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ランドリールーム
中庭からホテルの薄暗い一室に戻った。室内はシンとして散らかっている。半開きのカーテンや、ベッドの上に放りっぱなしの洋服。一度も開いていない文庫本。壁にかかったアルフォンス・ミュシャのポスターは斜めっている。そろそろ片付けなければならなかった。
この部屋にはルームサービスが来ない。だから掃除だって自分でする。掃除道具のしまってある場所も知ってる。スタッフしか立ち入れない地下室東側の部屋。洗濯は一階のランドリールームで。たまに下着泥棒が出没するので、洗濯する時は終わるまで待っていなければならない。白いプラスチックの椅子で、本を読みながら待つ。壁も床も洗濯かごも、ドラム式の洗濯機まで、何もかも真っ白な部屋で、「アンナ・カレーニナ」やアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」、「赤毛のアン」シリーズを読む。そうすると、白い壁がロシアの雪原や、遠い異国の大海原に変わる。