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ひたいの皺
ホテルの屋上で母の恋人に会った。五十がらみの痩せても太ってもいない、中肉中背の男だ。日焼けしているが、シミやシワはない。
ナミがレインボーの横縞のタンクトップで屋上に出ると、男は涼しい目をしてテーブルに座っていた。母は白い美しい手を頬に当てて、にこやかに恋人を見つめている。年上の恋人たちは午後一番の白い陽射しをあびて、輝いていた。ナミはけれど、男の額にしわが浮き出ていたのを見逃さなかった。
「ナミ、来て座って。ママのお友だちよ」
母がゆったりとした声で言う。
「こんにちは」
ナミが軽く会釈して男に笑いかける。目が扇形の線になってなくなる、クシャッとした笑い方だ。
「こんにちは、はじめまして」
母の恋人はナミの笑顔に、ちょっと動作を止めて、意外そうな顔をする。丁寧な言い方だ。ナミは男の言葉選びを気に入った。この人は、ちゃんと言葉を選んで使っている。でも冷たい人だ。母のように冷たくて自由な人。




