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ほほえみ

 ホテルでの三人の奇妙な同居生活が始まった。母は幸せそうで若々しい。ナミは母とその恋人を避ける。義父は賢明だった。丁寧だけれど、冷ややかな、突き放すような態度を取る。それで、ナミは義父に媚びを売らなくてよくなった。母の浮かれた顔さえちらつかなければ、気持ちのいい人でさえある。


「今度、友だちがホテルに泊まりにくるの。近くで花火を見に行くから」

 週一の三人そろっての食事、ナミが切り出した。


「へぇ、このホテルに泊まるの?」

 母がパスタをフォークでクルクル回しながら聞く。ナミのお皿にはバジルが丁寧により分けてあった。


「うん、ちょっとだけ。いいでしょ、ママ。私だって友だちが必要だもの」

 ナミは有無を言わせぬ口調で言う。

 そうした口調は、たとえば半年前にプロポーズして母が断った時や、ホテル経営は二人の共同でするのだと決断したときにそっくりだった。思わず義父が、目を細めてナミを見やるほどに。同じ血なのだ。


 母は特別反対しなかったし、それ以上くわしく聞こうともしなかった。ナミは思わずほくそ笑む。テーブル越しに義父と目があった。微笑をおくる。

母は窓を開けにいっていた。蛾がまいこんでくる。虫の声がきこえた。


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