恋のバカンス
四日後にはアイスクリーム屋の面接を受けた。店長は若い女性で、面接は手狭な事務室で行われた。高校生も多いのだという。初めてのアルバイトにとても緊張していた。
そんな日の昼下がり、ナミと母はホテルの屋上でアイスクリームを食べていた。母は溶けたバニラアイスをスプーンですくいながら、こちらを窺って、何か言いあぐねている。
「会ってほしい人がいるの」
恋人ができると母はそう言う。きまって満ち足りた様子で。
内心ギクリとするのだけれど、眉ひとつ動かさず、
「どんな人?」と、興味を示す。
今年も恋のバカンスがやってきた。母の恋がいつ巡ってくるのか、ナミにはわからない。相手だって様々で、フリーで活動するジャーナリストやヴァイオリニスト、「普通の」サラリーマンだという人、とにかく、彼らが長続きすることはなかった。そういうのが「大人の恋」というものらしい。気づまりではあったけれど、新しい人たちと過ごすバカンスは楽しくもあった。恋人たちはスパイスのようなものだ。母の恋に、ナミは息苦しく感じながらも、それはそれで良いと思っている。自分だったら、大人になっても恋人を取っ替え引っ替えしない。でも、自由で気楽な恋愛があってもいい。