
そして、ダンジョンが出現し、自警団が活動を始めるようになると、彼の目標は自然とそこに向かっていった。
しかし、まだ中学生だったマコトには、ダンジョンに挑む資格はなかった。
だが、彼は高校生になり、ついにダンジョンに挑戦できることになった。
ダンジョンに入ることができる自分――そのことに気づいた時、マコトの胸の中で燃え上がる何かがあった。
「俺も、行くしかない」
自警団に入り、誰かを守る存在になる――それが健太の夢であり、彼の決意は日に日に強くなっていた。
その日、マコトはいつものように学校へ向かった。
クラスでは友人たちがダンジョンの話で盛り上がっている。
誰かの兄がダンジョンに挑戦したという話や、有名な冒険者が次の階層に進んだというニュースが飛び交っていた。
「なあ、マコト。お前、ダンジョンに行く気はあるのか?」
突然、親友のタケシが話しかけてきた。
彼もまた、ダンジョンに興味を持っている一人だった。
「俺か?まあ、行きたいけどな。簡単なもんじゃないだろ?」
マコトは少し照れくさそうに答える。
実際、彼の中には大きな不安があった。
ダンジョンには恐ろしいモンスターが待ち受けており、油断すれば命を落とす危険がある。
しかし、それ以上に、彼は自分が本当にその世界で戦えるのかという疑問を抱えていた。
「でもよ、マコトならできると思うぜ。お前、昔から根性あるしな」
タケシの言葉に、マコトは思わず笑みをこぼした。
「そうだな、根性だけはあるかもな。でも、根性だけじゃどうにもならないこともあるだろ」
二人は笑いながらも、心の奥ではそれぞれの覚悟を固めつつあった。
ダンジョンに挑むということは、ただ強くなるだけではなく、自分自身と向き合う試練でもあった。
その夜、マコトは家のベッドに横たわりながら天井を見つめていた。
心の中で決意が固まりつつあった。
「やっぱり、行くしかない」
彼の脳裏には、ダンジョンで戦う自警団の姿が浮かんでいた。
力を得て、誰かを守る存在になる――それはマコトにとって何よりも大きな目標だった。
「でも、本当に俺にできるのか…?」
弱気な自分が顔を出す。
ダンジョンには実力者が集まる。
自分のような普通の高校生がその世界で通用するのか、そんな不安がよぎった。
しかし、同時に強い決意がマコトの心を突き動かす。
「やるしかない」
結局、答えはそれしかなかった。
自分の力を信じ、挑戦しなければ何も始まらない。
マコトは心の中で何度も繰り返す。
翌朝、マコトは決意を胸に秘め、家を出た。
今日は決めていたことがあった。
それは、初めてのダンジョン挑戦に向けて、武器を手に入れることだ。
家からそれほど遠くない場所にある小さな武器屋。
そこは、冒険者たちが装備を整えるために訪れる場所だった。
マコトも、その店に何度か足を運んだことがある。
扉を開けると、店内には様々な武器が並んでいた。剣、槍、弓、盾…。
どれも光を放ち、使い込まれたような風合いを持っている。
「お、マコトじゃん」
奥から現れたのは、武器屋の先輩だった。
先輩は少し年上で、すでにダンジョンを何度か経験している冒険者だった。
「初めてダンジョンに行くの?」
「はい、ついにその時が来たみたいです」
「そっか。だったら剣がいいんじゃない。扱いやすいし、まずはそれで慣れることだね」
マコトは言われた通り、剣を手に取る。
手にしっくりと馴染む感触があり、これなら自分にも扱えそうだと感じた。
「ありがとうございます、先輩」
「まあ、最初は無理するんじゃないよ。生きて帰ってこそ、強くなれるってものよ」
マコトはその言葉を胸に刻み、剣を手にダンジョンへと向かう。彼の冒険が、今、始まろうとしていた。
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