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第3話

   

 ハッとして振り返れば、部屋の入り口に一人の男が立っていた。

 シンディと同じくらいの年頃の若者だ。魔法の杖を手にしているが、警備の魔導士ではないだろう。

 着ている寝巻は、デザインこそシンプルだが素材は高級品。金髪碧眼は王族に多いと言われている身体的特徴であり、そもそもここは王族が寝泊まりする建物の中なのだ。寝ていた王族の一人が賊の侵入に気付いて駆けつけてきたに違いない。


「第八王子のチャールズ……」

 相手の正体を悟って、シンディがその名前を口にする。

 直接対面するのは初めてだが、庶民の間でも王様や王子、王女たちの顔写真くらいは出回っているので、彼女も見たことがあったのだ。

 シンディは今、不思議な感覚にとらわれていた。まるで雷に打たれたような衝撃が全身を駆け巡っており、全く体を動かせないのだ。

 十代になったばかりの乙女だった頃、近所のハンサムなお兄さんに一目惚れした時も、同じような衝撃を受けた覚えがあるが……。

 そんな小娘でもあるまいし、まさか王子に「一目惚れ」なはずもない。今や『黒い蝶々(ブラック・バタフライ)』と呼ばれるほど、立派な女怪盗となったシンディなのだ。

 ならば、この衝撃は何なのか。一瞬「運命の出会い」という言葉が頭に浮かぶけれど、自分と王族に「運命」的な繋がりがあるはずもない。あるいは、王族の体からは高貴なオーラが滲み出ており、それに当てられたのか……?


「そうだ。僕はチャールズ、この王国を()べる一族の王子の一人だ。その僕に対して名乗りもせず、質問にも答えないというのは、失礼ではないかね?」

 改めて問いかけられて、シンディは再びハッと我に返る。

「私は……」

 ついつい素直に名乗ろうとして、慌てて思い(とど)まった。自分は王宮に盗みに入った賊なのだから、その正体は絶対に秘密ではないか。

 代わりに「質問にも答えないというのは」の方に応じることにした。王子が言っている「質問」というのは、先ほどの「『シルヴェーヌとガラスの靴』の話くらい、君も知っているだろう?」のことだろう。

「ええ、知ってるわ。可哀想な庶民の娘が、お城の舞踏会へ……って話でしょう? 子供向けのおとぎ話よね?」

 と返しながら、小さい頃に絵本で読んだ話を頭の中で再確認する。

 大雑把なあらすじとしては……。

   

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